更新日:2026/10/13

アイスランド沖・クジラ&オーロラ編〜Peace on the Boat trip〜

ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。 笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。   最初から読む ひとつ前の記事を読む

極寒での奇跡の出会い!暖かい幻のような時をあなたと

アイスランドに上陸する前辺りから、私の周りでミラクルが頻繁に起こり始めていた。

たぶん、そういう人は他にもいたはず。海の上で波に揺られ続けてると、体も心も大自然に近い感覚になってくるんだ。だから、自然界のものとシンクロしやすくなってくる。

 

 

どういうことかっていうと、「あっ、来るかも」ってのがわかるんだ。例えばそれは、大きなアーチの虹が出る瞬間。そして、生き物たちがその姿を見せてくれる瞬間。いつもと違ってなんかソワソワして、デッキに行かなきゃって思い立ってそこに行く。そうしたらかなりの確率でそれと出会える。

 

 

虹は、船の上で何度か見てるんだ。遮るものが何にもないから海にポッカリと出たりするよ、欠片みたいなのもあるし長いのもある。だけどさ、船体の両側を囲むように海から出て海に戻る、船全体を包み込む形で囲んでいるどでかいアーチは初めてだった。

 

その時は、夕ご飯を食べ終わって廊下を歩いている途中で、いつもはすぐお部屋に帰るのに急に「デッキに行こう」って思い立ってさ。階段を昇って誰もいないデッキに出たら、薄っすらな虹の欠片を見つけた。あっ、やっぱり!出るような気がしたんだよなぁ~って見てたら、それがぐんぐんと伸びて大きくなって二重のアーチの虹になったんだ。

 

驚いて急いでシャッターを押してみたものの、大きすぎてもちろん携帯の画面には収まりきらなかったよ。それは夕日が水平線へと沈む、その直前のほんの10分くらいの出来事だったんだ。小さな欠片からどんどん大きくなっていく過程ってワクワクするよね、最終的にあんなに完璧なアーチの虹になるなんて…ホントに大自然からのギフトとしか思えないよ。

 

 

ある日の午後には、イルカの群れ。船の廊下を歩いていたらその大きな窓越しに、船が起こすさざ波に乗って遊んでいる姿が驚くほど真近に見えたり、海を眺めながらランチしてたら海面で跳ねる集団を発見したり…イルカの出る時って、なんだかキラキラした時間が流れるんだよ。みんなの笑顔もホントに最高なんだ。

 

そうそう、デッキの手すりにもたれてボーッと海の中を覗いていた時に、めちゃ大きなサメがゆったりと逆方向へ泳いで行くのも見たことあるし、海鳥の大群が気流に乗って、デッキのすぐ横を乱舞している姿も圧巻だった。とにかく色んな生き物たちと出会えるのが世界一周の船のデッキ。

 

あれ?今プシュッと潮を吹いたのは…!

 

そして、クジラと出会ったのは。今回の旅で初めて、予感に従い望遠レンズの一眼レフカメラを持ってデッキに上がった、まさにその時起こった出来事だったんだ。

   

 

その日はあいにくの空模様で。お昼をだいぶ過ぎた夕方近くの、陽が傾き出した頃にようやく外に出てみた。目の前にはいつもの海、そしてアイスランドの大陸が横に長く伸びるように広がっている。

 

アイスランドの大地ってさ、実はとってもカラフルなんだよ。雪の景色で真っ白でしかないイメージを持ってたから、大地のピンクっぽい色や黄や緑の混じった大地の色をみて驚いた。デッキ一面にこの大地を眺められる幸せ感。綺麗だねって言い合いたい、だけど周りには誰もいない。

 

 

この時は主なフィヨルドも通り過ぎてしまって、みんな船の中でゆっくりしてる時間帯だったんだ。確かに天気も余り良くはないし、外はかなり寒くてカメラを持つ手も感覚がなくなってきてた。少し離れた場所に、カメラを持ったおじさんがひとりポツンといるだけ。

 

陸の手前に可愛い灯台が見えてきたからシャッターを押して、クジラちゃんそろそろ来ていいよって心の中で呼びかけながら遠くの沿岸を眺めている時だった。

 

プシュって、潮吹きがひとつ。あっ、その近くにもまたプシュ。小さな噴水程度だから見逃しそうになりながら、あの辺りに絶対いるっていう確信をして凝視し続けてたら、黒い体がゆっくりと海面に出てきて、滑らかにまた海に潜ってった。

 

 

少しちっちゃい体、こどものクジラだ!船から遠く離れたアイスランドの陸に近い場所でちらほら、交互に遊ぶように体を浮かせては沈んで、ハート型の尻尾をパタンと揺らしてここだよって合図してる。

