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ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。 笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。 最初から読む ひとつ前の記事を読む

地中海の太陽をそのままに受けた真っ白な壁が、光を反射させて街並みを眩しいまでに照らしている。切り立った岩肌に並ぶ建物は連なって柔らかくカーブし、この島の自然な形に沿って作られたような独特なフォルムだ。
ギリシャの美しい島、サントリーニ。同じギリシャでも島だからアテネとはまた違った空間。どちらかといえばアテネは、歴史的なものが平らに薄く何層も蓄積されたような空間だったけど、ここには島特有のいわゆる島時間が流れていて。だけどそこに野暮ったさは全くなく、スッキリとした透明で真新しい時間が縦にいくつも伸びているような感じなんだ。

ここは「イア」と呼ばれる小さな街。建物はどれも低くて小さく、くっきりとした青空が大きく目の前に広がっている。建物の隙間に見え隠れする細い階段は紺碧の海まで長く続いていて、そこを降りていくイメージがふと湧いてくる。もうそれだけで映画のワンシーンにいるようで、立ち止まったまま心は波打ち際へと行ってしまいそうだ。
街にはたくさんの雑貨屋さんやレストラン、小さな洞窟型ホテル、教会やセンスのいいギャラリーなどがあちこちに隙間なくあって、その洗練されたような空気感にちょっとリッチな旅をしている気分になる。

街を彩るお花もとても綺麗で、真っピンクなブーゲンビリアがあらゆる壁に美しく映えている。そしてその周りでは人なつっこい犬たちが寝そべっていて、たまに気まぐれにこちらの後をついて散歩したりするのが可愛いんだ。狭く入り組んだ通路の、その迷路に入り込んだようなワクワク感。そう、こんな街角には物語が生まれやすい。
さて。地中海といえば、地中海料理。魚介が豊富に採れるこの環境にあって、それを食さずしてはもったいない。そしてサントリーニ島で料理を食べるのならば、この景色を見ながら食べるのが絶対にいい、というかそれがホント最高。
美味しい匂いに誘われて

美味しい店は必ずいい匂いがするんだ。さっきから狭い道を行ったり来たりする間に、その美味しい匂いに思わず何度も振り返ってしまう店があった。魚介のスープにハーブが混じったような匂いが漂う店内は、お昼時とあって沢山の人で賑わっている。入り口から覗いてみた感じは狭そうなんだけど、どうやらその賑わっている奥にもうひとつ空間があるようだ。

人が少なくなる時間を見計らって、その奥の空間に足を踏み入れてみた。食事を楽しんでいる家族のテーブルに並ぶ丸ごとの魚料理と、壁のないオープンなデッキ席からの、視界いっぱいに広がる海と街並み。座っていても見えるその絶景を横目に、ハーブたっぷりの美味しい地中海料理を味わえるなんて。友人と数ある種類のメニューからかなり吟味して注文、そしてビールを片手に満面の笑顔で、地中海に乾杯!私たちの心と身体は幸福感たっぷりに満たされていった。
予想通りの美味しさに満足しきった私たちは、レストランの椅子にもたれながら眼下に広がる穏やかな海を見つめていた。サントリーニ島の白と青の深遠なコントラストの素晴らしさは、見ていてもいつまでも飽きることがない。時間が経てばたつほど心は遠い所までどこまでも誘われ続ける。

ふと、海の碧色を見ていて思い出した。「グラン・ブルー」という昔の有名な映画のこと。美しいインディゴの海がスクリーン一面に広がっていたっけ。映画の始まりのシーンは白黒だったんだけど、そのシーンはギリシャのアモルゴス島という場所で撮影されていたらしい。調べてみたら、サントリーニ島からすぐ隣にある島だった。若き日のジャン・レノ扮するエンゾと、ジャック・マイヨールという実在していたフリーダイバーの物語だ。

