ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。
笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。
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「素朴な温かさに包まれて・気分爽快バイクツーリング」
ふたつめの寄港地ベトナム。まだ始まったばかりの旅…そこでこの後、自分が泣き出すことになるなんて思いもせず、ベトナムでの忘れられない一日が始まるのであった。
この日着いたのはダナンという街で、私はベトナム青年たちとの交流ツアーに参加した。交流イベントでお互いの文化を発表したり、一緒に街に出かけたり、とにかく丸一日ずっと一緒に彼らと行動できるツアーでさ。交流会の会場まではバスで移動、バスの中でそれぞれのパートナーと出会うんだ。隣の席に座った者同士で「今日一日よろしくお願いします」と、はにかみながら互いに自己紹介して交流がスタート。
とっても優しいんだよ、ベトナムの子たちって。よく気がつくし私たちを大切にしてくれる。友だち同士もみんな仲が良くて家族に近いような感覚でいるんだ。陽気で素直で、純朴なそのまんまの彼ら。最初はシャイな雰囲気が見え隠れしてたんだけど、話しているうちに打ち解け一気に距離は縮まって。とにかくフレンドリーな彼らに、私たちの心はあっという間に開かれてしまったんだ。
バスの中ではすでに盛り上がりを見せ、彼らはベトナムの「ホーチミン師」の歌を歌ってくれた。これは革命の曲で、こどもの頃に学校で教わる曲らしいんだけど、彼らの政治的な意識が高いことに少し驚いたよ。社会主義国共和国になったのが1976年だから、そう遠くもない頃に時代が大きく変化しているベトナム。その変化の波から受けた余波も未だ大きくあるだろう。若い彼らもそんなこんなを肌で感じているのかも知れないね。
交流会場でご飯を食べた後、自由時間になった。街に連れて行くよって誘ってくれた彼らが乗ってきたのが何と原付バイク!ふたり乗りで街観光をしようって提案だ。やばい、めっちゃ楽しそうだ~。みんなでバイクに乗って移動、まるで暴走族のツーリングのような光景が笑える。ベトナムはどうやらバイク人口が高いらしく、連なって走っていてもそんなに目立つ感じでもないようだ。
目の前にも後ろにも仲間のバイクだらけ、道は広々してるのに私たちの周りだけ密集してのんびり走っている。ふと後ろを振り向くとニヤリと笑って高々とピースサインしてくる彼ら。たまに前後にすれ違いながら色んな子たちと短く言葉を交わす。仲間に囲まれて走るってこんな楽しい感じなんだね。
ベトナム青年にしがみついて乗っているおじさんは満面の笑顔、こちらを見て片手をほどいてブンブンと大きく手を振ってくる。その姿があんまり可愛くてプッと吹き出してしまった。わかるよその気持ち、日本じゃなかなかこんな体験できないもんね。
市場に行ったりカフェに行ったり、海に行ったり。古いお寺から市場や彼ら行きつけのお店まで、とにかくダナンのあちこちに連れて行ってもらったんだ。この日の天気は快晴で、吹き抜ける風は気持ちいいし、車と違って開放感が満点でテンションは上がる一方。晴れ渡ったダナンの街をバイク観光で思いっきり堪能したよ。
ダナンは有名なリゾート地らしいけど、どこか素朴でとても暮らしやすそうな街だった。可愛い小さなお店が道路沿いにずーっと並んでてさ。大きな建物もたまにあるけど、空間を広く使ってるからギュッと息苦しいみたいなのもない。道路も幅広いし、空が大きいなあってイメージ。開放感があるから道を走っているだけでとっても楽しい。その街に住む人に、街を連れてまわってもらうのはホントにいいね。その土地の良さが奥深い部分まで見えてくるようでさ。
