細く曲がりくねった道を先へ先へと進んでいくと、終着点のイア展望台へとたどり着いた。夕日の時間が絶景と言われるこの場所だけど、昼間だといくぶんか観光客も多すぎず過ごしやすい。展望台だけあって、今までのどの場所よりもこの街を広範囲に見渡すことができる。もちろん海も、360度のパノラマに広がっているんだ。こんな絶景をバックにひとりのミュージシャンが演奏していた。広がりきった空間に重なる音はトリップ感満載だ。
夕日が傾く頃にはイア地区を離れ、オールド・ポート港近くの街にまで帰ってきていた。高台にあるその街から見る夕日もまた素晴らしく、街の下までずっと続いていく石の階段を下りながら何度も目を奪われては立ち止まってしまう。ホントにこの島は、どのシーンを切り取っても絵画的だ。
路地を歩いていると、前からロバが群れをなしてやって来たりする。そんな風景もこのこじんまりした島にピッタリなんだ。ここではロバに乗ることもできるんだよ。馬車に乗れる観光地は数多くあるけど、ロバに乗れる所って余りなかったかも。
生き物に乗って移動する感覚は、車やバイクとは全然違うんだ。ロバが歩くたびに上下する景色と生き物ならではのリズム感、そこに彼らの肉体の柔らかみやじんわりと暖かな体温、たまに落し物の匂いなんかも混じってたりして。そうそう、私もチャレンジしたんだけどひとつだけお伝えしておきたいことがある。オールド・ポート港近くでロバに乗るなら、下りではなくて登りがいい。
街の上から港まで下る長い階段をロバで降りて行ったら、思っていたよりも結構怖かったんだ…ロバから体が落ちそうになってさ。ロバの大きさや自分の足の長さなんかがしっくり来てれば、そこまで問題にもならないかもしれないんだけど。私の足は上手に固定できず体が揺れていてたから、鞍が緩んできて。おじさんに引かれて勢いよく小走りに階段を降りていくロバの背中の上で、左右にグラグラと揺れながらバランスとるのに必死だったんだ。
目の前は絶景、吸い込まれるような深いブルーに向かってダイビングしていくかのような、急な傾斜が続く階段の道。だけど。こちらはゆったりと階段を降りる間の景色を楽しむ余裕もなく…乗る前は右手にカメラを持って、動画を写しながら行くぞと準備してたんだけど、いざ動き出したら捕まるだけで必死。なかなかスリリングな思い出になったよ。まあ、それも人によるとは思うんだけどね。