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インタビュー
2016/06/02
INTERVIEW Vol.6
瀬戸 麻由
SETO Mayu

周を重ねるごとに深みを増す
ピースボートの船旅の生かし方(1/2)

PROFILE
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広島県呉市出身。ピースボートに乗って地球を3周している世界旅行のベテラン。また、ピースボート以外でもアイルランド留学や、『会いたい人に会いにいく』というコンセプトのヨーロッパ旅行など、積極的に世界と交流し続けている。現在は株式会社CRAZYの「CRAZY WEDDING」でウエディングプロディース事業に携わる。
世界を1周するたびに、新たなピースボートの楽しみ方を発見していった瀬戸さん。一般参加、そして通訳スタッフ、すべての経験から導き出された「世界とは、ローカルの集合体だった」ということに気が付いたときに見えた、彼女の人生の航路図とは?

上京の勢いでピースボート乗船を決意

「あ、世界一周に行けるかも!」
高校卒業間近、地元広島のカラオケでピースボートのポスターを見て、彼女はそう思ったそうだ。
瀬戸 「海外に行きたい欲求は昔からあって、密かに英語の猛勉強をしていました。高校生のときも海外にホームステイとか、街のプログラムみたいなものがあったんですけど、なかなか行けなくて…。大学進学で上京するのをきっかけに『このタイミングで行っちゃおう!』と思って資料請求をしました」
さらに、どうせ行くなら世界のことを学びたいと考えた瀬戸さんは、ピースボートのプログラム「地球大学」への参加を希望する。
瀬戸 「地球大学のプログラムがおこなわれる第71回クルーズに参加したかったのですが、大学の授業との兼ね合いで無理だったんです。でも、どうしても行く前にいろいろと勉強しておきたかったので、第71回クルーズの乗船者が集まる勉強会や合宿に参加させてもらいました。」
地球大学
地球一周の船旅を活用した国際教育・平和教育プログラム。寄港地での現場体験と、船上でのゼミを組み合わせたカリキュラムで、地球規模の社会問題を学ぶ。

熱中できるプロジェクトとの出会い

勉強会には参加したものの、第71回クルーズに参加できない瀬戸さんは「地球大学に参加できないなら、わたしはどうやって船旅で学べば良いのだろう」と悩んだそう。しかし、それを解消してくれたのは、参加者などが集う「ピースボートセンター」での出会いだった。
瀬戸 「地球一周をしようと思ったきっかけは広島で見たポスターですけど、最初にピースボートに触れたのは中学校のときの課題図書『走れ!やすほ にっぽん縦断地雷教室』でした。そのときは『ピースボートってこういう社会問題とかの活動をしつつ世界一周できるところなんだ』くらいの認識でしたけど、その著者の上 泰歩(ウエ・ヤスホ)さんに、ピースボートセンターで出会ったんです。『うわっ、ホンモノだ!』と思って感動したんですけど、その泰歩さんが私の地元でもある広島に関係するプログラム「おりづるプロジェクト」の取り組みで、第72回クルーズに乗ると聞いたんです!」

『おりづるプロジェクト』というのは、被爆した方々がピースボートに乗って、世界各地で自らの経験を証言するという取り組みです。でも、私は広島出身なのに、それまで核兵器について深く考えたことはありませんでした。泰歩さんから話を聞いて『そこで勉強しよう!』と思ったんです。出航前から、『このプロジェクトがメインの地球一周になるかも…』と感じました」

おりづるプロジェクト
ピースボートがおこなっているプロジェクトのひとつ。広島・長崎の被爆者とともに世界の国々を訪れ原爆被害の証言をおこなうことにより、核廃絶のメッセージを各地に届ける活動です。

