道沿いにあるお店の群れとは明らかに大きさが違うその建物は、どこかミュージアムのような開かれた風貌をしている。建物に浮かび上がる文字は「THE NEW YORK PUBLIC LIBRARY」。
へぇ、ニューヨークの街中にこんなに大きな図書館があるんだ。都会のオアシスってこれのことかも。薄暗い空の色と電子的原色というニューヨークのパキッとした色合いは、眼に映らせているだけでもどこか疲れを持ち込む。
そんなこの街で、その建物の真白さと木々の黄色い葉っぱの揺らぎに足を引き寄せられるのは、どうやら私たちだけではないようだ。その近辺では誰もが心なしかリラックスしているようで、私は街に出てから一度も脱がなかった上着を、ようやくその入り口でするりと外せた。
外の喧騒と打って変わった館内の静けさに当てられながらも、教会のような荘厳な空間にある階段を昇っていく。この図書館は観光としても人気の場所らしく、壁にかかる絵画や彫刻を眺めながら歩く人があちこちでふと歩みを止めている。
建物自体の美しさとゴージャスな内装に、ここが図書館であると途中まで気付かない人がいてもおかしくはないだろう。有名なアメリカのドラマ撮影で、結婚式をこの図書館で挙げるというシーンがあった為に、実際にここを貸切って結婚式を挙げるカップルもいるという話だ。
どんな様子なのか気になってネットで見てみたら、この空間を最大限に生かした美しいウェディングフォトがあった。なるほど、ここで結婚式を挙げる意味がわかったよ。荘厳で格式高い感じ、だけど本棚の持つどことない日常感があることによって、その張りを丸みのあるものに変えているんだ。