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時は17、18世紀。ヨーロッパで貴族や王族から頼まれて植物を運んだ人たちのことを「プラントハンター」と呼んでいた。その輸送には当然ながら船が使われ、植物だけでなく穀物やフルーツ、また文化面でも世界の交流に大きな役割を果たす。まさにグローバル化の先駆けとしてプラントハンターは世界中を駆け巡っていたのだ。
「現代の話になるんですけど、僕も船などで年間260トンくらいの植物を日本に輸入します。だけど今、植物を運んで育てることで飢え死にする人を減らすとか、薬になる植物を運ぶとか、そういうことで世の中を変えられるとは思いません。もし世界を変えることができたとしたら、それは植物を運んで価値観をかえることや、いろいろな“気づき”をもたらすこと。プレゼンテーションをすることだと思うんですよ」 一年の大半は海外を旅しているという西畠さん。その歴史から見て当然かも知れないが、「不思議なくらい植物と船はマッチする」と話す。またプラントハンターとして活動する以前はバックパッカーでもあった。そもそも旅の楽しさとは一体なんなのだろうか。
「いろんな考え方があっていいと思うんですけど、僕の場合は単純に旅が好きだったんです。旅そのものが。もっと言うと探検が好きでした。ただ、探検した後で『何が見つかるか』が大事だったんです。実は、今は逆で全然旅をしたいと思わないんですよ(笑)。生活の8割が旅だから、2割しか家に帰れない。プロジェクトをこなすために仕方がないから海外に行く。必要な植物があるから海外に行く。 何がやりたいか分からないときは『何かないかな』で旅をしていた。でも今は仕事がある。植物に用があるから会いに行っている。だから目的が自分の中で明確にあるという幸福感みたいな。何もなしに探しに自由に旅に行くという幸福感も、昔は十分過ぎるくらい体験してのんびりした時期もあった。でも絶対的な目的があってそのために旅せざるを得ないという幸福感もこれまたすごく良くて……。 山に登る人がなぜ登るかとか、漁師だったら海が好きなだけで船に乗っているわけではなく、そもそも魚が捕れなきゃ生きていけないんですよ。だから海に出るわけじゃないですか。僕も同じで、自分探しのためにとか、何かのために山へ登るのとは違う。どっちがいいとか悪いわけではなく、目的があって旅をするというのは、それはそれで面白いことだと思いますね」

旅のプロフェッショナルとも言うべき西畠さん、プラントハンターとして植物を仕入れるために世界中を巡っていると、普通の暮らしでは絶対に体験できない出来事に遭遇している。
「前例のないような1本1~2トンもある木を、アルゼンチンとボリビアの国境あたりの山で探していたとき、土を掘り起こしていたら何回も上からダニが降ってきてヤバイと思いましたね(笑)。しかも現地の人に英語が通じなくてコミュニケーションがうまく取れないから、みんなに身振り手振りで仕事内容を説明したりとか。 『ピューマがいるから気をつけろ』とか言われるし、食べ物が毎日肉しかないし……。半生の豚とか食べてて、電気もないようなところで暮らしてました。現地の人とガチンコで仕事しようと思っても重機がすぐ故障する、みんな言うこと聞いてくれない。これホンマにやれんのかなって(笑)。全部自分で何とかしなきゃということで、木を掘り出してトレーラーで港まで運んで出国検査を受けて、飛行機に乗せて何千万円も使って運んで……、アレは本当に大変だったなって思います。そんだけ苦労して木が枯れたら終わりですけど、その木が2本ともちゃんと生きて、ちょうど今度もらわれて行くんですよ。」

