初めて食べたウサギ肉。ウサギはさすがにピョンピョン飛び跳ねてるだけあって、弾力感のある引き締まったお肉だったよ。場所によってよく食べられているお肉の種類が違ってくるね。ここは狭い島だし、余計に限られてくるんだろうな。
そういえば昔行った南太平洋の島で、コウモリのスープとウミガメの料理を食べたっけ。友人たちが興味本位で注文したんだけどさ、ここではこんな動物も食べるんだって驚いたような記憶がある。世界ではホントにありとあらゆるものを食べるよね。島の大きさや気候、環境などがそこの食べ物に全て反映されているんだなぁって思いながら、ウサギ肉を食べつつマルタ島という島を実感する。
要塞の中の旧市街はかなり広かった。大通りを道いっぱいに行き交う人々。昔ここでどんな風にみんな暮らしていたんだろうか。要塞に囲まれ、暮らす日々。生と死の垣根のような存在を目の前にして、それでも人々は日々生活を送っていたんだろうね。どんな格好をして、どんなものを食べて、どんな音楽を聴いて踊ったり歌ったり、祈ったり。毎日をどう感じながら生きていたんだろう。
争いから身を守るような時代にあっても、ここの中では生きる喜びと共にあれたのだろうか。そんなことを考えながら、現代に残るその要塞の中を歩き続ける。
今、私の目の前に歩いている人々の表情に厳しさは全く見て取れない。リラックスしてこの空間を存分に楽しんでいる人たちばかりだ。こんな時代がやがてここにも訪れるんだよ、過去に住む彼らにそう心の中で語りかけながら、要塞の出口へと向かっていく。
とめどない思いを馳せながら私は、「今」という時代を囲んでいる要塞の門をゆっくりと後にした。