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ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。 笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。 最初から読む ひとつ前の記事を読む
ウエイターの彼を探すと、約束の時間になってもまだ働いていた。彼は昼前から働いていたはず、かなりの長時間労働だ。

夜10時を過ぎてようやく仕事を終えて私たちと合流した彼。観光客は未だ減る様子もなく、お店は飲み客で賑わっている。仕事着のままの彼と私たちは勢いよくタクシーに乗り込んだ。
港町から離れて、線路跡のような道を通り過ぎ、だだっ広くて薄暗い道をひたすら奥へと進んでいく。なかなか到着せず、行き先の店は結構遠いのかなぁと思い始めた頃、ふと見た右手の建物に人物の姿が浮かび上がっていた。

「ゲバラ!」ライトアップされたその姿は、間違いなくチェ・ゲバラだ。ということはここは革命広場?走り過ぎようとする窓から慌ててカメラのシャッターを切る。思いもよらず偶然立ち寄れたことに驚いていると、タクシーはそのすぐ近くにある公園の前でキキーッと音を出して止まった。
ウェイターの彼はひとり外に出て、何かを確認してから戻ってきた。薄明かりの中に人が結構な数でたむろしている。なんだかちょっと怪しくない?大丈夫かしら。タクシーから離れずこわごわ覗くと、向こうにはお店らしきものが。何やらちゃんとした大きな建物があって、階段が地下へと続いている。その入り口には強面のスーツ姿のおじさんが数名立っていた。
そのおじさんたちに彼が声をかけると、皆が急に笑顔になって私たちに握手してきたんだ。どうやらみんな彼の友だちらしい。「ようこそ、キューバへ」歓迎を受けながらそのまま下階のフロアへと通された。何だなんだ、彼って結構すごいんじゃない?
キューバの若者スポットNOW!

下階のだだっ広いフロアは若者でごった返していた。キューバにこんなにたくさん若者いるんだ!しかもオールドハバナの街の雰囲気とは全く違った、イマドキのスタイルのお洒落な若者たち。
フロアの正面にはステージがあって、今はバンドが生演奏中。フロア後方には真っ赤な長いバーカウンター、壁の棚には「ハバナクラブ」というキューバのラム酒がズラリと並んでいる。
カウンター近くの少し高くなっている場所にDJブースがあって、そこにもスーツ姿の強面の人が2人立ってフロアをチェックしている。その人たちも彼が声をかけると途端に笑顔、ハイタッチで挨拶をして何やら楽しそうに話していた。

私たちが「キューバリブレ」を飲みたいって言っていたから、彼はポッケにコーラを忍ばせてきていた。ホントはラム酒も持ってきてたみたいなんだけど、さすがにその持ち込みはダメだったらしく、彼はカウンターでハバナクラブをボトルで一本注文した。
3つのコップに即席キューバリブレを作って、満面の笑みで私たちは高々とコップを持ち上げながら乾杯!キューバのもうひとつの顔、夜の若者たちの遊び場所に潜入した私たち。
大音量でグルーブしている音楽に身を委ねながら、コップを片手にサルサのステップを踏んだりクルクルと回されたりと、若者的キューバナイトをこれでもかというほどに体感した。

周りで踊っている若者たちがフレンドリーに話しかけてくる。一緒に踊りながらお酒もだいぶ回ってきていい気分になってきたぞ。ステージ前ではドレッドスタイルのボーカルが3人ほどと、ギター、ベースにホーンやDJも混成した大人数のビッグバンドが、サルサとレゲエのリズムが混じったようなカッコイイ音を出している。
1時間ほどの間、飲んだり踊ったりして楽しんでた。そしたら突然、踊り続ける私たちの横で一緒に踊っていた子たちと、彼が連れ立ってどこかへ行ってしまったんだ。
一触即発の緊張感が…!
心配になって入り口付近を見ていると、少し険悪な雰囲気で話しながら彼らがこちらに戻ってきた。どうやら彼のラム酒のボトルがどこかに消えたらしい。私たちが楽しく踊っている間に、誰かがどこかへ持ち去ったようだ。
実際の犯人が誰なのかは分からないけど、近くにいたのは確かに彼らだけだから怪しいといえば怪しい。一触即発の雰囲気の中、私たちの門限も伴って、とりあえずそのまま帰ることになった。

彼は腑に落ちない顔をしている。ここまでタクシー代やボトル代を払ってくれてた彼。こんなキューバ人もいるんだと思って驚いていたんだけどさ、突然のアクシデントでちょっと落ち込んでいて可哀想だったかも。
私たちは帰りの出口で入場料を彼に払って、帰りのタクシーも私たちで払い、感謝の言葉を伝えた。彼の様子もようやく落ち着いてきて、平常を取り戻したようだった。
アクシデントもありつつ、ちょっとしたスリルも交えて楽しめた夜。私たちだけでは経験することができなかったキューバの一面を、リアルに見せてくれたことにも彼に感謝だ。たった一日だけの滞在だったけど、何とも濃厚なキューバだったな。

