Mr.touda
インタビュー
2020/04/24
INTERVIEW Vol.21
任田和真
TOUDA Kazuma

地球を2周した地域おこし協力隊員が感じる、ローカルに活きるグローバルな経験

PROFILE
Mr.touda
任田和真
大学卒業後にピースボート第86回クルーズ(2014年11月~2015年3月)に参加。その後ピースボート職員として勤務。3年間で地球2周、約50カ国を旅しながら国際協力事業に尽力した。そしてピースボートを通して出会ったパートナーとの結婚を機に退職し、子育ての理想の地として「能登半島七尾」と出会い2018年4月に東京都から夫婦で移住。現在は地域おこし協力隊として七尾市高階(たかしな)地区にて活動している。
大学を卒業してすぐに「教師になる」という自身の進路に違和感を感じた任田さんは、自分の世界を広げるためにピースボートに乗船する。参加者としても、そしてスタッフとしても世界一周を経験した彼が語るピースボートの魅力とは——。

自分が教師になることに対して感じた違和感

大学卒業後に就職をせずピースボートに乗船した任田さん。それまでの目標だった教員にならなかった理由を聞いた。
任田「生まれは石川県の小松市というところで、大学入学と同時に東京に出てきました。両親が学校の先生だったことが影響して、私も小さい時から自然と『体育の先生になるぞ!』と思っていました。そして体育系の学科がある大学に進学し、迷わず教員になるためのゼミに入ったのですが、そこで自分が教員になることに違和感を感じました。」
任田「自分はずっとサッカーをしてきたんです。進学もスポーツ推薦で、大学でもサッカー部に入ったので、朝昼晩とサッカー漬けの生活。逆に言うとサッカー『しか』してこなくて。
もし自分が生徒だったらと考えたときに、担任の先生がサッカーの世界しか知らないのはおもしろくないなと思ったんです。サッカーだけじゃなくて生徒が知らない世界をいろんな視点で話が出来る先生のほうが絶対におもしろいんじゃないか、というモヤモヤがありました。」
任田さんは自身の世界を広げるためにスポーツ業界の人が集まるコミュニティに参加。この出来事が人生のターニングポイントになったという 。
任田「そこにたまたまピースボートスタッフの方が来ていたんですけど、その人が自己紹介で『世界6周してます』って言ったんですよ。それがもう自分にとってすごい衝撃的で(笑)『え!なにそれ、そんな世界あるの!?え、6周?うそでしょ?』みたいな感じでしたね。でもその時思ったんです。待てよ、自分の担任の先生が世界を何周もしてたら絶対面白いやん!!....あ!!これだ!!!と思ってその場で世界一周クルーズに申し込みました。」
直感的に申し込みをしたので、もちろん家族には相談なし。全員が公務員という家族に「就職をせず世界一周に行く」と話した時の反応は意外なものだった。
任田「中学校の教員であった父に恐る恐る相談という名の事後報告をしましたが、父は『ぜひ行ってこい!』と応援してくれたんです。『今の学校教育の現場は、昔以上にいろんな仕事に追われて先生が他の業界や他の現場を見る・知る時間がほとんどない。だからこそ教員になるのであれば世界を見て色んな人と触れることは必ずいい経験になるはずだから』と。家族には絶対反対されると思っていたので本当に意外な反応でした。家族にも応援してもらえたので、行くからにはとにかく今しか出来ないことは何かを考えて、出来ることは全部やろうと決意しました。」

世界一周の旅にでる前にも世界が広がる

それまで全く世界に行くことを考えずに生活していたため、貯金はほぼゼロ。ただお金を稼ぐよりもピースボートに関わりながら資金を貯めたいと思った任田さんは、大学卒業後にフリーターとなり、ピースボートセンターに通ってボランティアスタッフとして活動を始める。
ボランティアスタッフ制度とは?
居酒屋など街でよく見かけるあのポスターは、クルーズ乗船予定のボランティアスタッフが貼っている。他にもカンボジアの地雷除去のための街頭募金、世界各地に届ける支援物資集めなどのボランティアがあり、⾃分の興味関⼼や⽣活スタイルに合ったものを選択可能。関わったボランティアスタッフの活動分だけ船賃の割引が受けられる。この制度により、お金に余裕のない若者でも乗船しやすくなっている。1回のクルーズで10名ほどは、全額割引まで到達する強者がいるらしい!
任田「最初はほんと戸惑いましたねー、なんだここはって!ピースボートって上下関係がないというか…いい意味でも悪い意味でも関係がすごくフラットなんですよね。体育会系で育ってきたのでそれまで『とにかく年上の人には何があっても敬語で!さん付けで!』って植え付けられていたのでこういう関係性もありなんだと乗る前から価値観が広がりました。ボランティア活動をしている人は育ってきた家庭環境やバックグラウンドなどが様々なんですけど、唯一『地球一周に行く』という目的が同じだから最終的には分かり合えるんですよね。今、振り返って考えてみると地球⼀周に⾏くと決めた瞬間から、私の地球⼀周の旅は始まっていたなーと思います。」

