さて、本日のメインイベントのパルテノン神殿。歩いてすぐに行けるということで、徒歩でゆっくりと向かってみた。遠くの丘を見上げるとそこには数本の柱が優雅に美しくそびえ立っている。やっぱり不思議なワープ感があるんだよなぁ…暑い日差しの中、そんなことを考えながらも坂道をどんどんと登っていく。道の脇では、お洒落なカフェのソファーに人々がもたれかかり、神殿の街に浸透した深い層のような時間を味わっているかのようだった。
石畳の坂道を登りきった広場で入場券を買い、更に丘へと登る。ふと振り返ると、アテネの街が眼下に大きく広がっていた。大きな岩に登って深く深呼吸すると、空気の中に凝縮された時を感じる。ここにはまだ昔の空気がそのまま残っているんだなぁ。石は記憶を持っているっていうけど、その記憶が伝わって来てるのかも。そんなことを考えながら更に上へと向かって進む。
そして、ついに神殿が目の前に姿を現した。大きな柱が数本、青空と太陽をその背後に従えて堂々と立っている。大きく切りだした石の塊が空高く積み上げられて、それが一本の柱になっているという構造が近くで見るとよくわかる。
石の文化…木の柱とはまた違う質感。だけど石だから硬いという感じでは全くなくって、細かな砂が固まってひとつの物体になっているような、そのサラサラ感が伝わってくるからか建物全体がなんだか優しく感じられる。そしてどこか中性的というか、そんな風な空間。
世界中から来た大勢の観光客が揃って見上げているのは、女神アテナを祀る為に作られたというパルテノン神殿だ。丘の入り口からゾロゾロと入ってきてはすれ違っていく人たち。ここにいま集まっている人たちとは、もしかしたら前世でここに一緒にいたことがある仲間なのかもしれない…そんな風なことが頭をかすめる。ぼんやりと歩いていると、まるでそれが本当にそうだったように思えてきてさ。そしたらみんなが白いローブを着て歩いているかに見えてきた~
もしかしたらそんなイメージも全て、遠い遠い石の記憶が私に見せてくれたものなのかもしれないなぁ。うん、ありえなくはないよね…となると、にわかに始まる妄想タイム。あの人は高貴な雰囲気がするから神官かな、もっさりヒゲのあの人は庭師さんだろう、仲良く手をつないでいるカップルは前世でもきっと恋人同士…などなど楽しくて止まらない。そしてすれ違う人々に親近感を抱きながら微笑みかけてしまう、かなり怪しい私。