ちょっとだけ追記。最近ね、沖縄の八重山諸島の一番端っこにある与那国島で、面白いプロジェクトが行われたんだ。
八重山諸島には小さな島々が点在してるんだけど、与那国島は晴れると台湾が見えるくらいの場所にあってさ。そんな与那国島から西表島まで約75kmの距離を、草を編んで作った船(※)で渡ってみようという実験が行われてたんだ。
これは「日本人はどこから来たのか」というテーマで、3万年前、台湾から沖縄に航海してきていたということを国立科学博物館などのチームが実証しようとしたプロジェクトでさ。なんでそんなことをしたのかっていうと、実は最近、八重山の石垣島で大昔の人骨が大量発見されていて、2万年以上前の旧石器時代の人骨発掘では、今回のは国内最大規模のものとなったらしいんだ。そうなるとやっぱり考えるよね、ルーツの事をさ。
※草船は、ペルー・ティティカカ湖の葦船をモデルにしたもの。
与那国、西表島から屈強な若者たちが集められ、草を編んで作った船に乗り込んでのこの実験的航海。結果は、船が北に流されすぎた為に伴走船で引っ張って進路を変えたり、夜間はうねりのために漕ぐことを中断したりなどして、西表島まで到着はしたものの本来の古代そのままの航海再現は難しかったということだった。
だけど今、このタイミングで、私たちのルーツを探るムーブメントのようなものが海を舞台に繰り広げられていることが面白い。色んな仮説を実証するためには、古代の英知は欠かせない。そしてそれを使うことでアイデンティティーの探求にもつながる。
みんな知りたがっているんだ。自分はどこから来た何者であるのかを。平和といえども政治的にも不安定さがあり、地震や自然災害など色んなものが一度に起こり始めている。そんな現代をしっかりと生き抜くためには、人に頼るだけではなく自分たちの力で何とかしていく必要がある。諦めるんじゃなくて、自分から発信していく力強さ。そのための生きる柱としてのアイデンティティーはとても重要なんだ。
そんなわけでいっぱい船の話をしたけど、私は別に船マニアって訳ではないよ。ロマンもそこそこで。だけどまた何かあったら、とりあえず続編出そっかな。
2016年7月某日
※この後、ホクレア号は世界一周の3年間の旅を終えて無事ハワイへと戻ってきた。そして私は、再び不思議な導きのままに出会う事となった。その話の続きはまた、どこかで…。
(取材・文・写真/Hinata)