その中でも特に印象的だった音楽のシーン。サルサやソンといった音楽が所々でかかるんだけど、音が生きているというかさ。情緒があったり、底抜けに明るかったり、音楽によってその場にあるシーンが一気に転換していく感じがあって。キューバ音楽が映画全体を包み込んでいたんだ。
サルサのベースとなっている「SON(ソン)」はキューバの伝統音楽で、そのソンの持つ素晴らしい空気感は何とも表現しがたい。情感溢れた歌にピタッと絡まる楽器たち、どこか余裕のような余白が感じられながらもそこに全く無駄がない。
シンプルであって完全と言えばいいのか…何よりもその音の質感が、さっきから聞こえてくる演奏とピタリとはまるから鳥肌。そうそう、こんな音の響き方だったんだよ。そして物語の最後に、主人公がキューバにたどり着くんだけどさ。何度も繰り返して見たあの感動の場面に、キューバに今いるんだよね私!って考えると心底興奮してくる。
そんな風に感慨にふけりながら街を歩いていると、どこからか風に乗っていい匂いが…そう言えば、そろそろお腹も減ってきたぞ。キューバサンドを食べながら生演奏を聞こうと思ってお店を探していると、またもやいい音楽が遠くの広場の方から聞こえてきた。多分オールドハバナの中で一番大きな広場なんだろうな、そこにあるレストランのオープンデッキでバンドが演奏していたんだ。