ところで、タヒチの文化といえば。ポリネシア全体でそうなんだけど、タトゥー文化が特徴的でさ。街を歩く時に注意深く見ていたらそれが分かると思うんだ、タヒチアン、特に男性はどこかしら体にタトゥーが入っている感がある。ただ単にお洒落としてやっているのではなく、これは風習なんだ。元々はタヒチ語の「タタウ」が語源になっているらしいんだけど、タトゥーが何で存在するのか…実はとても興味深い話がある。
本来のタトゥーは神様からの贈り物で、タヒチに生きる人々の間で神聖なものとして大切にされていた。マナと呼ばれる「聖なる力、神秘的な力、生きるためのエネルギー」を、体の中に保てるようにプロテクトするものとして存在していたんだ。
そしてタトゥーは、現世だけでなく死後にも実体を残すものでもあった。18世紀末に宣教師によって禁止された後、1980年代には、タトゥーの持つ本来の神聖さは薄まっていたものの、タヒチの人々のアイデンティティーを示す大切な証として復活したタトゥー。
その模様には意味がそれぞれにあって、部族や家系、住んでいる場所や社会的な地位を示していたり、人生の重要な区切りをやり遂げたことを意味するシンボルでもあり、文字通りそれを体に刻み込むことで彼らは自分自身をそこに表現していたんだ。
そんなタトゥーがポリネシアだけでなく、実は日本の沖縄(特に離島)・アイヌにも文化として残っていて。驚くことにとってもよく似ているんだよね。それがさ、和彫りとはまた全然違う模様だから不思議なんだ。遠い民族とのルーツの繋がりを感じずにはいられないよ。
ルーツの話をしたところで、ここでひとつ話しておきたいことがあってさ。この旅の寄港地は次のマーシャル諸島でもう終わりなんだけど、実はこの船旅とまるでリンクするかのように、ある小さな船で、もうひとつの世界一周の旅が行われていたんだ。マーシャル諸島の後にそのお話をするね。