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ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。 笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。 最初から読む ひとつ前の記事を読む
今、とっても噂になっている国といえば「キューバ」!!
街には古い写真を見ているかのような味のある建物が立ち並び、たくさんの観光客と、自転車タクシーや野良犬たちが路上を行き交っている。

学校が終わると建物から一斉に溢れ出してくるこどもの群れや、特に何をしているでもなく街を歩いたり窓から外を覗いたりしている人々。色んなものが淡々と交差するキューバの日常の中に、私はすっぽりとお邪魔していた。
アメリカとの国交正常化を受けて急速に動き始めているこの国では、それまでの社会主義的なある意味落ち着いた生活から、目まぐるしい消費社会へと変化が進んでいるかのようだ。
観光客の増加で一気に開発も進み、街中は工事だらけ。古き良き時代を保っていたキューバがなくなってしまうという懸念の声の中、新旧入り混じった混沌とした空気感が、ホコリっぽさと共に街全体を大きく包み込んでいた。

オールドハバナ。街を歩くといろんな人が声をかけてくる。自転車タクシーの運転手、レストランのウエイター、お土産屋さん、道行く人…そこまではどこの国でもある特に珍しくもない光景だけど、ここではそれがまるで、フィルターがかかったような不思議な感覚でやってくるんだ。
ホコリっぽさだけでなく、街の古さや人々の感じがそうさせているのかも。ものすごく緩やかに進んでいた時間にネジが巻かれ、突然早く動き出したキューバ。外からはスピーディーに色んなものが街中に入ってきているけど、住民たちは今までの感覚でゆっくりと動いているから、時間軸のズレが所々で不思議な隙間を作ってる。

その隙間にフワッとはまってしまうような不思議さがここにはあるんだ。狭い街並みのガタガタした路上で、ふいにそんな隙間感に出会うことが楽しくもあった。
突然のお誘い、キューバのおウチ訪問!
以前は一度キューバに入国すると、半年間はアメリカ(ハワイも)に入国できなかったんだって。だけど今回の船旅は一ヶ月以内で、アメリカ(ニューヨーク)→キューバ→ハワイという航路を取っている。
実際は間にいくつか寄港地も挟まっているけど、この行程は凄いことなんだ。歴史が変わってきているという事実をそのまま体感できるってことなんだよ。しかも私たちがキューバに入国するその日は、国連における「アメリカのキューバに対する経済封鎖解除への投票日」で、歴史的にも重要なポイントとなる日だった。

どこに向かうともなく道を歩いていたら、アパートのような建物の大きなドアの前に座っていたおじさんが声をかけてきた。「あなたは日本人?今からどこにいくの?」にこやかに英語で話しかけてくる人懐っこそうなおじさん。キューバはスペイン語だと聞いていたけど、英語を話せる人がいてちょっとホッとした。
おじさんの隣には長身の男の子が座っていて同じようにニッコリと笑顔。そこで色々と話をしているうちになんだか仲良くなったので、うちに遊びにおいでよというお誘いに快くオーケイしてお邪魔してみた。キューバはそこまで治安が悪くないっていう情報と、そのアパートの壁に「カーサ」という国指定の民泊のマークがあったのとで、なんとなく安心だと思ったんだよね。

アパートの玄関から中に入ってみると、階段は工事中でホコリまみれだった。2階にあるおじさんの部屋のドアは開けっ放しで、中に入ると小さい部屋のベットの上に男の子のお母さん、おばあさんの親子と思われる女性が2人寝っ転がっていた。
「はい、ここに座って。コーヒー入れるよ」ここにって、そのベットしかないけどここかな?親子と私と男の子が4人でひとつのベットにきゅっと座った状態になる。友だちの家に来てもここまでの親密感ってないよ~なんて思いつつ、突然の訪問に特に何も言わない親子たちに英語でしゃべりかけてみた。
結局、おじさんだけが英語を話せて、みんなはスペイン語オンリー。まぁそれが普通なんだよねと思い出して、知ってるスペイン語を言ってみた。といっても前日に習った簡単な挨拶や自己紹介、数字くらいしか分からないからもちろん会話は長くは続かないけど、面白がって笑顔で聞いてくれている。
キューバ的猛烈アタック?

