これがもし満月の夜ならば、リアル「月の砂漠」だな。確かそんな歌があったよね。旅の人がラクダに乗って果てしない道を一歩一歩と進んでいく。満月の煌々とした明かりが照らす砂の大地が遥か彼方のまだ見ぬ地へと誘う。昔の人の作った歌はなんともシンプルで美しいね。何もないということに、想像が広がる。そこにどんな風景を見出すかは人それぞれのイマジネーションだ。
果てしなく広がる砂漠と移り変わる街の様子を眺めながら、船の上ではそれぞれが様々に砂漠を体全体で感じ、過ごしている。パノラマバーで感慨にひたりビールで乾杯しているおじさんたちや、ジャグジーに浸かりながら頭の上を通り過ぎていく大橋を見上げている人、砂漠を横目に「スエズ運河イエーイ!」なんて言い合って、デッキでBBQを楽しんでる若者たちまでとにかくなんでもありだ。
そういえば、スエズ運河に入る前の話なんだけどさ、夜、突然の急患が出たことがあって病院に搬送する必要があり、急遽サウジアラビア近辺に行くことがあったんだよね。「ジェッダ」という街は、かなり夜遅くだというのにすんごい街灯りでギラギラとしてた。
街から結構離れた場所を船で通っていたんだけど、遠くから見てもこれは大きい!っていう超高層ビルが建っていたり、ビルの側面が大々的な液晶画面になっていてそこに巨大な映像が動いていたり、そのビルを更に超える高さの噴水が天高く吹き上がっていたり!何でなんで、こんなに凄いことになってるの?って驚くばかりの光景。ちょっとぶっ飛んでいるというか、ニューヨークの夜景よりも、ある意味凄いと思ったよ。
実はこのジェッダという街。イスラム教の聖地メッカに近く、巡礼者の入り口として栄えてる場所でさ。噂にはよく聞くサウジアラビアだけど実際見てみると、今まで私が抱いていたのとは全く違う光景だったんだ。