その映画での撮影舞台となった有名な駅がここ「キング・クロス駅」。物語の中でハリーたちが電車に乗るシーンがあるんだけど、その「プラットホーム9と4分の3番線」の壁に彼らが消えていくシーンを、駅構内で再現して写真撮影できる場所があるんだ。どういうことかって言うと…
壁に半分埋まった状態の、荷物を載せたカートがあって。その手すりを持って、ぴょんと飛び跳ねた所をカシャっと写す。そうするとまるで壁に荷物が吸い込まれていくように見えるんだ。躍動感が出るように長いマフラーを首に巻いて、飛んだ瞬間にそれをフワッとさせてくれる係りのお姉さんまでいるよ。一体誰がこんなこと思いついたのか、面白いアイデアだよね。
ハリーポッターの本の魅力は、魔法の世界っていう部分だけじゃないんだ。人間の中にある光と闇の部分の葛藤もあれば、ひとことで「これが正義だ」って言ってしまわない所があって。「どんな人間も正義になりうる」し、その逆もあるからさ。その間にある心の揺れや周りの人たちの愛情を知るために、様々な物事は起こっているっていう考え方もあるよね。
自分の持って生まれた因果というか、立ち向かうべきものに対してただ真っ直ぐに向かっている感じはあっても、こうあるべきだっていう一般的な価値観をあまり前に出さない。どちらかというと結構、個人主義というかさ。そこの部分が何だかイギリスっぽい物語だなって思うんだ。
「正義」とか「平和」って、角度を変えてみると表情が違う。それに対して色んな角度から見ることができる「世界一周」の旅は、そういう視点からヒントを拾い集めやすいんだよね。だからこそこれはただの旅とはちょっと違う、大きな変化の可能性を含んだ「ムーブメント」になり得るものかもしれないんだ。
多様性を感じさせるイギリス・ロンドンの街を眺めていると、ここもそんな世界の、ひとつの雛形なんだなって思えてきて感慨深い。
ハリーポッターからビートルズまで、色んな世界的ムーブメントを巻き起こしてきたイギリスだからこそ、その無限大の可能性を夢ではなく現実に感じさせてくれるんだと思うよ。世界は「個」の集まりで構成されていて、ムーブメントはそんな小さな個から始まっていく。
「個としての自分」があらゆる角度から世界を感じ取れたなら、散りじりのパズルを組み合わせて、ひとつの大きなムーブメントを作りあげていくことができるのかも。
目の前の信号が青に変わった。瞬間、魔法から引き戻されたかのように、人々はジッと停止していた状態から突然意思を持って歩き出す。ただひたすらまっすぐに。
さて。ロンドンはGOサインを出してくれた、そろそろ私たちも前に向かって歩き始めてみようか。