私は撮影しながらバイクに乗ってたから、両手にカメラとビデオで、ヘルメットを取るのがいつも一苦労。毎回、運転してくれてる女の子が手伝ってくれてた。だいぶ年下の女の子だったのに、お姉さんみたいに世話してくれて。きっと家族の中でもこうやってサポートしてるんだろうなぁって、そう感じられるさりげない優しさが常にあったんだ。街の雰囲気もゆったりな感じでリラックスできるし、それ以上に彼らの人なつっこさがほんわかと心地よかった。
街のオープンカフェに入って、濃厚な「ベトナムコーヒー」にチャレンジしてみたよ。このコーヒーのいれ方が独特なんだ。ブリキのカップ型のフィルターをグラスの上に乗せて、直接そこにコーヒーの粉を入れてお湯を注ぐ。お湯が落ちるのが遅いからコーヒーは結構な濃厚さ加減。グラスの中にはたっぷりのコンデンスミルクが入っていて、アイスで飲むなら、グラスに熱いコーヒーを入れ終わってミルクが溶けてから、そこに自分で氷を入れて飲むっていう仕組みなんだ。面白かったのが、お水の代わりにジャスミンティーが出てきたこと。嬉しいけど、コーヒーにジャスミンティーって。
カフェでゆっくりしてから、次は彼らの行きつけのおやつ屋さんへとはしご。そこへ、道売りのおばさんが自転車でやってきた。荷台には野菜がのっていて、これ美味しいよって見せてくるんだ。ベトナム帽子に笑顔がとっても素敵だったな。あまり押し付けがましい感じもなく、しばらくするとスルリとどこかへ消え去っていった。
道端の路地の片隅に、長テーブルと椅子がおいてあるだけの、飾りっ気のないおやつ屋さん。狭い空間にキュッと座っておやつをみんなで分け合って食べてたら、自分がここでは外国人だってことを完全に忘れてしまってた。相手との距離を近くして一緒に何かをするっていうのはいいね。なんか大家族の一員になったような気分だったよ。こんな風にベトナムの彼らはホントにみんな仲がよくてね、友だちなのにどこか家族のような雰囲気でさ。一緒に食べているだけでも何となく世話をしてくれたりして。優しさがさりげなくて、どこか愛情を持って見てくれているんだ。
きっとずっと、そうやって暮らしてきたんだろうなぁってのが伺える。日本では核家族化も進んでるし仕事も関係して、夜でもご飯をひとりで食べてる人が結構多いようなイメージがあるよね。共に食卓を囲むこと、肩を並べあって座ること、言葉を交わして今日一日を共有すること…そんなちょっとした時間を持つことが人生を豊かにするコツなのかもって、彼らの姿を見てそう思ったよ。
それにしても。まあホントによく食べるなあ…さっきお昼ご飯を食べて、今からまた晩ご飯が待っているのだけども。だけど美味しいから食べちゃうんだよね。フォーや生春巻き、ベトナムの甘酸っぱいような味付けの料理は暑いときでもガッツリ食べられるから無敵なんだ。
そうそう、思わず吹き出したのがさ。おやつ屋さんの隣にビール屋さんらしい倉庫があって、ビールケースが山積みにあちこち積み上げられていたんだけど…そこの入り口からバイクがゆっくり出てきたと思ったら、バイクに積み上げたビールケースの数が二度見するくらい半端なかったこと。これで道を走るんですか?普通この量だったら車で配達するよねっていう、その数なんと16ケース。ここまでいけばちょっとした曲芸でしょ。これが前を走ってたら確実に目を奪われるなぁと想像も膨らむ。ギリギリのラインを微笑みながら飄々とチャレンジするってところに、ベトナム人が持ち合わせる茶目っ気を感じたよ。
おやつ屋さんを出て交流会場に戻ったら、アオザイ屋さんがお店を出していた。アオザイってベトナムの民族衣装なんだ。この服はチャイナドレスのようなスタイルなんだけど、薄手の生地でサラッとしていて、下には長いズボンを履くスタイルで。体のラインに沿ってるから女性が美しく見えるんだよね。そこでは生地も豊富にあったからひたすら物色、あれはどうこれはどう?と店のおばさんに生地を一緒に選んでもらって自分好みのアオザイをオーダーメイドできたんだ、ラッキー。
