そんな夜の屋台村ほどの賑わいはないにせよ、お昼前ともありこの通りも徐々に人が増えだしてきたよ。店の前に座ったおばさんが、大きなカゴいっぱいに次々と大きなシュウマイを作り上げている。じーっと覗き込む私とチラリと目が合うにも、一瞬でシュウマイの世界に帰ってしまうシュウマイおばさん。至る所で繰り広げられているそんな熟練の手業を見ているうちに、まだまだ食べたいっていう風な感覚に陥るんだよね。そう、これが恐るべし台湾マジック。
そんな屋台続きの道を奥まで歩いていくと、ガードレールがカーブする、高架下のような場所に行き当たった。道の角には年季の入った小さな移動式屋台。何だか懐かしいようなその風景に吸い込まれるように近づいて行くと、店の横で食べていた常連さん風のお客さんが、「この店美味しいよ、食べていきなさい」って勢いよく勧めてきた。
美味しいのは保証するから、ほらほら!と言わんばかりに、大きく手をこまねいては、何故か屋台に呼び寄せようとする常連さん。近寄ってみたものの屋台から漂う年季の入り具合が半端ない。そして、チラリと見えた鍋の中のカオスな様子にドン引き。「さよなら~」と満面の笑顔で立ち去る私たち。
なのに、不思議なもんだよね。何故かどうしても気になって、だいぶ先に歩いて行ったにも関わらず足が引き止められてしまってさ。ドン引きで引ききった潮が反転して勢い良く満ちていくかのような、そんな謎の吸引力に引き寄せられてしまいもう一度屋台へ。そこでおもむろに「…食べてみるわ、私」と宣言した友人。意を決し、颯爽とした姿で屋台に歩み寄りスープをオーダーした彼女…おお、捨て身になった女はある意味威厳に満ちてどこか美しい。
そんな美しい彼女の背後に立って覗き込む野次馬の私。スープの見た目はいたってシンプル、なんだけど。果たしてそのお味は…?「何これ、美味しい!」以外にもそう響き渡った声に思わず身を乗り出して、怖いもの見たさにひとくちだけ頂くと…これが絶妙に美味しかったんだ。どこか漢方っぽいというか独特のスパイスが効いていて、それがほのかに香るスープはじんわりとコクもあって、癖になりそうな味。台湾に来たんだなあってこの時すごく実感したよ。
そんな実験のような時間を過ごしてから駅に向かう途中、思いもよらず急激にお腹が痛くなってきた。やばいな、えーっと何食べたんだっけ?そうだ!間違いないよ…タピオカジュースだ。生水が合わなかったのかも~と思いつつ慌ててトイレに駆け込む。後にも先にも、この船旅で急激にお腹を壊したのはこれ一回きりだったんだけどさ。あなどれないね、台湾もアジアだった。
余談だけど、トイレの便器に便座がついていないってのは困りもの。他の国でもよくあったんだけど、みんなどうやって使っているのか謎だよ。洋式便器なのに便座がないって中途半端すぎなんじゃない?便座がないならいっそ和式の方が潔くていいと思う。と、いつも便器を目の前にしてブツブツ言ってしまう私。