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ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。 笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。 最初から読む ひとつ前の記事を読む

謎がいっぱいのミステリアスな島「イースター島」。
まさか自分がそこに上陸する日が来るなんて思ってもいなかった。きっと誰もがそう思うんだろうね、まるで遠いところの話というかさ。島に対するイメージというか、知っていることはモアイがある島だということだけ。そのモアイがあるっていうだけなのに、何で私たちはこんなにも強く心惹かれてしまうんだろう…

イースター島って名前はあまりにも有名なんだけど、実はラパヌイ(大きい島)っていうのがこの島の正式名称。島の人たちはもちろん昔からそう呼んでいるよ。イースター島っていうのは外の人が勝手につけた名前なんだよね。
そう、ここは知っての通りあのモアイ像で世界的に有名な島。島の中には実に1000体を超えるモアイがあるというからホント驚きだ。どこか不思議な物語性があるモアイ、その巨像の過去深くにはどんな数多くの物語が隠されているのだろうか。

ラパヌイの島が見えるぐらいの場所まで来て、私たちの船は沖の方で一旦錨を下ろして停泊することになった。
今回とにかく色んな国をまわってるんだけどさ、初めてだよ…島の空気に鳥肌が立ったのは。それだけ凄い、何ともいえない大地のエネルギーを感じたんだ。それも島からだいぶ離れた場所に停泊していたその状態でだよ。だから、どれだけ島全体がエネルギーを発してるかってことだよね。
島はパッと見た感じ、南国の緑がモリモリあるという風景ではなく、どちらかというと結構さっぱりした大平原というイメージ。シンプルな風景の中に、やけに存在感のあるモアイがポツンと。余計なものは何もないというか、それだけにほんとモアイの存在が際立っているんだよね。そして遠くからでも彼らはこちらに向かって深淵な何かを発している、そんな気がしてならないんだ。

ラパヌイという島は切り立っていて、断崖絶壁の場所があちこちにある。だから大きな船を島に直接つけることはできず、代わりに小さなボートで数名ずつ上陸する感じになっていてさ。波も結構あるからタイミングを見ながらの上陸なんだけど、それによっていつ島に渡れるかもまちまち、全く読めないような状態で。みんないつ上陸できるのか船の上から波の様子を見守っていたんだ。
だけど自然のことだから、それってごく当然のことなんだよね。なんでも人間だけのタイミングで全てがまわるわけではない。私たちの時間に合わせるのではなく、自然のタイミングに合わせる…それってとても素敵な経験だと思う、だってそうすると謙虚になれるから。
謙虚になれると感謝が生まれる。感謝が生まれるところに、喜びがある。そうやってようやく島に渡れるってなった時にはホント感無量だった。島が、来ていいよって言ってくれたような気がしてさ。
身体の底からゾクゾク…

朝日を全身に浴びながら小さなボートで島に向かった。波の揺れとの一体感はラパヌイと私たちが既に繋がっていることを教えてくれている。ついにあの幻の島に上陸するんだ。島はすぐそばで、大きく両手を広げて待っているよ。
地元の漁師さんたちが操縦するボートは、波がどれだけ荒くても何故か全て任せきってしまってもいいくらいの安心感がある。きっと彼らがラパヌイの海を知り尽くしているからだろう、その意識に合わせると自分までもが勇敢で大胆になれる気がしてくるのが不思議。間もなくボートは大きく波打つ岩場へと横付けされた。

火山の島だけあって、黒いゴツゴツとした岩場が小さな船着場を取り囲んでいる。そのすぐ横手にあるビーチには真っ白な砂浜が広がり、椰子の木が密集して生えていた。そしてそのちょっとした南国感に不似合いとも言える小さめのモアイが6体、海を背にして山を眺めている。近づいて正面から見て見たいと思いつつも迫る時間、ここはまた明日見ることにして早速ラパヌイツアーの車に勢いよく乗り込んだ。

