帰りのタクシーでぼんやりと窓の外を眺めていたら、私たちの船が停泊している港近くに、白い光の柱が立っていた。「もしかして、ピースタワー!?」思わず窓ににじり寄り、雨交じりの景色に目をこらす。
ジョンレノンのパートナー、オノヨーコの意志の元に、アイスランドの小島に設置された「ピースタワー」。それは実際に形を保った「塔」ではなくて、前衛アーティストでもあるオノヨーコが1965年に書いた、「ライト・ハウス」という作品を表現した「光でできた塔」なんだ。
つまり特殊な光のビームのようなものが空に向かって立つんだけど、このイメージは生前のジョンレノンも深く関心を持っていて、彼の没後にオノヨーコが形にしたというものでさ。
平和な未来に対してのアプローチであるこの光の塔。塔には「世界最北に位置する首都(レイキャヴィク)から「平和の光」を発信し、世界を包み込む」という意味が込められているんだって。毎年ジョンレノンの誕生日から命日までの期間中、ずっとその光がレイキャビクで灯されることになっているんだ。
つい2日ほど前、ジョンレノンの誕生日の10月9日に、オノヨーコが点灯式のためにこの街に来ていたんだよってタクシーの運転手さんが教えてくれた。そんな平和の塔がピースボートのすぐ近くで強い光を放っているなんて、何だかとても象徴的だよね。
生きているものも、そうでないものも、トロールでも人間でも、実用的でも芸術的でも、共通してそこに存在するのは「意志」なのかも知れないね。その中から何が必要なのかをしっかりと選んで繋いでいくことができれば「希望」という流れになり、それが「未来」になり得るのかも。私たちの意思は、これから何を選んで行くんだろう。
嵐の前の雨風に押し出されるかのように、その夜アイスランドの「光る祈り」のたもとから、私たちの船はまた新たな世界へと出発した。