船旅を充実させるための2つのマイルール

就職をしないでピースボートに乗船するからには、今しか出来ないことは何かを考えて、出来ることは全部やろうと決意していた任田さん。船内生活を有意義なものにするためにマイルールを2つ作っていたと語る。ルールの1つ目は「毎日新しい人と話す」こと。
任田「ピースボートの旅が他の旅と一番違うところは、船に乗船している1000人が運命共同体となり同じ体験をすることだと思っています。参加者それぞれが年代も価値観も違うので、同じ体験をしても受け取り方や感じ方は1000人1000通りあるんですよね。それを知れば知るだけ自分の価値観が広げることができるのがピースボートの醍醐味だと思います。なので、普段の⾃分だったら関わらなさそうな⼈たちとあえてどんどん話すようにしていました。たとえば、寄港地の後はよく「地球⼩学校」という⾃主企画を実施して、ツアーや⾃由⾏動など寄港地でそれぞれが経験したことや感じたことをアウトプットして共有する場を作ったりしていました。 」
色んな人と話すきっかけ作りとして実行していたのが「朝ごはん作戦」。
任田「朝ごはんは必ず話したことがない⼈のいるテーブルに座るようにしていました。ほかの時間だと船内企画に参加したりしてみんな忙しいので。朝ごはんは忙しくなる前の時間なのでコミュニケーションが取りやすいんです。そこでその人がどんな事をして過ごしているのか聞いて『じゃあ今度一緒に行きましょう!飲みましょう!』みたいに次の約束のアポ取りをしていました。船内にはネット環境がないので、その場で口約束が基本です。船旅は100日間しかないので、1日10人新しい人と話してやっと1000人と話せるので人見知りしている場合じゃないと思って。」
2つ目のルールは「世界中に友達を作る」こと。教員になった時に『先生はイースター島に知り合いがいるんだよ』と言えるようになるため、全ての寄港地で知り合った人にFacebookアカウントを教えてもらったりしたそう。
任田「最初は言葉が分からないと友達になるのは無理だと思っていたんですけど、スポーツを通じて交流したり、笑顔で接したりするうちに国際交流の楽しさにハマって言葉が通じなくてもコミュニケ―ションはとれるんだと実感しました。今でも誕生日にメッセージをやり取りしたり、地震が起きたときに『大丈夫?』って送ってくれたりするんです。南アフリカの友達はみんなでお金を出し合って日本に招待もしましたね!そうやって訪れるまでは全く知らない国だった場所が『友達が住んでいる国』に変わっていったんです。」
任田「世界一周なんて一生に一度の経験だと思っていたので、オプショナルツアーやオーバーランドツアーをたくさん取りましたね。全部で60万円分くらいだったかな。
ピースボートでしかできない経験をしようと決めていたので、作っている側におすすめしてもらったら間違いないだろうと思って全部ピースボートスタッフに選んでもらいました。そのほとんどが地元住民との交流や、社会問題を検証するようなツアーです。」

スタッフとして関わるピースボート

世界の様々なことを知っている先生になるためにピースボートに乗船した任田さん。下船後は先生になった…かと思いきや、選んだのは国際NGO団体ピースボートへの就職。
任田「世界一周の中で色々な経験をして、様々な世界を少し知れました。でも、このまま先生になってもまだ生徒には伝えられないと思ったので、自分の言葉で伝えられるようになるまでピースボートで働こうと決めました。そして何より働いているスタッフがめちゃくちゃかっこよかったので。」
スタッフとしては主に、日本各地のピースボートセンターを担当していた。「船に乗りたい」という夢と、夢の実現に向けた障害を抱えている人が集まるピースボートセンターは一番の現場だと語る。
任田「彼らの夢を応援するために、まずピースボートセンターを彼らの居場所にしたいとずっと考えて仕事していました。私がボランティア活動をしているときは、終わったらすぐに帰る、イベントには出ない…みたいな通い方をしていたので、どうしたら自分みたいな人にも居場所だと感じてもらえるかを考えて実行していましたね。
なんでもいいからとりあえずピースボートセンターに来たくなる理由をたくさん作って、全国各地へポスター貼り合宿に行ったり、みんなの旅立ちを見送るパーティを企画したりしてましたね。」
任田「後は、ピースボートを降りてからの⽣活に、船旅で経験したことを活かさないと意味がないと思っていたので、自分が関わった人達には『なんのために世界一周するのか」を聞いて一緒に考えるようにしていました。目的に正解はないので人それぞれでいいのですが、地球一周はゴールではなく、あくまでも人生の通過点。しっかりその経験を活かすためにはその人なりの目的を持って乗船してほしいと考えています。きっと何か変化を求めて乗船する人が多いでしょうし、どうなりたいかを考えると自然と船内や寄港地での行動も変わってくると思うんです。」
参加者とスタッフ。その両方を経験して、いまの仕事でもピースボートでの経験が生きているという任田さんに改めてピースボートの良さを聞いた。
任田「ピースボートに携わることで関わることができる人の幅…方向性…目標…規模感…当事者意識…とか挙げ始めたらキリがないんですけど、どれをとってもスケールが本当に大きいんです。世界を平和にってとんでもなく大きな目標に対して本気で立ち向かおうとしている人たちが集まっているんですよ。パワースポットですよね。
また、地元の良さに、その土地を離れてから気がつくみたいに、ピースボートの良さも離れてから改めて実感します。あの場所で仲間たちと同じ熱量で仕事ができたことを心から誇りに思っていますし、今でも仲間です。今は田舎で暮らしていますが『世界2周しました!』ってお爺ちゃんお婆ちゃんに言うとびっくりしすぎて開いた口がふさがらないどころか、顎がよく外れてますよ、冗談ですが。ほんとにそれくらいびっくりされます(笑)そして一つ間違いなく言えることは、ピースボートよりも面白い団体は今のところこの世に無いと思っています。」

