ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。
笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。
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ローブの下に隠れた足枷・いつか歩き出す日を夢見て…
それにしてもネットが繋がらない。コーヒーとネットが目的でお店に入ってみたものの、ここでも前の店と同様に繋がらないまんまだ。
友人と連絡がつかなくて困り果て、ボーッとしながら注文したカプチーノをカウンターで受け取っていると、隣に立っていた黒人のおじさんとパタリと目があった。優しそうなその雰囲気に思わずニッコリ微笑むと「日本人?どこから来たの?」と声をかけてきてくれたんだ。
話してみると、私の地元「神戸」に仕事の取引先があるって言うから驚いた。そのおじさんは天然石を扱っていて、南アフリカのケープタウンから石を持ってきているんだって。ケープタウンに行ったことあるよって言うと嬉しそうな顔になって、おじさんはその時持っていた袋から石をたくさん取り出して見せてくれた。
「このブレスレットをあげるよ」タイガーアイの石の玉が連なったブレスレットを、私と友人にひとつづつプレゼントしてくれたんだ。そして、明日自分の街を案内してあげると言ってくれてさ。
だけどおじさんの街ってのは、どうやら「ハーレム」のことで。ハーレムって、ニューヨークの有名なスラム街だよね。気軽な雰囲気で提案された誘いに「じゃあ明日ね」と軽く返事してみたものの、後でもう一度じっくり考えてから行くかどうか決めることにした。だってさ。お誘いは本当に嬉しいんだけど、気軽にじゃあ行くよって簡単に言える場所でもないのが実状だ。
おじさんはホントにいい人そうだけど、そこには色んな状況の人が住んでいる。スラムという場所…他の土地に遊びに行くのとはちょっと意味合いが違う。濃厚に人生と向き合って人々が暮らしているような場所に、私たちのような観光客が気軽に迎え入れてもらえるとは思えないし、どんな場所にせよ女ふたりで会ったばかりの男性の家についていくのは余りに軽薄すぎるよね。
体験や検証ツアーに参加するのとも訳が違うし、今は個人旅行でもないから責任もある、ここは慎重に…おじさんの名刺を受け取って、自分のメールアドレスを伝えて笑顔で手を振り、公演時間ギリギリになったミュージカルの会場へ向かって店を走り出た。