この日は特別に、アオザイが仕上がってから船に届くシステムになっていて。採寸して作る完全オーダーメイドなのに値段も安いから、みんなこぞって作っていたよ。船の上ではファッションショーやパーティーもあるから、民族衣装もドレスも何度でも着る機会があるんだ。みんなそれぞれによく似合ってたよ、オリジナルってやっぱいいね。
日が暮れてベトナム青年たちとの交流イベントが始まった。今日一日のクライマックス、そしてこれが最後のプログラム。ステージでお互いの文化の発表をするんだけども、その時にもうすでに私たちは、楽しいんだけど何だか寂しいっていう複雑なモードに入ってきていたよ。
ベトナムの仲間たちとのお別れの時間が近づいてる。一日中ずっと、私たちを心から楽しませてくれた彼ら。お互い寂しいなんて言わないけど、普通に会話していても表情からも伝わってくるものがある。なんか周りもみんなそんな感じだったな、ちょっとしんみりというかさ。だけど最後だしもっと楽しもうよと、どこまでも明るくステージを盛り上げる彼らの気持ちに応えて、私たちは残りの時間を大事に過ごした。互いの文化を披露し、一緒に踊って、笑って、ハグをして…そして、ステージは大盛り上がりの後に終了、一日の幕を閉じた。
帰りのバスの中は、賑やかに思えてどこか静まっていた。最後を盛り上げようと彼らはまた「ホーチミン師」を歌ってくれたけど、明るく歌いながら歌声の途中でグッと喉を詰まらせる彼ら…その後ろ姿からも今彼らがどんな表情をしているかが伝わってきてさ。腕を上げてそっと顔を拭っている子もいれば、何とも言えない笑顔を無理に作ってこちらに笑いかけてくれる子もいる。どこまでも純粋な存在の彼らと一緒にいると、普段は私たちの奥に眠ってしまっている素直でこどものような心が、気づかないうちにスルスルと引き出されてしまうんだ。
さっきから連絡先を紙に書こうにも、何だか文字が滲んで見えてうまく書けない私がいた。あれ、私ってこんな感じだっけって、そんな自分にちょっと微笑んでしまう。バスが到着してしまえば私たちはお別れ、話をできる最後の時間なのに、座っていてもみんなお互いにもう寂しくて言葉も出なくて。ただただ隣に座って、存在を感じることしかできなかった。一日の交流だけで、こんなにも温かい感情が湧いてくるのが不思議。
彼らは、ベトナムを心から愛している。それは愛国心というよりかは、子供が親を愛する感覚に近い。そんな深い愛情をもって、今日一日彼らはベトナムを紹介してくれた。だから私たちはこんなにも離れがたくなってしまったのだ、ベトナムとも、彼らとも。私たちは日本を誰かに紹介するとき、彼らのような深い愛情を持って日本を伝えることが出来るだろうか。ふと、そんなことが心をかすめる。
お別れの時間が近づき、船の上と下で向き合う私たち。出航の音楽が流れて船がゆっくりと動き出した。カラーテープを陸に向かって投げた時、その端っこを追いかけて掴み、上を大きく見上げた時のあの子たちの顔は忘れられない。泣きそうなのをグッとこらえてひしゃげた笑顔…だけどもう私はこらえきれなくて。まさか自分が泣くなんて思ってもなかった。こんなにも心を自由に解放してくれる時間があるんだね、旅での出会いってホントに宝物だ。
ありがとうベトナム。ずっと優しい笑顔に包まれていた気がするよ。とても無邪気で、くったくのないこどものような笑顔に。
「PHOTO GALLELY」
まずはお寺にご挨拶から
コンデンスミルク入りの濃厚なベトナムコーヒー
道を曲がる時って、どうするんだろうか
広々した道路に大きな青空
風を切って走るバイクは乗り心地最高!
戦争の面影を残す記念館
おやつ屋さんはいつでも大繁盛
さあ、みんなで何を注文しよっか
ドリアンの香りに包まれて
ベトナムはジューシーなフルーツもたっぷり
街の小さな修理屋さん
実はダナンは有名なリゾート地…
…と思いきや、桶がどんぶらこ〜
今日はサンタさんだらけだね
あっ、サンタさんプレゼントちょうだい〜
シークレットでハッピーバースデー!!
誰もが笑顔の、素敵な一日でした
(取材・文・写真/Hinata)