神殿のある広場は360度ぐるりと見渡せる丘になっていて、その遥か下には街並みが広がっていた。キリスト教の大聖堂やイスラム教のモスクだった時代もあるパルテノン神殿。ここからの眺め…神官たちはこの丘に立ち、深淵な空気の中にギリシャの石たちが発する様々な祈りの記憶を目にしていたのだろう。
石の柱の向こうから太陽の光が帯状に飛び込んでくる。軽い目眩を感じながら頭の中に何かがよぎる。その微粒子の影のようなものを捕まえようとしても、いつもあっという間に姿を隠してしまうんだ。
出入り口にある神殿の通路はあまりにもたくさんの人が歩くためか、ツルリとしていてかなり滑りやすい。目の前を歩くカップルがやたら気になって見ていたら、彼の方が短い叫び声をあげて勢いよく転んでしまった。
側にいた彼女と私は目が合って、蛙のように見事にひっくり返ったままの彼に思わず爆笑。きっとこんな風景も、大昔からここで繰り返されてきているんだろうなぁって思ったら急に空間が温かく感じられた。この場所で一体何人がすっ転んだのか、その記憶も石たちは持っている。
パルテノン神殿を出て、もと来た街へと帰って来た私たち。朝に一度通って気になっていたお店をチラリと覗き見る。店員さんがこちらに気づいてアッという顔をして、微笑んでくれた。朝にも目があって思わず見つめてしまった彼…うん、やっぱりイケメンだ。
そう、ギリシャはイケメンが多かったんだよ。友人とふたりで「ギリシャ最高」って何度言ったことか。ギリシャ彫刻のような顔だから素敵なのかなぁ?けど、ギリシャ彫刻を見てときめいたことはまだ一度もないけどさ。
ギリシャ男性のホリは確かに深かったような、なのに案外サッパリ系なような。あまり思い出せないので、またもう一度確認しに行きたい、かなり。ギリシャ彫刻は10分も見れば飽きるけど、イケメンなら角度を変えながら一時間は眺められるな…って、何の話だ。
とにかくギリシャは、神話世界を彷彿させるようなアンティークからイケメンまで、見ていて空想トリップしてしまうような魅惑たっぷりな街だったよ。