その映画には素敵な要素がいくつかあった。世界の何ヶ国かで撮影が行われていたので劇中で旅してる気分になれたり、海のずっと奥深くまで潜っていったり…海辺でのシーンも数多くあって海の世界を思う存分堪能できたんだ。中でも特に印象的だったのは、ジャック・マイヨールという人の持つ世界観。
風景の透き通るような美しさと淡々としたストーリーの奥にある、深遠な心情とのコントラストがホントに切なくてさ。そして何よりも、美しい景色と相まって展開していく物語の最後、印象的なラストシーンが忘れられなくて…思い出すと心がぎゅっとするような素敵な映画だったよ。
美しく切ない光景

イタリアのシチリア島を中心に撮影されていたその映画だけど、出てくるシーンの場面が所々サントリーニ島の雰囲気とどこか似ていて、自分の中で勝手にシンクロしてしまう。シチリアはどっちかっていうと、この後訪れるマルタ島の方がすぐ近所ではあるけれども、地中海の島々はどこか似た雰囲気を漂わせているんだ。
自分が映画で見たような空間に行った時に、独特の空気感に包み込まれるっていうか…初めて来たって気がしなくて、どこか懐かしい様な、ここを知っているっていう感覚になれるのが嬉しい。あの映画もこんな風景の中で展開される物語だったからこそ、切ない心情が際立って美しく描き上げられていたんだろうなって、ここに来てそう実感したよ。

イアの街の雰囲気を心ゆくまで堪能するべく、小さなカフェにも入ってみた。ちょっとした小部屋のような小さなカフェには、5人も座ればいっぱいになるようなカウンターと壁際に3つ程のテーブル席。奥の大きく開いた窓の席に座るとそこにもまた、窓枠いっぱいの紺碧の世界が広がっていた。

海を常に体全体で感じながら一日を快適に過ごせるなんて。しかもこの完璧なロケーションだよ。光も、風も、光輝く海面も、美味しい料理も…
浅いローストのグリークコーヒーを注文して待つ。ギリシャのコーヒーは入れ方が独特らしい。アテネのお土産屋さんでたまに、コップ一杯ほどの大きさの可愛い小鍋を見かけて気になってたんだけどさ、その銅製の小鍋にコーヒー豆と水、砂糖を入れてそのまま沸かしたのがグリークコーヒーなんだって。

豆の挽きが細かいのが特徴らしいんだけど、飲み終わる頃にカップにコーヒーの粉が模様のように残っていて、それを見て占いをする「コーヒー占い」っていうのがあるらしい。コミュニケーションのひとつで遊びのようなものだろうけど、そこに流れている時間を想像するとほんわかするよね。
こんなにもスリリングな体験

細く曲がりくねった道を先へ先へと進んでいくと、終着点のイア展望台へとたどり着いた。夕日の時間が絶景と言われるこの場所だけど、昼間だといくぶんか観光客も多すぎず過ごしやすい。展望台だけあって、今までのどの場所よりもこの街を広範囲に見渡すことができる。もちろん海も、360度のパノラマに広がっているんだ。こんな絶景をバックにひとりのミュージシャンが演奏していた。広がりきった空間に重なる音はトリップ感満載だ。
夕日が傾く頃にはイア地区を離れ、オールド・ポート港近くの街にまで帰ってきていた。高台にあるその街から見る夕日もまた素晴らしく、街の下までずっと続いていく石の階段を下りながら何度も目を奪われては立ち止まってしまう。ホントにこの島は、どのシーンを切り取っても絵画的だ。

路地を歩いていると、前からロバが群れをなしてやって来たりする。そんな風景もこのこじんまりした島にピッタリなんだ。ここではロバに乗ることもできるんだよ。馬車に乗れる観光地は数多くあるけど、ロバに乗れる所って余りなかったかも。
生き物に乗って移動する感覚は、車やバイクとは全然違うんだ。ロバが歩くたびに上下する景色と生き物ならではのリズム感、そこに彼らの肉体の柔らかみやじんわりと暖かな体温、たまに落し物の匂いなんかも混じってたりして。そうそう、私もチャレンジしたんだけどひとつだけお伝えしておきたいことがある。オールド・ポート港近くでロバに乗るなら、下りではなくて登りがいい。

