ボートは乗り場からすぐ外海へ出て、穏やかな波に乗り移動し始めた。崖に沿ってボートが前進していく先々に洞窟があって、ポッカリと大きな口を開けた姿で私たちを待ち受けているんだ。さっきとは打って変わって海面すれすれからの視界と、ちょっと不安定な揺れ感にまたもやテンションが高まってきたよ。
繰り返し来る小さな波をぐんぐんと越えて進む船は、洞窟の前に来るとスピードを落とし少し方向転換しながらその黒い穴に吸い込まれるように入っていった。ちょっとしたアトラクションのような雰囲気で船が洞窟に入っていくアドベンチャー感が、乗客たちの目をキラキラと輝かせている。
青の洞門は、午前中のうちに来た方がいいと言われて真っ先に来た観光地だ。何故かというと、光の差す角度で水の青の美しさが格段に違ってくると言われているからなんだ。この日はすでにお昼前になってしまっていたけど、それでも透明感のあるアクアマリンの水面が私たちの目の前に、その美しい姿を現してくれていた。
真っ暗な洞窟の入り口を奥に進むと、心地よい闇の世界が静かに佇んでいた。色彩と共に音までもが次第に無くなり、奥へと進む程に感覚が研ぎ澄まされていくようだ。闇の先に、ぽっかりと開いた天井から光が差し込んでいる空間があった。その水面は漆黒の中に際立って美しいブルーを湛えていて、まるで幻想を見ているまでに心を捉えられてしまう。洞窟はどれも奥行きが浅く、出入りする度に闇と光の重厚なカーテンを動かしているかのようだった。
自然界のアートワークはいつでもダイナミックで、光や色だけでなく水の動きや細かい波しぶきまでがまとめて全身にアプローチしてくるから驚いてしまう。おかげで五感が開き、船を降りる頃には目の前の世界が少し眩しく見えたよ。少しフワフワとした足取りで崖の上の出口へと向かう。
崖から見渡す海は深みのある青で、さっき見た色んなライトブルーとは違っていた。どっしりとしたその印象の青の上には小さなボートがゆらゆらと行き交っている。小さな島から海を見るといつも、海の大きさをリアルに感じてしまうのは何故なんだろうって思うよ。