ピースボートのデッキから見えた美しい光景10選―前半編― は、いかがでしたか?横750pixelの写真では伝えきれないのがなんとももどかしいのですが、後半編は夜景が有名なチリ・バルパライソでの出港シーンや南極、氷河など、世界一周クルーズの魅力満載でお届けします。地球に生まれてよかった!旅ができてよかった!心からそう思えるシーンばかりでした。
リオデジャネイロの港から@ブラジル 1月21日
ブラジル・リオデジャネイロに明け方入港したピースボートのデッキから、コルコバードの丘を遠望することができました。ぼんやりとしたピンク色の空を背景に、街全体を抱くようにしてキリスト像が見下ろしていました。
青と白の世界@南極海クルーズ 2月2日〜3日
ものすごく寒いのに、息が白くならないのは、空気が綺麗すぎるせいでした。ふだん暮らしている北半球の日本から見ると「さいはての世界」だけれど、うすい青の空と厳かな色合いの海の組み合わせは日本の冬の海と変わりはありません。それなのに、その空と海の間に、純白の氷の大地が横たわっているのです。
ダウンジャケットを着込み、全身を包むツンと冴えた空気を胸いっぱい吸い込んだら、大好きな星野道夫さんがアラスカで綴った何編もの詩を思い出しました。
つかのま、地球が生まれてこのかた止まることなく流れてきた悠久の時間を感じ、人類の歴史や人生の短さを悟りながら、太古からの風に吹かれていました。
ブルホ氷河@パタゴニアフィヨルド 2月9日
プンタアレナスを出港した船は、2月9日の早朝、ブルホ氷河を遊覧しました。船の航路は、天候や海況によってその都度決まり、たびたび船内放送でパッセンジャーに伝えられます。ブルホ氷河遊覧は、予定されていなかったサプライズ。早起きをしてデッキに出てみると、夜と朝の間の青い世界に、発光しているような硬質の、白い氷土が見えました。
無数の灯りがまたたくValparaíso@チリ 2月12日
この日の昼間、夢中で歩き回った坂道とアートの街。「国土が細長くて、唐辛子の形をしてるからチリ」ぐらいしか予備知識のなかったチリに、こんなに素敵な街があったなんて!とたくさんシャッターを切りました。おとぎ話の世界に迷い込んだようなひとときを経たからこそなおさら、離れゆく港町の夕景は心に染み入るような美しさでした。太陽が沈み、少しずつオレンジ、そして群青へと色を変えていく空と、ひとつ、またひとつと灯されていく街のあかり。そのひとつひとつに人々の営みがあることに思いを馳せながら、オーシャンドリーム号が放った汽笛とともに港を離れて。第93回クルーズで経験した計20回の出港の中でも3本の指に入る、旅情に満ちたValparaísoでした。
金環日食@イースター島 2月25日
2017年2月26日、イースター島の沖に停泊したピースボートのデッキから、金環日食を見ることができました。チリ南部とアルゼンチン~アフリカのアンゴラ・ザンビア・コンゴ共和国でしか見られなかったという日食です。しかも、イースター島から登ったとたんに朝日が日食、というスペシャルな天体ショー。神秘的な時間でした。
サンセットクルージング@ラパヌイ(イースター島)2月25日
小さな港しかなく、沖に停泊した船から小舟で上陸したラパヌイ。そのおかげで、上陸していた時間以外も、船から島全体を好きなだけのんびり眺めることができました。寄港の日の朝、キャビン(船室)からデッキに出て初めて目にしたラパヌイは、青い海にのんびりと浮かびながら、太陽をさんさんと浴びて鮮やかな緑を放っていました。その姿を見て、ひとめですっかり大好きに!地図で見ると、ラパヌイは3つの火山を頂点とする三角形の島。海底火山が絶海につくった孤島だからこそ、地球の力強く優しいエネルギーが満ちているのだと思います。
2日間の寄港を終えた後、船はラパヌイとの別れを惜しむように島を一周してくれました。太陽が沈み、星が瞬き始めるまで、まさにマジックアワー。島の稜線や海岸線に佇むモアイと、その奥で刻々と色を変える空を、いつまでもいつまでも、飽きることなく眺めていました。
海からのぼる朝日と虹柱@南太平洋上 2月28日
世界一周クルーズ中に誕生日を迎えられる幸運をかみしめようと、2月28日は早起きをして、朝日を見にいきました。その気になれば毎日でも、海と朝日を眺められる贅沢な生活です。ふと反対側を見ると、虹柱を発見!宇宙から祝福されたような(笑)幸せな誕生日のはじまりでした。
完璧なダブルレインボー@サモア 3月11日
ピースボート第93回クルーズ最後の寄港地サモア。18時ごろに出港したあと、デッキのそこここに長い旅の終わりを想う人びとが集っていました。さびしさと帰国後の楽しみが同居する、曖昧で落ち着かない気分でいると、西の空をゆく太陽が東の海に完璧なダブルレインボーを描き出したのです。クルーズ中、何度もあちらこちらに現れては心現れる美しさで魅せてくれた虹ですが、最後が一番美しく。地球は最高の演出家です。
いかがでしたでしょうか?
第93回クルーズの後半を彩った美しいシーンをハイライトでお伝えしました。どれも、はかなく通り過ぎた一瞬ばかりです。何よりも素晴らしかったのは、いつもそこに海があったということ。なんでもないひとときに、ふとデッキから顔を出せば、水平線までキラキラと光をたたえた海が変わらずにそこにあり、すべてを受け止めてくれるようでした。
そして、今も地球のどこかではきっと、美しい光景が次々に繰り広げられています。誰かがそれを見て心を揺り動かされているかもしれないし、たとえ誰も見ていなくても。あちこちで目に焼き付けた地球の美しい表情をありありと思い出しては、そのことに思いを馳せ、幸せを感じています。
美しい地球に生まれて本当によかった。美しい地球を、美しいと思える心を持っていてよかった。そんな気持ちが自然と湧いてくる地球一周の船旅でした。
(取材・写真・文/浅倉彩)