あのね、もうここまできたら驚かないよね。そのうちの一人の女性が、なんとホクレア号の取材で来てるって言うんだ。日本から来てるんだよ、しかも日本人の取材者は彼女だけ。あの、何でもお手伝いしますんで連れて行って下さいって言うと二つ返事でOKしてくれたんだ。そんな訳で翌日の朝には、私はホクレア号が待つ港へと向かっていた。ここまできたらきっと前世繋がりだな、うん。
ハワイ島はかなり大きく「ヒロ」と「コナ」の二カ所に空港があってさ。そのうちのヒロの街から少し行った港にホクレア号は寄港していた。たくさんの関係者で賑わっている広場から、海を眺めてドキドキしながらホクレア号を探す。
あっ、いた!波打ち際から30メートルほど離れた場所にもう一艘の船、ヒキアナリア号と一緒に仲良く停泊していたんだ。あぁ、またここで会えるなんて…しかも世界一周のスタート地点で再会できるなんて凄すぎる。彼女たち(※)は今から3年間かけて世界を旅し続けるんだ、だからここからもう3年間は会うことができない。そんなギリギリのタイミングで私たちはまた出会えた。ホントに感謝だなぁ、全てに。
※船は一般に、よく女性として扱われる。英語では船を女性名詞で「she」と呼ぶ。
取材でここに連れてきてくれたカメラマンさんも私とホクレア号との再会を喜んでくれて、そして更に、今回クルーとして乗る女性を私に紹介してくれたんだ。日本人ではふたりの女性が、ヒキアナリア号(ホクレア号のサポート船)に乗ることになっていてさ。そのうちのひとり、内田沙希ちゃんはとても若い女の子だった。えっと、なんか見たことある気がするぞ。うーんどこで見たんだろう…
そうだ!前回私は、カウアイ島でホクレア号の映像を撮ってたんだけど、そこにチラリと写っていた女の子じゃあないかな?あの時の彼女が、あれからなんと世界一周のクルーとして選ばれたなんて。
相当の努力をしたんだろうなぁ、想像もつかないや。たぶんこの時で20代半ばくらいかな、ホントに驚きだよ。話を聞くと、彼女は日本にホクレア号が来た時に初めて出会ってピンときたんだって。この船に乗りたい!ってさ。
当時彼女は高校を卒業する直前で。だけどこれといってやりたいこともなく、進路が決められずにいたんだけど、即決したんだ。それから卒業するタイミングでハワイに移住、ホクレア号の近くで何年もトレーニングや勉強の日々を送る。何度も言うけど、クルーに選ばれることはそう簡単ではない。誰もが夢物語と思うようなことを、彼女は直感と熱意と努力でホントにやり遂げちゃったんだ。