「私たちは、発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません」彼はそう語り、政治家として「人間の生き方」を説いたんだ。そして、こうも言っている。「本当に日本人は幸せなのかと疑問である」と。私たちはこの言葉の意味をちゃんと理解しないと、だね。
さて、ステーキを思う存分満喫した私たちは膨れ上がったお腹をさすり、人の群れをくぐり抜けつつ港に帰ろうとしていた。港の真ん前にある大きな道路の車線はかなり広くって、片道で3車線ぐらいあったかな。車は赤信号で列をなして停止していたんだ。
そこにヒョイっと身軽に飛び出してきた青年。両手にボーリングのピンみたいなのを抱えていたのをポーンと一本、空高く勢いよく上に投げ飛ばしたんだ。余りの唐突さにただボーッと見ていると、放り投げたピンをキャッチ、別のピンを投げてその他のピンも次々投げて、それを器用にくるくると空中回転させながら…なんとも見事なジャグリンがそこで始まっていたんだ。
即席サーカスのようなちょっとした彼のオンステージを、車の中からも道路からもへ~って感じでみんな眺めてる。ジャグリング上手なのはわかるんだけどさ。なんでこんな赤信号の道路のど真ん中でやっちゃってるの?って思ってたら、彼はすかさず次の行動に。車の窓をコンコンとノック、運転手は彼の手にチップをチャリン。はい、まいどあり。
素早すぎてほんと驚きだよ。赤信号のちょっとした隙にジャグリングして、車を何台か回ってそれなりにチップ集めちゃうんだからさ。発想が自由というか、ある意味これも生き残る力なのかも。ムヒカ論から見れば、彼がお金を貯めるために裂いた時間が、自分の好きなジャグリングをすることに使われている。そのどちらもが彼の欲しいものだから、彼はとても幸福だよね。
さすがウルグアイ、旅の終わりに素敵なメッセージをありがとう。