更新日:2026/10/1

モザンビーク・マプト編〜Peace on the Boat trip〜

ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。 笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。   最初から読む ひとつ前の記事を読む

音に遠く誘われて…私が私であるという証はどこにある?

まず驚いたのは先生の音楽の腕前。色んな伝統楽器を目の前で弾いてくれたんだけど、プロのミュージシャンじゃあないかってくらい技術が高くてさ。シンプルな形の伝統楽器から、想像もつかないようなリズムや音色が次々と踊り出てくる。

 

アフリカの人たちのリズム感は独特だ。頭で考えてリズムを取らず、感覚で音を奏でると同時に体の中から勝手にリズムが溢れてくるような感じ。音をポンポン空中に投げて遊んでるようなイメージでさ、そんな彼らの音楽はどこまでも広い大地を想像させてくれるんだ。

目を閉じて聴いてみる。アフリカの大地…そこに息づく動物たちの呼吸や、虫たちのざわめくような動き、流れる風景や大地に広がる赤茶けた土の質感をも表現するかのような音が、小さな部屋いっぱいに大きく展開していくのを感じる。アフリカ人の心の中にある芯のようなものが、音楽という形になって私たちの心の中にフワリと心地よく入ってくる。

 

演奏が終わり、音に乗ってアフリカを旅をしていた私たちの、遠く連れて行かれた意識がこの場にゆっくりと戻ってくる。その様子を眺めながら彼らはまた音を紡ぎ始める。再び目を閉じて心を音に委ねると、さっきとは違った景色の場所に辿り着く。

大地の上から今度はその中へ、巡り巡ってその奥の更に奥まで辿っていくようなループ感。そういえば、私たちはどこから来たんだっけ。DNAに刻まれた記憶が細胞を震わせる。忘れていた何かを思い出すかのようによぎるデジャブ。めくるめく展開していく音の波は魔法のように、私たちを乗せてどこまでも遠い世界へ連れ去って行くようだった。

 

次に始まった生徒たちの演奏は、サックスなどの管楽器やピアノだ。どこかぎこちなさがあるものの、やっぱり持ち前の音感の良さがある。彼らのハッピーな演奏空間を楽しみながらも、それが民族楽器ではないことが心に少し引っかかった。

 

私たちが日本人である証って、何だろう…

 

特に気にすることでもないのかもね。もしかしたら民族楽器は身近で習えるのかも知れないし、世界一般的なものを習っておく必要があるってのも分かるから。日本だって、学校でお琴や笙を習うわけじゃあないもんね。だけどお琴や笙を習っていたら、今頃どうだったんだろう。そもそも私たちの学生時代、学校で日本の伝統文化って習ったっけ?あんまり記憶がないけど、習字くらいかなぁ。着物の着付けもお花もできないけど、それはもうこれからの時代はできなくてもいいものなんだろうか。

 

私たちが日本人である証って、何だろう。それを表現できる技術をあんまり持ち合わせていないかも。伝統文化でしか証を示すことができないって訳ではもちろんないんだけど、こういう時に交換できるものがもっとあればなぁって。彼らの演奏した民族楽器のように、深い部分からその国のバイブレーションを感じ取れるような何か…今更ながらに、日本的なものをほとんど持ち合わせていない自分に驚く。

 

海外に出ると日本のことがよく見えるっていうよね。ホントにそうでさ。相手からその国の持ち合わせるアイデンティティー的なものを感じると、自分って一体何なんだろうってふと考えてしまう。これは教育うんぬんだけでなく、自分自身もそれに興味を示してこなかった結果でもあるんだけどね。改めて日本をもっと知らなきゃって思うし、日本のいい部分も悪い部分もひっくるめて客観的に見えるから、一度自分の場所を離れるのはすごくいい経験だ。

 

文化交流はまだまだ続いている。やっぱり旅をした中で大きく残ってくるのはいつも、そこでの人と触れ合った記憶のような気がする。だからこそ、観光の持つ可能性ってとても大きいと思うんだ。観光スタイルは変化し、今では色んな形になってきている。その内容は今日のような文化観光をはじめ、ロングステイ、産業観光、エコツーリズムなど他にもまだまだあるらしい。

 

21世紀は観光の時代で、世界各国でも右肩上がりの産業として重要視されてるんだって。年間10億人もの人が観光で移動してるっていうから、その経済効果も凄いんだろうね。そしてまた、ふれあい型の観光スタイルは地域活性にも役立つんだ。

僕のお父さんも、この内戦で…

 

平和だから、観光ができる。情勢が悪化したらすぐにその場所は観光から外されるよね。観光産業がもっと各国の重要な資金源になってくると、内戦とか戦いを放棄したいような風潮も出てきたりするのかな…まあ、これはかなり楽観的な考えかも知れないけどね。

観光開発から来る環境破壊なんかも含めると、観光は素晴らしいと両手放しに言えるものでもない。だけどこれからの世界のあり方に、大きなチャンスを与えるのが観光なんじゃあないかって思うんだ。そんな風に思っていた最中、私と友人はちょっと不思議な観光に誘われることに…。

 

音楽学校のみんなと交流した後、私たちはモザンビークの街へと繰り出してみた。雑然とした広場は人で溢れている。「ガイドをしてあげるよ」不意に現れた、ひょろりと背の高い男の人が私たちの隣を一緒に歩き出したんだ。笑顔の爽やかな青年だったけど、ガイドってもちろんボランティアではないよね。「持ち合わせも少ないし、私たちは自由にあちこち行きたいからガイドはいいよ」って断っても、いいからいいからってついてくる。「じゃあ幾らなの?」って聞いてもとにかくいいからの一点張り。