街の上から港まで下る長い階段をロバで降りて行ったら、思っていたよりも結構怖かったんだ…ロバから体が落ちそうになってさ。ロバの大きさや自分の足の長さなんかがしっくり来てれば、そこまで問題にもならないかもしれないんだけど。私の足は上手に固定できず体が揺れていてたから、鞍が緩んできて。おじさんに引かれて勢いよく小走りに階段を降りていくロバの背中の上で、左右にグラグラと揺れながらバランスとるのに必死だったんだ。
目の前は絶景、吸い込まれるような深いブルーに向かってダイビングしていくかのような、急な傾斜が続く階段の道。だけど。こちらはゆったりと階段を降りる間の景色を楽しむ余裕もなく…乗る前は右手にカメラを持って、動画を写しながら行くぞと準備してたんだけど、いざ動き出したら捕まるだけで必死。なかなかスリリングな思い出になったよ。まあ、それも人によるとは思うんだけどね。
感動的な夜の世界

サントリーニ島には興味深い話がある。この周辺一帯は、過去に火山が噴火して文明が滅びた場所ということもあって、実はアトランティス大陸だったのではないかと言われている地域なんだ。
近くのネア・カメニ島は今でも活火山として活動していて、あったかもしれないその頃の名残のようなものを漂わせている。サントリーニ島の静けさとは対極にあるようなそんなメア・カメ二島との存在の対比が面白い。オールド・ポートから少し離れた沖に停泊していた私たちの船に戻る時、小さなボートでこの活火山のすぐそばを通ったんだ。灰色の煙がモクモクと上がる大地が今でも生きているのを感じたよ。
そして。世界を旅する中で、最高すぎてこれ以上のものはないだろうって、そう思えるような瞬間が何度かあったんだけどさ。そのうちのひとつが、船から見たサントリーニ島の夜景と満月。

夜のサントリーニ島を照らす、小さく集まった光のひとつひとつがキラキラ輝いて美しい。少し離れた海の上から見るその光景の精錬された輝きにうっとりとしてまどろんでいたら、街明かりから少し離れた右側の丘向こうから、黄金の大きな大きな満月がゆっくりと登って来たんだ。
その神々しさは息を飲むほどで、街の光りをも照らすかのように輝きながら辺り一帯を包み込んでいた。
サントリーニ島。数多く回った世界の寄港地の中でも、またもう一度来たいと願った場所のひとつだ。次回は更にロマンチックであることを心から期待しつつ、月明かりが照らす島をいつまでもずっと眺めていたんだ。
PHOTO GALLELY

サントリーニ島の美しい青と白

店先に並べられた陶器たち

わんちゃんもお店番

サントリーニ島のシンボルの様な建物

魔除け模様デザインの食器

ブーゲンビリアの咲く木陰で

眺めの良さそうな小さいカフェ

ショップそのものが美しい

海と太陽を感じながら

青空の元で過ごす時間

壁画のタコが可愛いレストラン

小さなマーケットにはフルーツが

狭い小道を迷いながら歩く楽しみ

ランチを食べたのは扉向こうの海側の席

扉の奥に吸い込まれてしまいそう

個性的なお土産屋さんも

街を下る階段から島を見渡す

柔いだ太陽と心地よい風を感じながら

レストランから眺める素敵なサンセット
(取材・文・写真/Hinata)
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第126回クルーズ
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春に出航し、アジアから地中海、ヨーロッパ、北中米へとめぐる全108日間の世界一周クルーズ。ヨルダンやサントリーニ島、ロンドン、バンクーバーなど多彩な港を訪れ、ソグネフィヨルドやアラスカフィヨルドでは大自然の絶景を満喫します。旅行のベストシーズンといわれる初夏には、地中海から北欧まで数々の世界遺産と出会う航路へ。季節が織りなす風景とともに、まだ見ぬ世界を体感する船の旅です。
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