さてと、現在地も分かった所で。親切なおばさんたちにありがとうと伝えるのに「メルシー」が出てこず、なぜか「グラッツェ」と言ってしまい自分で失笑しながらカフェを後にする。イタリアもフランスもごちゃまぜだ。ほんとすみませんと思いながらも気を取り直して、教えてもらった「パニエ地区」へと向かってみる。
道に迷い込みつつ人の気配のある方へ歩いて行くと、どうやら観光地らしい場所に行き着いた。さっきまでのシュッとした都会の感じとはちょっと違って、昔ながらな感じの古めの建物が、狭い道を挟んでギュッと建っている空間。
生活感もあって、建物の小さなベランダにはシーツや洗濯物が干されている。お土産屋さんやレストラン、カフェなんかに混じって、魚の形をしたマルセイユ石鹸や、綺麗に研がれたナイフ屋さんなど、どちらかというと手の込んだ職人的雰囲気のお店がちらほら。そんな中に歴史的な教会なんかも混じって建っていてさ。
古い街なんだろうね、そのまま街全体が残されて観光地区になってる風。狭い道のあちこちに観光客が歩いていて、迷路のような街を迷いながら楽しんでいるかのようだ。
ここでは馬車のような仰々しい乗り物がない代わりに、オモチャの汽車の形をした長い乗り物が細い道をクネクネと走っていた。確かにこの街にはこういう感じのオモチャっぽい感じが似合ってる。なかなか遊び心がある街なんだね。
何度も道に迷って小さな街をぐるぐると周り、充分に満喫しきったので次の場所へと移動してみることにした。全く人の気配のない裏道を抜けて大きな道のある街に出ると、こっちの街ではオモチャの汽車ではなく路面電車が走っていた。さっきまでいた場所は何だったんだろうぐらいに、マルセイユの昔と今が、裏道を挟んで存在しているような感覚が面白い。
ブラブラと、だけど直感で道を選びながら歩いていたら、どうやらイスラム街に辿り着いたようだ。