
更新日:
ビースボートの船旅であちこち迷走したHinataの旅物語、「Peace on the Boat trip」。 笑いありハプニングあり、ちょっと不思議でほんわか緩まるHinataワールドへようこそ。 最初から読む ひとつ前の記事を読む
アンティグアに行った次の日、停泊しているプエルトケツァルの港の隣町、サン・ホセに行くことになった。
そこはそんなに治安が良くないって聞いたからホントは行くのを諦めていたんだけど、港からトゥクトゥクでマーケットまで行ってもらって、そこだけ見て帰れば問題ないよってマーケット帰りの人が教えてくれたんだ。港まで送迎で帰って来たトゥクトゥクを見つけて早速サン・ホセに向かってみる。

トゥクトゥクは窓ガラスがないから、走りながら見える景色が臨場感あって街全体を感じられるのが最高。車というよりかはバイクに近いよね、風を全身に受けながら走ってくんだ。
スピードもそんなに出ないから結構安全だし、周りを走ってるトゥクトゥクやバイクとの距離も近いから、通り過ぎていく人々や景色をムービーに撮りながら乗っても面白い。道行く人も手を振ってくれたり笑顔を返してくれたりして、車窓観光だけでも十分に楽しめる。

サン・ホセの街はアンティグアとは全く違ってた。どっちかっていうと雰囲気的にはインドのコーチンと似てたかな。道幅ぎっしりに走っている車、トゥクトゥクやバイクの数々。混沌としていて道路に人が溢れているっていう印象。
バイクもひとりだけで乗っている姿をあまり見かけない。2人から3人でぎゅっと詰めて乗っていて、みんな仲よさそうに見える。サン・ホセの治安はあまりよくないって聞いていたけど、街中には交通整理をするべくお巡りさんが道の角々にいたから、大通り沿いに歩いていけば大丈夫だって分かった。

だけど一箇所だけ、人が集団で座って雑談しているような場所があってさ。そこをちょっと緊張しながらそそくさと通り過ぎようとした時に、集団の方からまたあの言葉が聞こえたんだ。
これはちょっと、怖いかもしれない…
「フォト、フォト!」小太りの男性がこっちを向いて、手招きしている。男性の周りの人たちもジッと一斉にこっちを見ていた。どうしよう、何だか怖いんですけど…だけどそうかといって完全に無視したまま通り過ぎるのもよくないから、少しだけ近寄ってからサッと行こうとしたんだ、ぎこちなく微笑みながらさ。
そしたら…硬い表情だった彼らもふわっと笑顔になって一気に歓迎ムード。肩を組んでニコニコと嬉しそうな彼らの姿を写真に切り取る。

そっか、ここは観光地じゃないもんね。だから人々も余所からの人間にどこか緊張してる部分があるんだけど、こっちが笑顔になると安心したように笑顔で返してくれる。
道行く人や車に乗ってる人、とにかくたくさんの人がみんなしてこっちをじっと見てるんだけど、こちらが笑顔を向けるとほぼ全員が素敵な笑顔を返してくれたんだ。

観光地化されていない場所って、いいなぁって思った。それともここだけなのかも知れないけどね、たまたま。私は飾りのない場所の普段の生活を覗き見るのも好きだから、そんなサンホセの通りの何でもない日常感にとってもワクワクしたんだ。
純朴な人々の笑顔を見ていることほど、癒されるものはない。それが世界中の素敵な景色と一緒に頭の中に浮かぶ時に、あぁ旅に出て良かったなあって実感するんだよね。

そんなことを思う反面、世界の中でも観光地になるような所は常にせわしなく、そこは先住民族の生活空間だったりもして現実はけっこう複雑だ。昨日訪ねたアンティグアを見ていて思ったんだけど、日常にドッサリと観光客が押し寄せてくれば疲れるのも当然だし、写真を撮られるのもいい加減イヤ気がさしてくるだろう。
いつも彼らの笑顔が見れるなんて、こちらの勝手な都合で持ったイメージでもあるよね。生活の糧を稼ぐのに民芸品売りは大切な仕事だけど、せわしなさを常に受け入れるということは彼らにとって、同時に「自分たちらしい時間」を捨てていくことでもあるんだ。私たちにとっては出会いの時でもあるけど、そこでの出会いは時として、お金を通してやり取りするだけのものともなりえる。
じゃあそこから、どうするの?

一期一会。きっかけはだけど、どうであれさ。もう一歩、もう一声関わり合いたいと思ったんだ。観光客が観光地を訪ねている現状はもう変わることはないだろうし、それならそれで、どう訪ねてどう関わるかだよね。
観光スタイルは様々だ。例えば、ワークショップ的に彼らの生活の中に入り込んで文化を学んだり。そこで彼らの素晴らしさの本質を学ぶことができれば彼ら自身も、自分たちの暮らしに揺るぎない誇りを持つことができるし、私たちにとっても本来の日常そのままの彼らと出会えるから、普通に観光をする以上に濃厚な思い出が残る。

先住民族の彼らが「自分たちらしい時間」を保てるかどうか、そこに関わってくるのが「経済」というものへの観点だと思う。お金というものをどう捉えるかによって、選ぶ生き方も変わってくるよね。それは私たち全員に当てはまることでもあるんだけどさ。
そして、そんな経済と深く関わるのがこどもの教育。「世界中のこどもたちに教育を」というのは、国連の方針ってだけでなく常に言われていること。だけどその一方で「教育」によって、アイデンティティーそのものを失ってしまっている…そんな現実もあるということが否めない事実としてあるんだ。

