ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。
笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。
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空に伸び続けるタワーは、過去から受け継いだ信頼の証
真っ赤な色が、シンボリックに会場を埋め尽くしている。彼らが今からここで表現しようとしている世界は、まず互いが手を組み合わせる所から始まるのだった。
ここはスペイン、バルセロナの街中。偶然にも、今日が年に一度の祭りの日だったなんて。狭い通路いっぱいに赤い服を着た人々がひしめいている、そんな中を私たちは少し浮き足立ってすり抜けていく。
とにかく凄い人の多さだ、とても有名な祭りらしいことが伺える。きっと、この人々の流れつく先に会場があるはず。そこで何かが行われるのだという期待を持って、意気揚々と腰帯を締め合っている赤い集団をかき分けながら、私たちは更に会場の中央へと進んでいった。
今、目の前でまさに始まろうとしているそれは、「人間の塔」という、人の上に人が立ちそのまた上に…と、およそ10メートル程の高さにまでなる塔を作るというものだった。組体操にも似たその「人間の塔」だけど、その高さと緊張ゆえに完成した時の高揚感は半端ないんだ。
地域のみんなで作る大きな塔、それは人々の生活の象徴でもある。恰幅のいい男たちが大地と共にすべてを支え、おおらかに受け入れる女たちがその足場を整え、未来を真っ直ぐに見据えた少年と少女がその上に立っている。
地域というのはまさに「共同体」で、互いの存在があってこそ全体が活性化していく。隣同士にただ住んでいるというのではなく、時には声を掛け合って助け合い、豊かさを分け合うような社会。そういえば私もちっちゃい頃は、近所のおウチに勝手に入っていって遊んでもらったりしてたっけ。ラインを引かれていないから自由に出入りできるんだ。実際的なラインというより、心のね。
すぐ近くの赤い群れから音楽が聞こえてきた。小さなラッパのようなものを鳴らして、高く伸びていく塔に向かってエールを送っている。演奏隊は、タワーの土台をしっかり築くことができるまでは無音で見守っていて、いざその上に人がよじ登り出すと音を鳴らすルールになっているようだ。