 

カメラ持ったおじさんに「クジラいたよ!」って海面を指さしながら、自分も集中して望遠レンズの向こうを再び凝視する。そんなクジラの姿を探しながら、思い出してたことがあった。

 

長い時を超えた約束の出会い

 

今から一年ちょっと前、沖縄でクジラツアーに行ったことがある。その頃はシーズンももう終わりでツアーも最終日近く、ちょっと見られない可能性があると言われながらも、もしかしたらという気持ちで小さな船に乗り、慶良間沖に向かったんだ。

 

沖縄にクジラが来るのは冬の間だけ、そして私が会いに行った時は寒い場所に向かってクジラが帰る頃だったのだけど、思いがけず、奇跡のようなことが起こったんだ。クジラの親子3頭が私たちのすぐ近くまでやって来ただけでなく、こどもクジラが私たちに興味を持ったらしくてさ。すぐそばにやって来ては、船の下をくぐったりしてしきりに遊んでいた。

 

手を伸ばすとあとちょっとで届く、そのくらいの距離にいたクジラたちはやがて、大きく体を方向転換して島の向こうへと去って行ったんだ。その時、遠く過ぎ去っていくクジラの片手が大きく宙を切った。私にはそれが「またね」って合図に見えたんだ。

 

 

そして今。アイスランド沖の海の向こうから、クジラのこどもが尻尾でパタリと合図している。望遠ズームでようやく尻尾の形がわかるような距離だけど、何度も繰り返し、こどもクジラたちは潜ったり出てきたりしている。ちょっと目頭が熱くなってきたぞ。

 

そんな奇跡がまた目の前で繰り返されていることに、寒さも時間も全部がごっちゃになってホワイトアウトしそうだよ。なんとか意識を保ちつつもシャッターを切る。来てくれたんだね、出会えることを知っていた気がするよ…心の中でいっぱいになった想いをクジラのこどもに投げかける。

 

 

不思議なんだけどさ、こどもクジラって遊び心があるからなのか、何だか心が繋がりやすいように感じるんだ。だからこうやって自然と話しかけてしまう。そしてその後、何度か場所を変えて現れては潜りを繰り返し、クジラのこどもたちは幻のようにどこかに消えてしまった。ほんの束の間の出会い…それはホントに短い時間だったけれども、私には長い時を超えた約束の出会いだったような気がしたんだ。

 

オーロラって、これ…?

 

その数日後。アイスランド周辺で観測できるというオーロラ、船の上にいるみんなの意識は完全にそこに集中していた。出るかもしれないし、出ないかもしれない。きまぐれな生き物のようなオーロラの存在は、だからこそ希少だ。

 

オーロラの姿を一目見たいがために、飛行機に乗って遠い遠い旅の果てにアイスランドにたどり着き、寒い中頑張って待ってみたけど結局見ることが出来なかった…そんな話も珍しくはないようだ。噂に聞くオーロラは、カーテンのようにたなびくらしい。漆黒の大空に揺れる光のカーテンを、心の中に思い浮かべながらその日がやってくるのを心持ちにしていた。

 

 

船の上では、スタッフでオーロラ観測チームが組まれているという噂。彼らはこの極寒の中、ひたすらデッキでオーロラの姿を探すという驚きの任務を黙々と続けてくれていたらしい。その甲斐あってアイスランドに近づいた1日目に、私たちはその希少動物のようなオーロラを目にすることが出来たんだ。

 

夜、まだ寝るには少し早いかなと思う頃に、「オーロラが出現しました」と船内放送が流れ込んできた。船室でそれぞれにゆっくりした時間を過ごしていたかと思いきや、勢いよくキャビンから飛び出してくる人々。「船内は走らない」というルールがまるで存在しないかのように、カメラ片手に雪だるまのような重装備で駆けていく。私も負けじと丸々した格好でみんなの後を追っていった。

 

真っ暗なデッキに人が影になってうごめいている、その隙間をぬって正面にあるはずの光のカーテンを探す。えーっと、何かモヤっとしたものは見えてるんだけど、あれじゃあないよね。目の前に白い、カーテンには程遠い壁のようなものが見えている。

 

 

とりあえずシャッターを押してみると、おおっ、写真に写ると黄緑色に変化しているぞ。どうやらこれはオーロラらしい。予想とは違った感じだけど見れたことにちょっと喜びながら、友人とオーロラをバックに写真を撮りあう。よし、オーロラ見たぞ!その夜は満足してキャビンに帰り、すぐに眠った。

 

次の日の夜にまた、オーロラの船内放送が入った。昨日より時間もだいぶ遅かったし皆もう満足してしまったのか、私が部屋を飛び出した時には昨日のような雪だるま大会はなかった。せっかく走ってみようと思っていたのにちょっと残念、遠慮がちに競歩ほどのスピードでデッキへと向かってみる。

 

なぜか周りは人影まばら…そして!