というのも。「スクーリング・ザ・ワールド」という映画を船内で見たんだよね。そのドキュメンタリー映画では、こどもの教育の奥にあるもうひとつの側面が描かれていた。
教育はホントに必要か?必要でないか?昔からの生活スタイルまでもを根本的に変える可能性がある「教育」。先住民族が守ってきた素朴な生活にとっては、果たしてどうなんだろう。

生きていくために必要なものは、衣食住だ。昨日のアンティグアもそうだけど、それらを直接的に自分たちの手によって生み出すことのできる彼らはとても自立していて、生き残る術をしっかりと身につけている。
本来、私たちが学ぶべき単純な姿がここにあるんだけど、現代は生きるための行為の真ん中にお金というものを介在するっていう、そういう複雑なシステムになっているのが実状だ。
一体、どんな方法があるんだろう…

お金を否定する訳ではないし、それが特別に悪いとも言えない。有効的に使うことももちろんできるしね。だけどそのお金を得るためにもし、本来持ち合わせた生き方を学べる環境を手放すという方法を選ぶとしたら、それは本末転倒なことなのかもしれない。
きっと要は、何に元づいて生きていくかってことなんだろうね。つまり個人の「アイデンティティー」なんじゃないかって思う。
「私」が「私」であるという証のようなもの…恵まれている人は、深く根ざすアイデンティティーを持っている。だけど一方で私も含めてだけど、生きるって何だろうって疑問に思ってる人もいっぱいいる。

映画で描かれていたワンシーン。学校に行くために家族から遠く切り離されてしまい、山暮らしの生き方を学ばないまま、学校という箱の中で知識だけを知った。もちろん社会に出てそれらを役立てていく者もいれば、就職できずに習った知識も役には立たず、山に戻っても農作業のやり方も分からないまま何もできない者も…そんな現実がある。
それと対照的だったのが、「火の山のマリア」というグアテマラ映画。先住民族であるマヤ族の抱える問題が浮き彫りにされているものだった。今では迷信的とさえされる祈祷師の術や信仰を保ったままに、自然を畏怖し生かされ、大地と一体になって必要なだけの恵みを受ける。
彼らは大地や動物たちとの生命のやり取りを心得ている。火山の元に生を与えたれた人々が慎ましく農耕を続けていくかたわら、害獣や作物の病気などを静かに受け入れ、その場所が変化していくままの形に沿って生きながらえていく姿があった。

そんな僻地にも現代的な流れがやってきては汚染していく。家族の深く力強い愛情で支え合いながら困難を乗り越えていく彼ら。スペイン語が話せないことによって通じ合えない現状や騙しに直面し、それに気づくこともなく運命の道をひたすら進んでいく…こういった内容は、世界各国の先住民族の暮らしなどにも当てはまるようなことだ。
そこからたどり着いた答えは…?
もちろん何がベストかなんて、私には分からない。そして誰にでも当てはまるベストもないと思う。場所や環境、時代によっても変化していくものだしね。だからこそいつも、それぞれに考えてひとつづつ選んでいく必要があると思うんだ。

教育も、生きていく上での道具の一つ。使い方によっては人を生かしもし、殺しもする。両手放しに「教育が必要だ」と言ってしまうことに違和感を感じたんだけど、もちろん、学び方をしっかり選びさえすれば素晴らしいものにも当然なりうる。
だけど何を基準にどうやって選ぶの?こどもたちはその選択方法のヒントを、一番近くにいる私たちの背中を見て知ることとなるんだろうね。
「自分にこどもができたらどうしたい?あなたのこどもは大きくなったその時、一体どんな生き方を望むんだろう。あなたが未来を作って、こどもたちがそのまた次の未来を作る。未来は勝手にやって来るものではなく、あなたの生き方そのものが形になって続いているんだよ…」
私の心の物語に刻まれた、グアテマラの純朴な笑顔はそう言っているかのようだった。
PHOTO GALLELY

港のお土産屋さんの織物風景

骸骨もカラフルポップに

サンホセの街のオモチャ屋さん

おじさんの自家用車は収納たっぷり

あっちこっちでバイクの二人乗り

今走り去ったバイクに何人乗ってた?

どうやらこちらは美容室のよう

見かけると嬉しい電話ボックス

サンホセの街中は蛍光っぽいカラー

みんな素敵な笑顔を返してくれる
(取材・文・写真/Hinata)
コラム
ピースボートクルーズの費用は高い?安い?基本代金・諸費用・支払い・割引を確認できるチェックリスト
コラム
ピースボートクルーズに海外旅行保険が必要な理由|船内での感染症・緊急搬送・キャンセルなど想定ケースで解説
コラム
ピースボートの口コミはなぜ両極端?乗船者の声と時期・航路・客室別の傾向から「自分に合うか」を見極める
他の記事も読む
keyboard_arrow_right
「ピースボート」ってなに?
keyboard_arrow_right
どんな船で旅をするの?
keyboard_arrow_right
寄港地でのプログラム
keyboard_arrow_right
2029年12月出航
第126回クルーズ
ピースボート地球一周の船旅 2027年4月 Voyage126
春に出航し、アジアから地中海、ヨーロッパ、北中米へとめぐる全108日間の世界一周クルーズ。ヨルダンやサントリーニ島、ロンドン、バンクーバーなど多彩な港を訪れ、ソグネフィヨルドやアラスカフィヨルドでは大自然の絶景を満喫します。旅行のベストシーズンといわれる初夏には、地中海から北欧まで数々の世界遺産と出会う航路へ。季節が織りなす風景とともに、まだ見ぬ世界を体感する船の旅です。
おすすめクルーズはこちら
keyboard_arrow_right目次