歩きの個人ガイドさんは初めてでさ。値段を言わないのが奇妙だし、どこに行くなどの交渉の余地を見せない上に、断ってもひたすらついてくるのにはホントに困った。だけどこれ、どうやらモザンビークでは定番のスタイルらしく、あちこちでそんな風景が繰り広げられてたんだ。途中で友人が諦めて「もういいんじゃない、一緒に歩けば」って言うもんだから、断るのもいいかげん疲れたし、もういっかってなって一緒に歩き始めた。

 

そのガイドさんが説明もないままに連れて行ってくれた中で、大砲が展示されている戦争の名残のような場所があった。モザンビークで内戦が終わったのが1992年、それほど昔でもない。

 

大砲の置いてある空間と、その向こうに立つ高層ビルとのコントラストには不思議な時空の歪みのようなものを感じざるを得ない。「僕のお父さんも、この内戦で亡くなりました」ガイドの青年がポツリとつぶやく。大砲をカメラに収めていた私の手が止まる。戦争が残すのは、悲しい記憶とすさんだ現実だけだ。

 

その砲弾が外に向けられた壁の穴から下を覗くと、道に沿って古ぼったい感じの市場のようなものが並んで見えた。魚の艶めかしい銀色の姿が台の上に打ち上げられたかのように置かれている。悲しい過去を目の前にしながら、それでも人は生活を続けていく。微笑みの下に見え隠れする少し鋭い目つきの訳は、きっと彼らの背負った過去以外のなにものでもないのだろう。

不意に大きな声で呼ばれ、驚いて振り向いた…

不意に大きな声で呼ばれ、驚いて振り向いた。ここを管理しているのだろうか、ふたりほど人がやって来て彼と話し始めたんだ。少し険悪な雰囲気、どうやら私がここの写真を撮ったことに問題があるようだ。だけどガイドの彼は強い調子で「写真を消す必要はない」と私に断言した。彼は彼らに幾らかのお金を払うと、彼らは物言いたげな感じでこちらを見つつどこかへ消えていった。少し不思議な光景だったけど、今思うと彼は、強引にでも私たちをそこに連れて行きたかったのかも知れない。彼が観光というものを通してホントに伝えたいものが、そこにあったのだ。

 

内戦が終結して以来未だに、モザンビークは世界の最貧国のひとつに入っているという話…国としてはけっこう厳しい状態だよね、今は平和になったと言ってもさ。これからみんなで頑張って行こうっていうそんな時期なのかも。そう言われてみれば街を歩いている時、少し荒削りな感じの風景も所々あったような気がする。復興はきっとスローペースで進みつつあるんだろうね。

 

次の日もまた街を歩いた。昨日ぐるりとまわった街を通り抜けると、突然大きなショッピングモールが目の前に現れた。その建物は、港近くの街並みとは明らかに雰囲気を違えてそこに佇んでいる。とにかく裕福層と観光客目当てに作られた施設のようだ。ここマプトでは、貧富の差がモロに表に出ているという話だけど、それを象徴するかのようなものを目の当たりにして一瞬何も言えなかった。内戦が終わって少しの間でも貧富の差はすでに大きく開いている。これって、資本主義経済ならではの風景なのかな。

 

ショッピングモールをまわりながら考える。きっとどこでもそうなんだろうね、格差があるのはさ。ただ、見慣れてしまってもう何も分からなくなってる自分がいるんだ。かたや高級ブティックの入ったビル、その隣には露天商の並び。普通に見えるその光景も、よく考えればそういうことなんだろうね。いつの頃から当たり前に思ってたんだろうか。

モザンビークの訪問は、自分自身にいろんな問いかけのある旅となった。

PHOTO GALLELY

「PHOTO GALLELY」

 

音楽学校で教えている楽器たち

 

素晴らしいセッションが始まった

 

建物の模様が伝統アート的

 

ガラリと変わってこちらは近代アート的

 

道売りされてたカシューナッツと布たち

 

レストランはオールドモダン風

 

市場はたくさんの商売人で賑わっていた

 

人々の表情は少し硬いようだ

 

市場は実はこんなに大きな建物の中にある

 

ラッパ吹きチキンと可愛い男の子

 

(取材・文・写真/Hinata)

「ピースボート」ってなに?

keyboard_arrow_right

どんな船で旅をするの?

keyboard_arrow_right

寄港地でのプログラム

keyboard_arrow_right

2029年12月出航

第126回クルーズ

ピースボート地球一周の船旅 2027年4月 Voyage126

春に出航し、アジアから地中海、ヨーロッパ、北中米へとめぐる全108日間の世界一周クルーズ。ヨルダンやサントリーニ島、ロンドン、バンクーバーなど多彩な港を訪れ、ソグネフィヨルドやアラスカフィヨルドでは大自然の絶景を満喫します。旅行のベストシーズンといわれる初夏には、地中海から北欧まで数々の世界遺産と出会う航路へ。季節が織りなす風景とともに、まだ見ぬ世界を体感する船の旅です。

おすすめクルーズはこちら

keyboard_arrow_right

ピースボート公式LINE@最新情報をお知らせします!

目次