そういえば、グアテマラでは他の場所でも同じような光景があった。教会などで神様を飾り立てている姿は世界各地で見られるけども、ここのように何でもない建物の奥や、道のちょっとした空間に神様や色んなものが祀ってある所に、ここの人々の昔から綿々と保たれてきた純朴な信仰心を感じるんだ。
また土産物の群れの中へ戻って物色を開始、そうやって再び集中していた私の横を突然スッと大きな何かが横切った。えっと思って振り返ると、背の小さいマヤのおばあさんが頭の上にすごい大きな荷物を載せて、こちらをみて「フォト、フォト」って言って微笑んでたんだ。
民族衣装を着ている先住民の写真を撮ろうとする時って、あまりいい顔をしなかったり「1ダラー」と言われたりする事が多いから、積極的には撮らないようにしていたんだけど…このおばあさんはそんなことも言わずにニコニコして立っていた。
不思議だなぁって思いながらも写真を撮ったら、おばあさんはそのまま何も言わずにスッと歩いて奥の暗い空間に姿を消したんだ。あっという間の出来事におばあさんが見えなくなった辺りを凝視する。
あぁ、この感じってあの気配に似てるなぁって思った。アンティグアの街に来てからふとした時に感じ続けている、薄暗い空間に古い生き物がいるようなあの気配にさ。
人間というよりかは古い精霊というか、そっちに近いような存在。大きな荷物を頭に乗せてちょこんと立っていたマヤのおばあさんは、ホントに人間のおばあさんだったんだろうかって、一瞬立ち止まってボーッとする。