この日参加したのは、植林体験&モアイツアー。実は、ラパヌイには昔たくさんの木々があったんだけど、モアイ作りや部族間の戦いの為に一気に減ってしまったらしいんだ。
木がないと土壌も弱まり、島の侵食が進む一方になってしまう。そんなラパヌイにとって植林は未来に関わってくる大切なこと。島に残る固有種の保存も含めて、ラパヌイの人々は真剣に植林に取り組んでいるんだ。そこでお話を伺ったあとに、実際に種植えなどの農作業を体験。

続いて、島内をぐるっと巡るモアイツアーに出発した。島の色んな場所にモアイがあるんだけど、その空間の雰囲気も違えばモアイの顔も違っているような感じがする。岩を切り出してモアイを製造していた山は、「ラノララク」という名の雰囲気満点の大きな休火山だ。その中腹や火口の中には今でも、切り出し途中のモアイがそのままに放置されているという、そこだけ時間が完全に止まってしまっているような凄い空間があるらしい。

あちこちに点在するモアイはホントに圧巻!大きいものだと20m程にもなるんだって。大自然の中に突如ドンって立ってる、あの感じがやっぱり凄いんだよね。観光地になっているから周りに人もいっぱいいるんだけど、もしここに私ひとりっきりで彼らと対面したらって考えたら…身体の底からゾクゾクしてくる感じだよ。やっぱりモアイはずっと何かを発している、そしてそれは時間を超えてるんだ。
モアイの次の新たなる信仰?

遥か昔、ここでは常に戦いがあった。部族間同士の長い長い戦いの末に、大地は荒れ木々は消え失せていった。それでも部族の権威を高めるために、人々は祭祀に使うモアイを盛んに立て続けてきた。そんなことがこの場所でずっとずっと繰り広げられていたんだ。
信仰がなくなり形だけになった今では、モアイに昔ほどのエネルギーはないにせよそれは完全に消えてはいない。それは未だ大きく見開いた彼の目を見れば分かるはずだ…
なんてね。そんな妄想をしながらモアイを眺めていると、私は今どこにいるんだろうって一瞬見失ってしまうよ。そんな感覚がまた、実際に行ったからこその面白い体験なんだけどね。

モアイは島のあちこちにあるので、それを見るためには車で島の色んな場所を駆け抜けることになる。時折、野生の馬が集団で生活しているのが見える。いつの時代からこの島に馬が現れたのだろうか、天敵もいないここは彼らにとって楽園なのだろう。
馬も私たちも生きる場所を与えてもらっている。大地から。ホントにそれだけに過ぎない小さな存在なんだ。どれだけ争って場所を求めても、最後にそこに残るのは朽ちたモアイだけ…島は何も言わず、その風景をただただ見せてくれた。

ラパヌイに到着する何日か前から、私たちの船にはラパヌイ出身のダンサー「ロサ」が乗船していた。彼女が水先案内人(※)としてラパヌイの伝統的なダンスや、モアイについての伝説などを講座の中で教えてくれていたこともあって、私たちはラパヌイに対してかなり親近感を抱いていた。ロサは地元の伝統を守っていく団体「Toki」のメンバーでもある。彼女は色んな知識を私たちに教え、この島と繋げてくれたんだ。
(※)水先案内人…ピースボートの旅の中で、その時々の行く先に関わる各界の専門家やアーティストが「水先案内人」という名前で船に乗船し、乗客が旅をより深く楽しめるように船内で様々な講座やワークショップを開いている。

実はラパヌイにはモアイだけでなく、興味深いものがいくつかある。
ラパヌイの国旗に描かれている「レイミロ」という紋章は、女性が首から下げる首飾りが原型になっているんだ。実物のレイミロの両側にある模様はふたつのビジョンを示し、真ん中には象形文字がたくさん刻まれている。過去の記憶を彷彿させるそのシンボルには、島のルーツ的なものを紐解くヒントがありそうだ。
やがてモアイの時代が過ぎて、そこにまた新しい信仰ができた。
伝説を紐解きルーツを探れ…!

