ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。
笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。
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EPILOGUE〜終わりからの始まり〜
旅先に到着する時もあれば、そこから出て行く瞬間もある。
一度足を踏み入れた地では、帰る頃になるとその土地の空気に身体が馴染んで「そこから旅立つ」ような感覚になるんだ。だから毎回、港から出航する時間はほんと格別。船のデッキに出て「旅立つ」時を待つ。
その土地に漂う空気の質感や髪に絡む風、夜に向かって紺色が深みを増していく山並み、そのなだらかな斜面に沿って並ぶ街の灯が愛おしい。
今日一日を過ごした記憶が、出会った彼らの笑顔と一緒に思い出される。一カ国ごとに船から降りては街に向かい、異言語が飛び交うカラフルな生活の中に紛れ込んでいく日々。短い滞在でも船に戻る頃には、自分の表情が変化している気がするから不思議なんだ。
長い長い旅を経て、たくさんの人と出会い、たくさんの場所に行って、美味しいものを食べ、飲み、笑い、踊り。経験したことは全て私の中にすっぽりとはまって、血となり肉となり、私という人間を再構築した。そんな旅も今、終わりを告げようとしている。
過ぎ去っていった時間は愛おしく、思い返すとギュッと胸が苦しくなるような感覚に襲われる。だけどそれも時間が経つと、心がホッとするような柔らかい記憶に変化していく。
自分というフィルターを通して「経験」を濾過し、「時間」という棒でグルグルかき混ぜたら、まろやかな甘みが出た美味しいスープになるだろう。そんな料理のような物語を生きたい。
遠ざかる港を見送りながら、最後の地から旅立った。そして次に到着する自分の街を思い浮かべる。
帰ったらやることはいっぱいだ。まずは、何から始めよう。
(取材・文・写真/Hinata)