沖縄でのウェルカム体制はとにかく凄かったよ。ホクレア号が停泊した港では日中ずっとイベントが開かれていて、フラや音楽の生演奏などで会場は賑やかに華やいでいた。私はそんな景色を遠目に眺めているだけの予定だったのが何故か今、汗をかきながらクルーたちの食事になるBBQを焼いているのが不思議。イベントは暗くなるまで続き、大盛り上がりのステージでは最後に大カチャーシー大会。クルーも参加者も混ざり合って沖縄の歓迎会は幕を閉じた。
次の日もまた船の停泊する港へ。ここで思いもしなかった、初めての乗船体験!みんな何日も前から予約して、キャンセル待ちでようやく乗れるような状態なのになぜか急にひとり分空きが出て、その場にいた私が乗れることに。だってあの、ホクレア号だよ?停泊している状態とはいえ、映画や本で見ていた遠い存在が…ホントに乗っていいの?と、少し緊張しながら初めてホクレア号の船体にそろりと乗ってみた。
なんか、優しい。船って男の感じがするかと思ったけど、どこか女性的で。荒さとか男気とかを感じないんだ。どちらかといえば大きな母のような包容力と芯の強さ。
ふと、上を見上げる。高くまっすぐ立ち上がっている柱の先っぽに、布のようなものがはためいている。不思議と気になって何度も見上げたんだ。聞いてみたら「ハワイから神様を連れてきているよ」だって。それは、船体の後ろにあるティキ像のことなんじゃないかって他の人には言われたけど、私は柱の一番上にいると思ったんだ。彼女は船全体が見渡せる、一番高い場所からみんなを優しく見守っていた。
船の上にいる間は、不思議と感謝の気持ちで心穏やかに過ごせた。色んな想いを、この船は運んでいるんだなぁって感じたよ。そして船を降りてから乗船会に来た人が少なくなった頃、船の前でクルーが集まってゆっくりと円になり手をつなぎ始めたんだ。
その場からそっと立ち去ろうとしたら、体の大きなクルーが横に立って片手を私に差し出した。えっ、いいの?そしたら後ろからやってきた他のクルーが、もう片方の私の手を取ってギュッと握ったんだ。
円は大きなまん丸の形になって、クルーたちは向かい合い静かに目を閉じていた。つなぎ合わせた両手をぎゅっと握る。ハワイから沖縄まで、命がけの船旅をしてやってきた彼ら。古代の英知を証明するために、そして、これから世界に向けてのメッセージを運ぶために。ものすごく純粋で力強いエネルギーだ。彼らが運んできた大切なものが、私の中にも流れ込んでくる。何かがグッとこみ上げてきて目頭が熱い。ありがとう…ただそれだけしかなかった。
(取材・文・写真/Hinata)