「鳥人伝説」…それもモアイと同じく政治的権力や支配権を示すためのものだった。それは島に住む幾つかの部族の中で、その島全体を統一できる権力者を決めるためにできた取り決めだった。
部族内の一番の勇者が、垂直に切り立った崖を降り海を泳ぎ、島に上陸する。そしてある時期しか来ない渡り鳥の卵を見つけそれを崖の上まで持ち帰り、部族の長に渡す。その卵を一番に得た権力者がこの島のリーダーとなる。
土地のための権力争いはいつの時代もあるんだね。生き残るためにみんな色んな形で自己主張をしてきた。そういったものの名残をこの船の旅ではリアルに見ることができる。それはまた、平和とは何かをその場所の視点で感じられるということでもあるんだ。

そういえばひとつ、不思議だったことがあるんだけどさ。ラパヌイに伝わる伝統文化の中に、日本の「あやとり」に似たものを使う踊りがあるんだ。ホントにそっくりそのままなんだよ。こんなにも遠くに来て自分たちに近いものを見せられると、心底驚く。ここでもやっぱりルーツのことを考えさせられたな。

ラパヌイの古い伝説に「ハウマカの夢」というものがあってね。それによると、彼らの遠い先祖は古代船に乗って遠くヒイヴァという島からラパヌイにやって来たという話なんだ。
昔、ヒイヴァの王様のアドバイザーに、ハウマカとういう人物がいた。島が沈む可能性があることを予知したハウマカは、ある日夢の中でイースター島を見つけた。そして島の住民たちはカタマランという形の古代船で星座に基づいて航海し、ここラパヌイにたどり着いた…そういう伝説なんだって。大昔から人々は船で遥かなる旅を重ねていた。果てしなく広がる大海原によって、私たちはどこまでも限りなく繋がっているんだね。

そんな興味深い話がたくさんあるラパヌイで、ちょっと面白かったのはさ、お土産物にミニモアイ像が手作りで作られていたこと。ちゃんと本物のモアイと同じ素材の石を使ってるって島の人が言ってたよ。結構これが可愛いんだ、意外にさ。モアイに対しての島人のそういうお茶目な部分が見えたから、モアイの持つ存在の怖さというか重さが少し薄らいで、親近感のようなものさえ感じて見れるようになった気がするよ。そんな島人たちの笑顔は、どこか力強くて安心するんだ。
この島に住む人々から感じるのは「野生感」。そしてそのワイルドさの中には真っ直ぐ縦に伸びる柱がある。アイデンティティーだ。彼らは生き方においてそれをちゃんと表現している。だからこの島と人々の波動は全く同じ。船の中にいても、隣にロサがいる時はロサからラパヌイを感じるんだ。不思議なんだけど、ホントにそうなんだよ。

後日、船の上に「Toki」のメンバーがやってきた。彼らの伝統的なダンスをみんなに披露してくれたんだ。それは自然の色んな姿を表現しているダンスで、美しく、たくましく、ラパヌイそのものを表した誇り高いものだった。彼らはシンプルで厳しくもあるラパヌイの大自然の中で、日々、魚を取ったり農業をしたりしながら生活している。小さな島での生活はサイクルがダイレクトでもあるから、自然に対する感謝もきっとまた格別なんだと思う。
彼らが発するラパヌイのエネルギーは、その日ステージから会場全体をグッと包み込んで、私たちの中に眠る野生的な記憶を呼び起こして思い出させてくれたんだ。そう、私たちも持ち得るはずの、シンプルな大地の上で生きる力強くて真っ直ぐなエネルギーをさ。
PHOTO GALLELY

上陸を心待ちに想う時間

鳥人伝説があるオロンゴ岬

日本に来日経験があるモアイさん

ラノララクの後ろで大地が煙を吹いている

陸に向かい今も見守り続けるモアイ

果てなく長い時間の経過と共にある

島には小さな街もあって賑わっているよ

彼らはラパヌイから贈られたギフトだった
(取材・文・写真/Hinata)
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