目の前の川が少し波立ってきたかと思えば、観光ボートがキラキラとした水の上を優雅に通り過ぎて行った。水面からの眺めもまた素晴らしいんだろうね。
車がほぼ通らない静かな小道を、川沿いに走り続けている私たち。ここは街の内側にある道だからかな、駅前からの大通りとは雰囲気が全く違うんだ。美しく整った街並みは毅然としていて、例えるならば、貴族出身の女性が由緒ある古い椅子に座っているような佇まい。
そしてベルギーの、もう一つ特徴的な風景といえば「風車」。オランダに近いだけあって環境も似ているのかもしれない…その風貌自体も可愛いし、観光の名所にもなれるほどにポップ。見てもよし、使ってもよしっていう存在なのがいいね。
今回、自転車を借りたのは風車の場所に行きたかったからっていう理由もある。私たちが行ったブルージュの街には、水路沿いに幾つかの風車が点在していてのどかな風景を演出しているんだ。ところで、この風車で作るエネルギーは一体どういう風に使われているんだろう。
私たちが生きていく上で必要なもの…「エネルギー」。電気・ガスをはじめ色んなエネルギーに頼って生きている私たちにとって、エネルギー問題っていうのはかなり身近なものとしてある。
例えば表立って問題になってる311の事故。エネルギーの恩恵を受ける代わりに、その負の部分も一緒に引き受けることになってしまった例だよね。本来、生きていくために必要なものを得るためのはずのものが、生命そのものを脅かすような恐ろしいものになってしまっているような現状。
エネルギーを得る手段として、どんなものが必要で不必要なのか色んな意見が飛び交っているし、現状はとても複雑だ。だけどその決着というのが着く前にひとつ重要なことは、私たちが「明確な未来のビジョンを持つ」ということなんじゃないかって思うんだ。
これから先どうやって生きていきたいのか、どんな未来のビジョンを見て、それをどう形作っていきたいのか、そしてそれを可能にする為には何から具体的に始めていくのか。こうなったらいいなと思える理想の未来像から逆算してみると、おのずと今選ぶものが見えてくるというかさ。まずはそこから見つめ直していく時代に入ってきているんだろうね。
例えば身近なこととして、自分が使うエネルギーを自分で作るのもいいなって思う。実は誰でも簡単に作れるらしいんだ、家庭での発電システム。そうやって実際に自家発電で生きている人っていうのが今回、水先案内人として乗船していたテンダーさん(※)。
船の上では、彼の生活の話や技術を講座を通して教えてもらったんだ。その自家発電システムを真似て作った小学生もいるって話だよ、とっても興味深かった。生き方はそれぞれ、ホントは自由に選べるようになっているんだね。
(※)テンダー…ヨホホ研究所主催。鹿児島県にて電気・水道・ガス契約無しの年間家賃1万円の家「てー庵」を作り暮らす。「わがや電力-12歳からとりかかる太陽光発電の入門書」(ヨホホ研究所)を出版。