そうこうしているうちに私が日本に帰る日が近づいてきた。実はホクレア号の出発日が、悪天候の為に予定より何日もずれ込んでいてさ。とうとう私が帰る同じ日に、世界へ出発するという話になったんだ。まさか一緒にハワイを出ることになるなんて…だけど私の出発の方が時間的に少し早く、ホクレア号の出発を見送ることができないってわかったんだ。
その日の早朝、飛行場に向かう前にホクレア号に一目会いたいという私の願いを、ハワイ島に住む友人が叶えてくれた。車は少しスピードを出しながら港に一直線に走っていく。
雨が降ったり止んだりしているような天候の中、早朝で人影もまばらな港の広場にたどり着いた。海の方へ駆け寄って見るとホクレア号とヒキアナリア号が寄り添うようにして静かに佇んでいる。いよいよ出発だね、無事に帰って来れますように。そしてまたここで会おうね…そう心の中で呼びかけてお別れしたんだ。
車に乗り込むとギリギリのタイミングで雨がきた。時間もギリギリで急いで空港に向かっていたその最中、猛スピードで走る車のフロントガラスの視界の端にふと光が見えた。横に向かって朝日がサアッと差したそこに現れたのは、大きな虹!その景色は空港に着くまでずっと追いかけてくるかのように、車の窓の端に姿をとどめていた。
そして私が搭乗口から飛行機に乗り込む頃になると空は晴れ、虹は聖なる山「マウナケア」に大きな柱を立てていた…ホントに驚いたよ。ハワイでは、大事な時には雨がサッと降って虹が出るんだよって教えてもらったんだけど、これはとっても素敵なプレゼントだ。きっとホクレア号もこの虹の祝福を感じているはず。私たちはハワイから一緒に出発するんだね。ありがとう。そして、いってらっしゃい。
そんなお別れをしてから2年後…沖縄でのんびりと暮らしていた私が、思いもよらぬことに世界一周の船旅に出ることになったんだ。
(取材・文・写真/Hinata)