ピースボートスタッフを卒業。新天地は地方。

ピースボートスタッフとして3年近く働いた任田さんが次に選んだ仕事は地域おこし協力隊。現在は石川県七尾市高階地区で移住者を増やすために、イベントの企画や移住する際に知っておきたいことをまとめた「集落の教科書」の作成などに通り組んでいる。
任田「地域おこし協力隊にはそれぞれミッションがあるのですが僕の地域は『移住者を増やしてくれ!移住者を定住者にしてくれ!』っていう事しか決まっていないんですよ(笑)そのためにはまず自分を知ってもらい、信頼関係を築くことが大事だと思って、消防団に参加したり草刈りを手伝ったり。自分にできることは何でもしました。これがまたやったことないことばかりで面白いんです。ピースボートで、自分の知らない世界が『ある』と知った事、国籍・世代を問わずたくさんの人と関わってきた事で得たコミュニケーション能力は、今の仕事でも本当に役に立っています。」
それを理解しているかどうかは別として、自分と違う世界が「ある」と知っているかどうかはコミュニケーションをとる上でとても大事だと任田さんは語る。また、ピースボートに関わる中で企画に関する力が身についていたと実感することもあったという。
任田「地域の人と仲良くなるといろんな要望が聞こえてくるんですね。『小学校が廃校になって子どもたちの姿が見えなくて寂しい』とか。それで廃校になった小学校でテレビ番組の『逃⾛中』をモデルにしたイベントを⾏ったんですけど、その段取りを考えたり人を集めて動かしたり…っていう企画を実現させるための一連の流れが船内で企画を作り上げる工程と同じで。『あ、これやったことあるぞ』ってなったんですよ。色んな人を巻き込んで企画のを実行・運営する力がついたのはまさにピースボートのおかげですね。」
地域おこし協力隊の任期は3年。今年は、任田さんにとって地域おこし協力隊として活動する最後の一年になる。今後については自身で事業を起こすことも考えているそう。
任田「色々な人とコミュニケーションを取ったり、僕がパイプとなって人と人をつないだりする今の仕事にやりがいを感じているし、すごく面白いと思っていて。自分はきっとこういう仕事が向いているんです。ほんとに色んな事を頼まれますが、その度に『頼まれごとは、試されごと』だと思って挑戦してみると、ピースボートで出会った仲間とまた接点を持つことになったり、あの時のあの経験が今に活きてる!って点と点が繋がっていく感覚が凄いおもしろいんです。
そして今、移住者を増やすこともそうですが、さらに色んな人にとって住みやすい「ダイバーシティ」を目指してまちづくりをしています。一般的には保守的な田舎の集落ですが、年齢、出身、国籍、障害等問わずにみんなが楽しく暮らせる村を作りたい。ハードルはたくさんありますが、目指すはやっぱりピースボートの船の環境なんですよね、あんな多様性に富んだ村を作ってそこで子育てをすることが目標です。
最後に地球一周を目指している人に向けてメッセージを伺った。
任田「地球一周したい。その想いは、地球に生まれた以上人が生まれながらに持ち合わせているものだと思います。後悔のない人生を送るためには、何事も自分自身で決めることが大切です。地球一周という人生の大きな選択にはきっと人それぞれに色んなハードルがありますが、あなた自身が行きたいと心から思うのであれば、実はそのほとんどが越えられるハードルなのかもしれません。是非とことん悩んでとことん向き合ってみてください。
私がピースボートに5年間携わった経験から断言できます。
『地球一周しなかったことを後悔している人はいますが、地球一周したことを後悔している人に出会ったことはありません。』
あなたの挑戦を心から応援します。」
(取材・写真/鷲見萌夏 写真提供/任田和真)
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