そこまではほのぼのとして楽しかったんだけどさ。よくよく話を聞いてみるとおじさんは、どうやら私に甥っ子であるその男の子を薦めている気配。年を聞くとなんと19歳、いや~それはもう犯罪でしょ。無理無理と言い張る私におじさんは猛烈トークでたたみ込んでくる。
そんなこんなで約30分経過、トーク内容はひたすらそれのみ。なんじゃこのキューバ人の押しの強さは。とりあえず私は写真を撮る仕事があるから行くね、と言いつつ逃げると、「じゃあ仕事が終わったら一緒に食事に行こう」と、半ば強引に時間指定を受けてようやく外へと解放された。
結局、カーサの宿はそこの建物内の別の部屋だったと後で判明。そう言えばどうみてもカーサには見えなかったあのお部屋…きっと工事中の部屋だから安く借りられてたのかも知れないね。おじさんも親子たちも昼間からおうちにいる所をみると、仕事がないのかも。

キューバでは今、貧困層の人たちが生活にだいぶ困っているらしい。アメリカとの国交正常化によって、消費的な社会へと変化しつつあるキューバのこれからは、裕福層と貧困層の格差が更に広がっていくだろうと言われている。そしてもうすでに今、色んな形でそれが見えているんだ。
自分が体験したさっきのキューバ的猛烈アタックも、大げさに言うと「政略結婚」みたいなものかもしれない。とにかくこの子と結婚しなさいと笑顔でひたすら強く薦めてくるおじさん、最初は冗談だと思ってトークを楽しんでたけど、次第に鬼気迫ってくる様子にあまり笑えなくなってた。
だけどこれも、リアルなキューバの今を知る貴重な体験だったかも。楽しかったけど複雑という時間をあとにして、また街へとくりだした。
クラッシックカー&レコード質感の生演奏!

相変わらず色んなものが行き交っている。街に立ち並ぶ建物はどれも古くて、よくみるとボロボロ。だけど味があるというか、作ろうとしても作れないアート感があって、壁の色合いやペンキの剥げ具合なんて特に素晴らしいんだよね。
クラッシックカーもそう。街中を歩いていると手前の角から可愛いクラッシックカーが出てくる。ガタガタの道を、ゴロゴロ言いながら走っている感じがなんともいいんだ。路上に乗り捨てられているように停まっている車も、そこにあるだけで街と車が一枚の絵のようになってる。街中はあちこち工事中で、足場が木で組み立てられているのまでアート的。

オールドタウンのレストランから聴こえてくる生演奏の音。高い天井の空間に響く音楽は、独特の質感をもって耳に届く。空間にどこまでも広がる音とほこりっぽい空気が混じって、まるでレコードのような柔らかい心地よさを感じるからとっても不思議。
そんな音が、街を歩いていると遠くの方からふいにやってくるんだ。この感覚もキューバ独特かもしれないなぁなんて幸福感を噛み締めながら、だんだんと音に近づいて窓の外からお店の中を覗き見る。
あちこちのレストランで生演奏が繰り広げられていて、ご飯を食べながら楽しむことができるのが本場のいい所。そういえばアルゼンチンもそうだったな。有名な音楽や踊りがある場所は、レストランと生演奏はいつもワンセットだ。