一般参加の世界1周目で直面した自身の無力感

2011年1月23日。瀬戸さんを乗せたオセアニック号が出航した。
瀬戸 「最初の船旅はいろんなことに貪欲でした。大体はおりづるプロジェクトのおじいちゃんやおばあちゃんたちにベッタリで、何でもないような話をして。ほかにも、とにかくいろいろな問題に触れたかったので、頻繁に『水パ』をやっていましたね」
「水先案内人パートナー」
ピースボートには毎回、水先案内人(通称:水案)と呼ばれるゲストが乗船する。ジャーナリストやミュージシャン、大学教授などさまざまな分野の専門家であり、乗船者のために講演やワークショップを開催してくれる。その水案のサポートとして活動する乗船者のことを水先案内人パートナー(通称:水パ)と呼ぶが、瀬戸さんはさまざまな水案の水パとして活動。ピースボート特有のシステムで、うまく利用すれば普段は話すこともできない著名人などと触れ合えるチャンスでもある。
瀬戸 私の水パの担当は、オーストラリアのウラン鉱山による放射線被害を訴えるアボリジニの方々、諏訪中央病院のミノルさん(※1)、タヒチのガビさん(※2)といった方々でした」
※1 鎌田實(カマタ ミノル)
諏訪中央病院名誉院長。地域に根づいた医療を実践するかたわら、世界中の被災地や紛争地の支援や医療行為などの活動をおこなう。テレビドラマ化もされた「がんばらない」をはじめ、多数の著書を残す作家でもある。
※2 ガブリエル・テティアラヒ
反核・先住民族人権活動家。タヒチの先住民族の文化継承と権利回復を目指すNGO『ヒティ・タウ』代表を務める。大地を踏みしめて歩きたいという思いから常に裸足で過ごしており、乗船者から『ガビさん』の愛称で親しまれる。
「水パ」としての活動や、寄港地での交流で瀬戸さんは多くの問題と対面する。
瀬戸 「貧困、紛争、差別。世界中に問題があり過ぎて…。『もうやだ!』ってなっちゃうくらい問題だらけ! でも、私はツアーで各地を回っているだけなので何もできず、ただただ悲しい気持ちになるだけっていう…」
第72回クルーズ航海中、瀬戸さんは一時的に船から離脱するオーバーランドツアーで、ポーランドのアウシュヴィッツに足を運んだ。
瀬戸 「ここで初めて『おりづるプロジェクト』の現地での証言会に参加しました。アウシュヴィッツでの証言会は強制収容所を生き延びた人と、ヒロシマ・ナガサキの被爆者が証言をし合うというもので、これに参加できることになったんです」
被爆者の証言も、収容所生還者の証言も、悲惨で、悲しくて、辛い気持ちになると彼女は言う。だが、強く印象に残ったのは被爆者の意外な言葉だった。
瀬戸 「アウシュヴィッツに連れて来られた人が、即ガス室行きか、労働や実験に適しているとして収容されるかを決定するナチスの医師がいて、『ここでその選別をしていた』という話を、その場所で被爆者の方々と聞いていたときです。その選別する側の人間になるのも怖いよねっていう話になって…。そこで一人の被爆者の方が、『俺は原爆の被害者だけど、当時は兵器工場で働いてたし、加害者でもあるんだよなぁ』と。原爆という歴史的に類を見ない被害に遭ったのに、その被害を訴えるだけじゃなくて、自分のことも加害者って言えるのって凄いなって思ったんです」
また、アウシュヴィッツ訪問の際の宿泊施設でも考えさせられる出来事があった。
瀬戸 「アウシュヴィッツのあるポーランドの若者たちとの交流で、『戦争をしていた世代の人たちはこういう過酷な体験をしているけど、じゃあ今のわたしたちはどうあるべき?』みたいな議論を交わしたのですが、心の中にあった自分の考えをぶつけ合うのは、純粋に楽しかったです。何も重たい話が好きというわけではなくて、熱い思いのある何かについて議論することで、もう二度と会えないかもしれない人とも深く交流できるというのが魅力でした」
まったく違うバックグラウンドを持った知らない人間と、普段はしないようなテーマで深く交流することに喜びを覚えたという瀬戸さん。このアウシュヴィッツでの交流体験を期に、人とのコミュニケーションというものが行動理念の大きな柱になり、新たな行動を始める。
瀬戸 「次はCC(通訳ボランティア)として乗りたい!という希望ができました。第72回はお客さんだったけど、CCとして乗ればもっと水案の人たちと深く交流できるし、役にも立てる。もっと貢献してるって思えるんじゃないかなって」
CC(通訳ボランティア)
「Communication Coordinator(コミュニケーション・コーディネーター)」の略で、ピースボートに乗船して通訳を担当するボランティアスタッフ。日本語と、英語かスペイン語に秀でた者が採用される。主に水先案内人の通訳や、現地ツアーでのガイドとして活動する。一般乗船者はほとんどが日本人だが、CCは国際色豊かな人材が集う。
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