全ては全体のバランスを保つために。だからこそ、命も交代制になっている。生命は循環の一部であって、繋がりの喜びの中にあるものだと思う。だからひとりひとりが、今を輝いて生きるということが世界にとって一番重要なことなんだね。
自然界でも食物連鎖があるけど、強いものが弱いものを食べる仕組みは一見容赦なく見えるようでいて、実はそうじゃあない。お互いに分かっているんだ、生命力の強いものが弱いものを吸い取る。それは全体の生命の維持に関わってくる。
だって生命力が弱いものばかりになったら、世界はどうなるだろう。全体を維持していく必要があるのに、エネルギー不足では成り立たないよね。だから、それぞれに強くある必要があるし、時間が経ってエネルギーが弱まれば交代することもある。
例えば何かを支える時、何かに支えられる時…生きていれば必ずその両方の時間がやってくる。だから、常に弱いだけの生き物はいない。私たちは時にそうやってお互いを導いたり捧げたりしながら、地球という大きな生命システムの中で生かし合い命を繋いでいるんだ。
そんなふうに氷河を見ながらひとり、感慨深く思っていたら。普段は船の横にくっついている小さな救命ボートが、宇宙服のようなものものしい防寒服を着た船のクルーたちを乗せて、冷たそうな海水の表面までスルスルと降りて行ったよ~
何と、今から氷河の氷を取りに行くんだそうだ。やばいでしょ、それって命がけじゃない?転覆だけはしないでねって、みんなで祈りながら彼らを見守る。よほど屈強なメンバーが集められたのか、彼らは浮いている氷河の小さな塊に向かってスイスイと進んでいく。こうやって眺めていると、大海の上では彼らの船はまるで小さな木の葉のようでしかない。
ドキドキしながら見守る私たち。クルーたちも同じ船の仲間だからどこか家族のようなものなんだよね、私たちにとってさ。無事に帰ってきてよ~と願いながら彼らを見ていると、彼らは目の前に浮いていたちょうどいい大きさの氷をネットで包み、ぐいぐいと引っ張って無事に氷を引き揚げた。
その夜、バーでは「パタゴニアの氷」が登場してオンザロックでお酒を楽しむ人々が集い、夜遅くまで賑わっていたよ。友人が以前「一度でいいから氷河の氷でお酒を飲んでみたい」って熱弁していたのを思い出した。プライスレスとはこのことを言うんだろうなぁ、氷河の海に浮かびながら氷河の氷でオンザロックを味わう贅沢感。
とにかくホント色んな経験ができるんだよね、船の旅って。