「SALSA!」という映画を思い出す。白人のピアニストの青年がサルサ音楽に魅せられて、サルサの楽団に入ろうとするんだけどなかなか上手くいかなくてさ。とにかく形から入ってみようってことで、日焼けサロンで肌を黒く焼いて下手なサルサダンスを踊ってみたりと、徐々にキューバ人になりすましていく姿がかなりコミカルなんだ。
基本的には明るくて元気の出るサクセスストーリーではあったんだけど、そこには差別のようなものや社会情勢もさりげなく描かれていて、バランス感覚にとても優れた映画だったんだよね。
キューバと言えばあの音楽!
その中でも特に印象的だった音楽のシーン。サルサやソンといった音楽が所々でかかるんだけど、音が生きているというかさ。情緒があったり、底抜けに明るかったり、音楽によってその場にあるシーンが一気に転換していく感じがあって。キューバ音楽が映画全体を包み込んでいたんだ。

サルサのベースとなっている「SON(ソン)」はキューバの伝統音楽で、そのソンの持つ素晴らしい空気感は何とも表現しがたい。情感溢れた歌にピタッと絡まる楽器たち、どこか余裕のような余白が感じられながらもそこに全く無駄がない。
シンプルであって完全と言えばいいのか…何よりもその音の質感が、さっきから聞こえてくる演奏とピタリとはまるから鳥肌。そうそう、こんな音の響き方だったんだよ。そして物語の最後に、主人公がキューバにたどり着くんだけどさ。何度も繰り返して見たあの感動の場面に、キューバに今いるんだよね私!って考えると心底興奮してくる。
そんな風に感慨にふけりながら街を歩いていると、どこからか風に乗っていい匂いが…そう言えば、そろそろお腹も減ってきたぞ。キューバサンドを食べながら生演奏を聞こうと思ってお店を探していると、またもやいい音楽が遠くの広場の方から聞こえてきた。多分オールドハバナの中で一番大きな広場なんだろうな、そこにあるレストランのオープンデッキでバンドが演奏していたんだ。
ここで今からサルサを踊れと?

音にググッと引き寄せられるように近づいていってビデオ撮影を始めた私。本場のサルサ音楽にうっとりとしながらも撮影に集中していると、ふいにレストランの入り口にいたウェイターさんが踊りだして、私の手をヒョイと握ったんだ。
マジですか!思いもしない急展開になんとかついていこうと、笑顔を引きつらせながらも頑張ってステップを踏んでみる。船の上で習ったサルサのステップを思い出しながら踊っていると、なんだか楽しくなっちゃってどんどんノッてきたよ~。ウェイターさんも私をクルクル回しながら「イイね!」って合図してきた。
そのまま曲の最後まで踊ってもう大満足…と、バンドの近くの席についてすぐさま例のアレをオーダー。生演奏に耳を傾けつつ、店員さんが運んできたキューバリブレを喉にグイッと流し込んだ。

そしてキューバサンドを頬張りながら、「私のキューバでの思い出はこれで完璧、もう思い残すことはないわ」ってその時思ってたんだけど…実は今からがホントのキューバ旅の始まりとなるのだった。
レストランを出るときに、さっき一緒に踊ってくれたウェイターさんに話しかけたら「今晩、いい音楽の店に連れて行くから一緒に踊ろう」と誘われたんだ。話を聞くと、彼は何とプロのダンサーらしい。
余りの都合のいい話にかなり半信半疑になりつつも、でもまぁいいかと誘いに乗ってみることにした。「9時にここで待ち合わせね」と約束してレストランを出る。この短い時間でキューバ人との約束がふたつも。何だか面白い展開になってきたぞ。
第2回に続く…
(取材・文・写真/Hinata)
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春に出航し、アジアから地中海、ヨーロッパ、北中米へとめぐる全108日間の世界一周クルーズ。ヨルダンやサントリーニ島、ロンドン、バンクーバーなど多彩な港を訪れ、ソグネフィヨルドやアラスカフィヨルドでは大自然の絶景を満喫します。旅行のベストシーズンといわれる初夏には、地中海から北欧まで数々の世界遺産と出会う航路へ。季節が織りなす風景とともに、まだ見ぬ世界を体感する船の旅です。
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