そうそう、ゆっくりしてる場合じゃないんだった。今日の目的地は九份っていう観光地。ここからはそれなりに時間もかかるだろう、そろそろ出発しないと。九份がどこにあってどう行くかも分からないままに、私たちは電車の駅へと向かって行った。結局、電車の駅で探しても行き方が全く分からず、バスを探してそれに乗り込み、ようやく目的地へとたどり着いた。
九份は、有名な観光地らしくかなりの人で賑わってた。山の上の狭い空間を上手に使って、まるで迷路のような不思議な市場通りになっている九份。狭い道に湧き出す人をかき分けるようにして前へと進みながら、あれ、ここはさっき通ったっけ、初めてだっけなんて迷いながらもそのワープ感を楽しんで歩いていく。時折、店と店の隙間から時折見える山並みの絶景に、ここは山の上なんだったとハッと思い出しては立ち止まり、その隙間にある狭い階段を降りてみたいという衝動を抑えては歩き出す。
両脇にぎゅっとお店が並んでいる細い通り道には、珍しい食べ物があちこちに見えてキョロキョロと落ち着かない。食べ物はどこか日本とも似ているんだけど、やっぱり違うんだよね。フランクフルトは八角の香りがする甘い味のタレがついていたし、エリンギが丸々一本そのまま焼かれている姿とか、何だかシュールでウケる。
さて、探し回ってようやく見つけた小籠包の店に入ってみたよ。注文すると間もなく大きな蒸籠が運ばれてきた。蓋を開けると丸い小籠包が8つ、綺麗に並んで湯気を立てている。
熱々のまま小籠包をレンゲに乗せてお箸で割ると、中からジュワッと透明な肉汁が溢れ出てきた。その旨みたっぷりな汁をキュッと飲んでから、刻み生姜をのせた小籠包をタレにつけて丸ごと頬張る。柔らかな生地とジューシーな肉に生姜のピリッとした味が見事にマッチ、思い描いていた味に満足しながらペロリと平らげてしまったよ。
甘い揚げ菓子やフルーツたっぷりのジュース、豆腐デザートの花豆などデザートだけでもその種類は数限りない。台湾だけにお茶のお店も多く、試飲したお茶のあまりの美味しさに思わず唸ってしまった。だけど謎の飲み物や食べ物の試食もあって、興味を抑えきれなかった友人は謎の物体を試食してしまい、あまりの後味の悪さにこれまたずっと唸っていた。
九份は山の上にあるから、景色もホント絶景なんだ。色濃くそびえる美しい山並み、眼下には海が広がり、小さな島が遠くに見えている。奥にある小さな展望所からそんな景色を思う存分堪能できるんだ。観光地だけに人も多いから、展望所はちょっとした息抜きにいい空間。思いっきり深呼吸したくなるような緑いっぱいの景色だよ。
そんな景色を見下ろしながら、ご飯を食べたりお茶を飲んだりできるお店もいっぱいある。「千と千尋の神隠し」の舞台なのでは?と噂されているお茶屋さんも、上の階からの景色はなかなかの絶景。