キューバには古い街だけでなく、サトウキビ畑やコーヒー園、広大な湿地帯や南国的リゾートなどもある。私はキューバを体感したと言っても実際は街の一部に滞在しただけで、もちろんリアルキューバを全て知ったことにはならない。
だけど、彼らの生活の片隅にチラリと入り込んでいくことで、何となくその国を感じ取れるものもある。この世界の中で違った今を生きる私たちの時間を、同じ場所で共有できたっていうその感覚を持って帰りたいんだ。それはきっと私の中にある軸に絡まって、その軸を太く力強くしていってくれるんだと思う。
真っ直ぐ素直にただ流れていく時間
そして。キューバを出てから思い出すのは、静かな夕方の時間帯…夕日で薄オレンジ色になった街。
立ち並んでいる建物の玄関先に人々は座って、のんびりとおしゃべりをしたり、こどもが周りを走り回ったりしていた。誰ひとりとして下を向いて携帯電話をいじっていない。
ただただ一日の終わりゆく時間を、味わうともなく座っていたんだ。そんなひと時を持つことの贅沢さ。彼らはそれを、私に思い出させてくれた。

そういえば携帯電話を持つ前は、私にもそんな時間がたくさんあった。何を見るともなくぼんやりと景色を眺めながら風を感じたり、何を待つともなく座っていたら友人たちが集まってきたり。それってもしかしたら、すごく大切なものだったんじゃないかな。
携帯電話を持った今、時間を自分でコントロールしてしまうようになっていた。見るものも、待つものも、感じるものも…「空白の時間」というものが無くなってしまった。私たちはいつしか、そこに流れている時を「受け入れる」ことを忘れ、そこにない時間を「作り出す」ことに集中するようになっていたんだ。

川のように真っ直ぐ流れていた時間は、コントロールされることにより複雑に絡まり始めた。あちこちが堰き止められたり支流を作り変えられたりして、ちょっとした大雨なんかでその川が決壊しやすくなってしまった。
そしたらその解決法をいつも考えなきゃいけなくなって…私たちはいつもそんなことをしているのかもね。本来の真っ直ぐな時間のままいじらなければ、そんなことにはならなかったのかも知れないのに。
ひとことだけ、伝えたいんだ…

一日の中にふとある「空白の時間」。徐々にスピードアップしながら、日常に目まぐるしく割り込んでくる非日常を横目に、彼らはガタガタした玄関先のステップにのんびりと座り続けている。変わるものもあれば、変わらないものもある。
いつかまたキューバに来れることがあったら、ガタガタしてて、だけどツルリと丸っこくなってるステップの、その座り心地を一緒に楽しむことができたらいいな。「それまで、変わらずそこにいてね。」そう言ってしまうことは余りにも簡単で、横柄だろう。
だけど忘れ去られた過去の夢を思い出しては反芻するかのように、私たちが無くしてしまってまだ落とし込めずにいるものたちの残像を、この夕日の時間は薄っすらと照らし出していた気がするんだ。

だからこそ敢えて、私たちの未来と共に見たいその景色に声を掛けてみようと思う。キューバの街角、夕日のひととき。
「それまで、変わらずそこにいてね。」
※追記※(2016年11月26日現在) 私たちがキューバに行ってからちょうど一ヶ月がたった今日、キューバの革命をチェ・ゲバラと共に行ったカストロ議長が亡くなったという話が船内に飛び込んできた。
カストロ議長の弟ラウル・カストロが今現在も政権を維持しているけど、アメリカ大統領にトランプ氏が決定したニュースと、時を近くして彼が亡くなったことは、キューバの一つの時代が終わったことを象徴している気がしてならない。そしてこれから更に新たなる変化を余儀なくされていくかもしれないことを想像すると、友だちとなった彼らの未来が少し心配に思えてくる。
これから更に変化していくはずのキューバ、だけど変わりつつもこの夕日の時間をいつまでも持ち続けることができるのならば、きっといい未来がそこに残るだろう、そう信じたい。
PHOTO GALLELY

キューバで暮らす人々

自転車タクシーはどれも手作り感たっぷり

おやつ売りのお兄さん

玄関先で食べる朝食

隙間感に吸い込まれそうだ

ゴロリゴロリと音を立てながら進む

ここでのんびりとお客さんを待つ

ふとした日常の一瞬

扉の右のマークが「カーサ」の証

玄関先に椅子のある風景

自転車タクシーとお洒落カフェ

クラッシックカーがホント格好良すぎ

凛々しく美しい女性が立っていた

新車のオープンカーもズラリと並ぶ

いたずらっ子たちとお母さん

こんなおしゃれ空間もある

その存在がキューバっぽい

朝のコーヒースタンドは満員

店内のカウンターからの風景

スプーンが全てを物語っている

キューバ愛を全身から感じる

木陰で馬車が休憩中

地元感あるジューススタンド

どこか洗練された空間

この状態で出てきたコーラ

Yes, Here is the CUBA!
(取材・文・写真/Hinata)
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2029年12月出航
第126回クルーズ
ピースボート地球一周の船旅 2027年4月 Voyage126
春に出航し、アジアから地中海、ヨーロッパ、北中米へとめぐる全108日間の世界一周クルーズ。ヨルダンやサントリーニ島、ロンドン、バンクーバーなど多彩な港を訪れ、ソグネフィヨルドやアラスカフィヨルドでは大自然の絶景を満喫します。旅行のベストシーズンといわれる初夏には、地中海から北欧まで数々の世界遺産と出会う航路へ。季節が織りなす風景とともに、まだ見ぬ世界を体感する船の旅です。
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