そして次の日、事件は起こったんだ…
撮影していてある意味いちばん凄いなあって思った場所は、リオのカーニバル時の街の中だった。このカーニバルは世界的な祭りだから、非日常な感じなのはある意味当たり前なんだろうけど。街には派手に着飾ったり半裸だったりの人で溢れかえっていて、車から一歩出ようものなら、すぐに迷子になりそうなくらいの勢いで人々が動いてる。
実際にこの時期は、街はこんな状態だから犯罪も起こりやすい。警察から直接注意勧告された友人たちもいて「こどもの集団には気をつけて」って言われたんだって。大人の犯罪者は加減を知っているから、強盗したとしても相手に致命的な怪我を負わせたりしないんだけど、こどもの犯罪集団は加減を知らないからホントに危ないらしいんだ。
日本では想像できない話だよね。だけどそうやって強盗という生き方を選ぶしか、生きる方法を見出せないようなこどもたちも世界にはいるんだ。ブラジルでは今、そういうこどもや若者たちに対してプライドを持って生きる方法を提案するプロの音楽集団もいて、それはドキュメンタリー映画にもなっているんだけどさ。何とかしていい方向に変化させていこうと動いている、そういう現状はまだ今始まったばかりのようなことを映画は伝えていた。
だけどとにかく街全体のエネルギーがすごい。私には遠目から眺めるくらいがちょうど良かったんだけど、果敢にもその場に突入していた若者たちもいたようだ。もちろん興味はあるけどさすがにここで降りて写真を撮るわけにもいかず、乗っているタクシーの中から窓越しにムービーだけ撮ったよ。
そう、実はその時…ちょっとヤバかったんだよね。
この時乗っていたタクシー運転手の男性ね、私たちが最初に乗った時は無口だし普通だったんだ。それが道を進むにつれバックミラーでチラチラこちらを見るようになって、そんな挙動不審な感じにだんだん不安になってきてさ。そしてふとした瞬間に…運転手がガサッとダッシュボード開けたかと思ったら、右手に何かをギュッと隠し持ったんだ。
えっ、今の何…?運転手の突然の不可解な行動に緊張が走る。ちょっとなんかヤバいかも…時はリオのカーニバル期間で犯罪もそれなりに起こっている時期だし。そして次の瞬間、何かを握り持った運転手の指の間から、バラッと髪の毛みたいなのが滑り落ちたんだ…髪の毛?!