寄港地に着いて下船する際に、地元の人々が音楽や踊りでお出迎してくれたりする時があってね。ここでは地元の伝統衣装を着た男の子たちが、体にペインティングをして伝統楽器を鳴らしながら迎えてくれた。話しかけてみると、この近辺の村に住んでるんだって。「エンベラ族」っていう部族で、森の中の高床式のおうちに住んでるよって言ってた。
絵に描いて見せてくれたおうちの屋根は三角で葉っぱでできていて、まるで漫画みたいな可愛いおうちで驚いたんだ。今度あなたの場所に遊びに行ってもいい?って聞くと、おいでおいで~って連絡先を教えてくれたよ。ひとりだけ英語が話せたその男の子は通訳の仕事をやっているんだって。パソコンのアドレスも持っていた彼から、伝統的な生活だけではなく、現代のものも普通に取り入れられている様子が伺えたんだ。
港の建物を出ると、即席のお土産物屋さんが並んでいた。アクセサリーやカゴ、バッグなんかが手作りで作られていてカラフル。カゴの模様を彩っている色は、草木で染めた色なんだって。草木や自然の染色ってナチュラルなイメージがあるんだけど、確かにビビッドな色もたまにあるんだよね。そういえばサボテンにつく虫の色で、紫ピンクっぽい色が出るのを聞いたことがあるよ。
模様自体もここに住む野生の動物を描いてたりしてて、自然に囲まれた心豊かな生活を送っているんだなぁって思い浮かぶ。この夫婦もエンベラ族だって教えてくれたから、「さっき素敵な男の子に会ったんだよ」って話をしたんだ。話しているうちに「それ、うちの息子じゃないか」ってなって笑ったよ。家族みんなで来ていたんだね、明るくって素敵な家族だったな。
遠くのジャングルまで出向いて行かなくっても、ふとした場所で地元の人たちと交流した時間を持つと、それだけで濃厚な気配が実体験したかのように脳裏に刻まれる時もあったりする。その人がその土地の空気感をたずさえているから、行ったことがなくても話を聞くだけで感じ得る何かもあるんだ。
だけどもちろん、その土地に行ってその場で感じるのが一番だよ。行けるチャンスがある人はどんどん行ってみるのがいいよね。人と出会い、土地と出会う。いろんな色や匂い、風に包まれながら歩くのはホントに素敵なことなんだ。