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インタビュー
2016/04/20
INTERVIEW Vol.3
志摩 浩子
SHIMA Hiroko

「世界一周なんて誰でもできるよ」
富士山の山小屋で聞いた一言から旅へ
(2/3)

夢のカッパドキアをキャンセル

志摩さんには、「世界一周へ行こう」と思い立った当時、ある目標があった。それは「カッパドキアで気球に乗る」というものである。火山によってつくられた壮大な岩の大地。その上空に浮かぶ無数の気球。映像などで誰しも一度は見たことがある風景だろう。日本で日常を過ごす人間にとって、確かに旅の目的となり得る魅力的な場所である。だが、結果から言うと、彼女はカッパドキアへは行かなかった。
志摩 あるスタッフの方に「アウシュヴィッツは絶対に行った方が良い!」って言われたんです。最初は何か怖かったし、どうかなぁと思っていたんですが、いろいろと調べたり、勉強したりしてみて、行くことに決めました。ただ、アウシュヴィッツとカッパドキアのツアー日程がかぶっていて、どちらかにしか行けなかったんです。すでにカッパドキアのツアーに申し込んでいたのですが、キャンセルして、アウシュヴィッツを選びました。
カッパドキアキャンセルの際には「人気のツアーだから、予約の取り直しは難しいですよ?」と何度もツアー担当者に確認されたそうだが、決意は揺らがなかった。彼女は、幻想的な夢の世界であるカッパドキアを捨てて、負の世界遺産「アウシュヴィッツ」へと向かったのだ。
アウシュヴィッツ
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺が行われた場所である。1945年にソ連軍によって解放されるまで、多くの人間が理不尽に処刑された。

ガス室で感じた収容者の気持ち

参加者26名。少しの間、船から離脱する4日間のプログラム。ピレウス(ギリシャ)で船を離れ、一行はポーランドのアウシュヴィッツへと向かった。
志摩 前日の夜に、ホテルに着きました。ホテルはアウシュヴィッツ博物館入り口の目の前にあり、あたりは真っ暗! 正直、怖かったです。私、普段は金しばりとかなる人じゃないのに、その夜は金しばりに遭いました。事前に調べたりして情報があったので、怖かったですね。でも、朝になって明るくなったら、覚悟が決まったのか、前日みたいな恐怖心はありませんでした。
「安住の地がある」と騙されて連れて来られた人びとは、着替えや家財道具など多くの持ち物を持参していた。ナチス・ドイツに没収され、集められたこれらの物は現在展示品として保管されており、実物を見ることができる。
志摩 ものすごい量の靴、メガネ、髪の毛(入所時に髪を刈られる)などが積み上げられていました。本当に、こう言葉にはできないような、胸に迫るものがありました。
志摩 ほかの大勢の観光客といっしょに、ガス室に入るために並んだんです。「シャワーを浴びる」と言って騙されて、処刑された方たちと同じように。そしたら、自分も処刑を待つ人のような感覚になって、怖くて、悲しくて、涙が出てきました。部屋に入ると、見た目はシャワー室でした。でも、よく見ると壁や床に、爪で引っ掻いたような痕が残っていて…。
多くの人間が銃殺された「死の壁」、ひと目で劣悪な環境とわかる被収容者棟など、悲惨な歴史を物語る施設を見て回った。あの、虐殺の代名詞とも言える「ガス室」にも。
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