あちこちのお店でカラフルなお土産物を物色したり、数あるレストランを選びながら楽しそうな足取りで歩き回る人々。シーフードは美味しいし、ワインも種類豊富、都会でも比較的値段は安め、満足度の高い空間にみんなのいい笑顔。
そんなウォーターフロントのすぐそばにありながら、それに全く引けを取らないくらいの大きな存在感を示している山が、ここの街のシンボル「テーブルマウンテン」だった。ケープタウンでも見ることができる、アフリカらしい大自然だ。
圧倒的な存在感で私たちを迎えてくれた巨大な岩山。名前の通りテーブルのようなまっすぐな岩の頂から、時によっては雲がゆるやかに流れ落ちてきて神秘的な景色を作り出す。それは「テーブルクロス現象」って呼ばれている状態で、寄港中に何度もそれを見ることができた私たちはかなりラッキーだったのかも知れない。
テーブルマウンテンにはトレッキングコースもあるんだって。ケーブルカーで山頂まで登ると、街全体が見渡せて絶景らしい。山の歴史を物語る断層の縞模様が、緑を交え美しく柔らかなカーブを描いている。どこか荘厳な雰囲気が漂っていて、ホントに聖なる山って感じがするんだよね。
「大昔からずっと、テーブルマウンテンはそこから下界を見下ろしていた。
広大な大地には動物たちが暮らし、同じように人間も暮らしていた。時は経ち、大地は変化し土はコンクリートの下に隠れ、その上に大きな建物が連なった。景色は急激に移り変わっていく。やがて動物はどこかへ去り、人は増え色は混じり、そこから出て行くものもあればやって来るものもあった。貧富の差もあれば、混ざりゆく文化もまた…
そんな長い長い時間、テーブルマウンテンはここで、その一部始終をみていた。
山の下から風が吹き上がると、雲が山肌を滑って下の街までスルリと流れ落ちていく。幾度、これを繰り返してきたことだろう。ただただ、昔から変わらないのはこれだけだ。色んなものが変化してきた。そしてこれからも。だけど変わらずにいるものも、ここにはある。」
そんな気が遠くなるような繰り返しの中に、この日、私たちの目の前で流れ落ちた雲も含まれているなんて素敵だね。果てしなく続く時間の層に刻み込まれた今日の一瞬を、目を閉じ心に焼き付ける。