 

デッキには昨日の半分ほどの人数、だけどオーロラのモヤモヤは昨日より大きく、ちょっとたなびいてる?慌てて撮った画面を見ると、オーロラだ。これ、知ってるやつだ、ちょっと光るカーテンっぽい。

 

 

嬉しくなっていっぱい写真を撮るものの、オーロラはかなり薄暗くて私のカメラと腕では限界がある感じ。かなりボケたお化けのようなオーロラと、シャッタースピードを長くしてしまったために星が模様を描いているような不完全な写真しか撮れなくて困ってしまった。

 

あーあ、しっかりとカメラの勉強しとくべきだったなぁと今更に後悔。心の中でぶつぶつ言いながら撮っている間に、夜空のオーロラは次第にフェイドアウトしていき人々もそれに合わせて一緒にフェイドアウトしていった。

 

 

じーんと寒い。周りは閑散としている。なのになんだろう、さっきから何故かお部屋に帰れない。足が動こうとしないんだ、カメラを構えた手もそのままに動かない。寒さにめっぽう弱い生き物だって思ってたんだけど、実は結構いけるんじゃんって自分を褒めてみた。

 

ジャグジーの台の上に立って、風を避けながらマスト正面のベストポジションを陣取る。ってか、ほとんど人がいないから陣取るも何もって感じだけどね。オーロラは遠くでチラチラと残り火のように小さく薄く揺らいでいる。頭から被った布をぎゅっと閉じ直して隙間風を遮ると、誰かの帰りを待つ時のような芯のある心持ちになってきた。

 

必ずそれは、現れる。よく分からない確信を抱いたまま、待つこと半時間ほど。周りには全く誰もいないのではなく、ちらりといる。きっと私と同じで、足が動かないのだ。正面を見据えたままカメラを固定する。ややあって船のマストの向こうにチラチラとあったオーロラが、突然に燃え盛るがごとくに勢い良く上に向かって伸び始めた!

 

ようこそ、アイスランドへ!!!

 

 

えっ、えっ!?勢いよく上まで伸びきったかと思うとその柱のようなオーロラが、ふわりと扇子のように左右に開いていって、あっという間に天空いっぱいにグリーンの光が覆い尽くしたんだ!

 

もうそれからは、めくるめくオーロラ世界…光のカーテンはあちこちでたなびき、眩しいほどの明るさで揺れている。さっきまでと違って光が強すぎるくらい、満月より明るいんだ。だけどカメラの機能をいじって調整している場合じゃないよこれ。とにかくひたすら写真を撮りながら、同時にカメラから目を離してそこに繰り広げられた世界を凝視する。

 

 

あちこちで悲鳴のような声がしきりにあがっている。もう凄いねっていうレベルじゃないんだ、悲鳴にしかならないよ。オーロラを探す為に乗船してくれていたアイスランドのガイドさんが、「ようこそ、アイスランドへ!!」と感極まった声を響かせている。

 

階段の下からは押し合いへし合い、声をあげながらデッキに上がってくる人々の群れ。ホントにこれ、夢じゃあなくて?信じられないと思う反面、この寒さはどう考えてもベットの中じゃあない。ほんの数分間の夢のような天体ショーが終焉する頃には、閑散としていたデッキのそこら一帯が、真上を見てぽかんと口を開けたままの人の群れで埋め尽くされていた。

 

 

「こんなに遠くまで来た甲斐が、あったねえ」穏やかな声でじんわりと話す声が、隣から聞こえてくる。私の隣で、半時間前から私と同じく足が動かなかった人たちだ。「ホントに…来て良かったねえ」老夫婦の会話は、私の心に深く響いてきた。年老いた人たちにとって、世界一周の船旅は決して軽々しいものではない。住み慣れた街を長く離れる決心をして、不安を置き勇気を持って船旅に来ている。それを知っているだけにこの言葉は、重くて深い。

 

遠くまで来た甲斐が、あったねえ。心の中でその言葉を繰り返してみる。凍えるほど寒いはずなのに、ふわりと暖かいような心地になってきたのが不思議。

 

ゆっくりと両手に温度が戻って来たのを感じた私は、頭を覆うショールを外しながら真上を見上げて、360度に広がった奇跡のようなオーロラを、もう一度思い出しながら心に深く焼き付けたんだ。

   

(取材・文・写真/Hinata)

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