相変わらず色んなものが行き交っている。街に立ち並ぶ建物はどれも古くて、よくみるとボロボロ。だけど味があるというか、作ろうとしても作れないアート感があって、壁の色合いやペンキの剥げ具合なんて特に素晴らしいんだよね。
クラッシックカーもそう。街中を歩いていると手前の角から可愛いクラッシックカーが出てくる。ガタガタの道を、ゴロゴロ言いながら走っている感じがなんともいいんだ。路上に乗り捨てられているように停まっている車も、そこにあるだけで街と車が一枚の絵のようになってる。街中はあちこち工事中で、足場が木で組み立てられているのまでアート的。
オールドタウンのレストランから聴こえてくる生演奏の音。高い天井の空間に響く音楽は、独特の質感をもって耳に届く。空間にどこまでも広がる音とほこりっぽい空気が混じって、まるでレコードのような柔らかい心地よさを感じるからとっても不思議。
そんな音が、街を歩いていると遠くの方からふいにやってくるんだ。この感覚もキューバ独特かもしれないなぁなんて幸福感を噛み締めながら、だんだんと音に近づいて窓の外からお店の中を覗き見る。
あちこちのレストランで生演奏が繰り広げられていて、ご飯を食べながら楽しむことができるのが本場のいい所。そういえばアルゼンチンもそうだったな。有名な音楽や踊りがある場所は、レストランと生演奏はいつもワンセットだ。
「SALSA!」という映画を思い出す。白人のピアニストの青年がサルサ音楽に魅せられて、サルサの楽団に入ろうとするんだけどなかなか上手くいかなくてさ。とにかく形から入ってみようってことで、日焼けサロンで肌を黒く焼いて下手なサルサダンスを踊ってみたりと、徐々にキューバ人になりすましていく姿がかなりコミカルなんだ。
基本的には明るくて元気の出るサクセスストーリーではあったんだけど、そこには差別のようなものや社会情勢もさりげなく描かれていて、バランス感覚にとても優れた映画だったんだよね。