もはや壮絶すぎて驚きしか出てこない体験談ばかりだが、屈託のない笑顔に裏打ちされた懐の深さに誰もが惹かれる。第88回ピースボートに乗船したときも、多くの人が周囲に集まったようだ。
「若い人は確かに仲良くさせてもらいました。一人でぼーっとしてたら、若い子たちが話しかけてくれたり、水先案内人パートナー*さんたちがいろんなサポートをしてくれて感動でした。手作りのプレゼントや絵まで書いてもらって、すごく印象的でしたね」
水先案内人による船内企画をより楽しく有意義なものにするために、参加者から有志でお手伝いさんを募集。いっしょに企画内容を考えたり、宣伝や本番の進行をつとめる人たちのこと。
船上での生活は通常の旅と何が違うのか、西畠さんはこうも話す。
「たくさんのプロジェクトをハンドリングしているので、常に外部と切り離されることがない。常に誰かと分刻みで連絡を取っている生活から、船に乗って海の上に出ると、日本から離れた、そこにしか無い空間になる。だからこそ、スーパーニュートラルになれるんです。それがすごく新鮮だったのと、あと船自体が一つの『村』みたいなイメージがあって、独特の世界観でしたね。 すっごく楽しかった。僕のことを知ってくれてた人もいますけど、知らない人とも船の上でお話しするじゃないですか。そこで会った人に講義させてもらったけど、みんなの聞いてくれるときの姿勢というか、目とか相づちに熱気がこもっていてすごかった。乗ってる人たちも共鳴していくんでしょうね。一緒の船にいながら、同じこと考えたり、共有していったりすると。それがすごく印象的でした」
seijun nishihata 西畠清順さん(@seijun_nishihata)がシェアした投稿 - 2015 8月 30 10:52午後 PDT
ボランティアのみんなで、講演会場に絵を描いてくれたのが、うれしくて忘れられない
seijun nishihata 西畠清順さん(@seijun_nishihata)がシェアした投稿 - 2015 8月 31 5:13午前 PDT
seijun nishihata 西畠清順さん(@seijun_nishihata)がシェアした投稿 - 2015 8月 31 7:23午前 PDT

洋上で開校されている「ピースボート・グローバルスクール*」でも、西畠さんは人気の的になった。人を惹きつける魅力とは何なのか。
不登校・ひきこもり経験のあるピースボートスタッフが発案した、ヒト多様性を知り深めるための洋上フリースクール。コミュニケーションプログラムや、水先案内人による特別課外授業などを行う。
「僕の方が勝手に元気づけられちゃったんですけど、輪に入ってみんなとしゃべるときって、あまりかっこつけずありのままでお互いいた方がいい。しんみりするのも苦手なので、『いつも通りでいこう』と思って一番正直なことしか言わないようにしようと。 それでいろいろ話してたら、「みんなまだマシやで」「俺の方が辛い思いしてきたから」って勝手に口から出ちゃったんですよ(笑)。水先案内人の方が人生が充実してるとか楽しそうで、グローバルスクールの人の方が負のことが多いって言う先入観があったからなんですけど……。 人前で苦労話の応酬になってもアレなんですが、『俺なんか聞いてみ!』みたいな強烈な話を1個2個したと思うんですよ。そしたら、グローバルスクールの人とご飯を食べているときに、ひとりの女の子がなんの前触れもなく『清順さんって女の人苦手ですよね』って、みんな大爆笑して(笑)。その女の子は、いつもほとんどしゃべらないし、そんなこと言う子じゃないのに。いきなり話したと思ったら、そんなこと言うからみんな大爆笑して、僕も『なんで分かるんですか』って言っちゃった(笑)」
船の上という特殊な空間がそうさせたのか、西畠さんのキャラクターが人の心の壁を取り去るのか。船旅には不思議な出会いと驚きが待っている。
「旅というのは、人それぞれでいいと思います。『こうした方がいいよ』というのは、そんなになくて、それぞれ自分らしく旅するのが本当に一番。僕の場合は、迷ったら『前に進む』が鉄則。野球をやっていた経験から言うと、ボールが飛んできたときに迷ってると大体そらしてしまうんですよ。中途半端なのが来たら、体を前に出せばいい。旅とかビジネスでもそうなんですけど、『どうしようかな』と思ったら、できるだけ前に行くようにしてます。それくらいですよ」
ピースボートでは、多様な価値観に触れることのできる世界一周クルーズが年3回出航しています。第2の人生、新たな人生のきっかけとなる価値観の発見のたびに出かけてみませんか?
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記事内でも触れられているように、17〜18世紀のヨーロッパで、貴族や王族の依頼を受けて世界各地から植物を運んだ人々が「プラントハンター」の起源とされています。当時から船を使った長距離輸送が行われ、植物だけでなく文化交流の役割も担っていました。
西畠さんは、植物を届けることそのものよりも、それを通じて人々の価値観を変えたり、新しい気づきをもたらすことに意味があると話しています。植物という媒体を通じて、直接的な支援以上に「気づき」や「プレゼンテーション」を届けることを大切にしているようです。
公式サイトによると、ピースボートの世界一周クルーズは約100日をかけて地球をめぐる長期の船旅です。日常から離れ、開放的なパブリックスペースや大型シアターなどの設備の中で、多くの人と交流しながら過ごす時間が船旅の特徴とされています。
(取材・文/三宅隆 写真/PEACE BOAT, Mizumoto Shunya)
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