そしてこれは、この後の話なんだけど…ホクレア号の世界一周の旅で最初の目的地「タヒチ」の島を、何もない海の上から伝統航海術を使って最初に見つけたのも彼女なんだよ!話を聞いただけでも鳥肌が立つような素敵な物語だ。人間の可能性って、ホントにすごい。
できないと思って諦めることと、できると思って行動すること。人生にはそのふたつの選択肢が用意されている。その結果は色々だとは思うけど、何を選ぶか、可能性を広げられるかはホントに自分次第だ。スターナビゲーションで、陸がそこにあることを信じないと陸は見えないのと同じように、まずは信じることが「見える」ことに繋がってくる。全てはどこまで自分を信じられるか、だよね。
話は戻って、世界一周の旅の出発まで、あと何日かヒロの港に滞在するホクレア号。その周りには日々、たくさんの人々が集まってきていたよ。ホクレア号はハワイの人々にとって誇りでもあるんだ。自分たちのアイデンティティーを、守りたいものを大切にしながら世界にメッセージを送っているホクレア号。だからみんな噂を聞きつけてどこからともなく集まってきては、微笑みを持った深い眼差しでホクレア号を見つめている。
その広場では毎日色んなことが行われていたんだ。歓迎の歌や踊りの披露もあれば、セレモニー的なものもある。祈りを持った儀式のようなものも行われていたらしい。古代から今でも、ハワイでは目に見えないエネルギーに対して敬意を持って丁寧に対応しているんだ。
現代では昔と比べてあまり大切にされなくなってきたもの、自然や土地の神様などに対する感謝の想いを伝えることは、自分たちがどこに属していて、どうやって生かされているかを知る大事なことでもある。「目に見えない存在」に祈るってのはそういったことでもあるんだよね。
突然のアクシデントで大海原に取り残された時、一体なにを一番信じられるだろう。現代の技術?情報?常識?いざという時、これらはなにか助けてくれるのだろうか。そんな時に信じられるのは自分と、仲間と、そこにあるものだけだ。海や天気や魚や鳥、そんな色んなものからのメッセージをしっかりと聞き取ることができなければ、生死にも関わってくる。そしてまた、そんなメッセージを聞き取りやすくしてくれるのが、祈りというツールなのかもしれないね。
そうやってホクレア号の周りでは数日間、色んなことが繰り広げられていた。その間にも、ロミロミの先生がクルーたちにここでロミロミマッサージをやってあげたりしていてさ。私も習いたてだけど、やりなさいって先生が言ってくれて。だけど雨が急に降ってきて仕方なく断念…これはきっと次回、またここに来てロミロミやりなさいってことなんだなって思った。そう、次回。世界一周からホクレア号が帰ってくる時にだ。