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インタビュー
2016/12/09
INTERVIEW Vol.12
辛嶋 友香里
KARASHIMA Yukari

答えを出さなくてもいい生き方がある。船旅のスケールから教わったこと。

PROFILE
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辛嶋 友香里
[一般社団法人 ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)スタッフ]
静岡生まれ、埼玉育ち。教員免許取得後、社会経験を積むべく総合美容サロンに勤務。その後、個人サロンやゲストハウス、カフェなどの立ち上げを経験。2009年12月、第68回クルーズに乗船。東日本大震災ではピースボート災害ボランティアセンターの初期運営メンバーとして支援に携わり、職員となる。現在は、被災地での緊急支援活動の他、将来の災害に備えるため、主に防災・減災の取り組みに力を入れている。
今回のインタビューは、ピースボート災害ボランティアセンターのスタッフ・辛嶋友香里さん。華やかな笑顔が印象的な辛嶋さんは、一見おとなしい女性かと思いきや、いざお話を伺ってみると意外と根性のある“冒険家”! 参加した第68回クルーズで「離脱」した際に見舞われた思いもよらないトラブル、そしてピースボートとつながり続けてきた理由を話してくれた。

人と人を繋ぐ「学校という場所」ってすごい


――スタッフになる以前、大学で教員免許を取得されたそうですが、その後は別の仕事に就かれていますね。

辛嶋 免許は取ったものの、その後「ゆとり世代」に突入して教育方針が変わっていったんです。その中で、そのまま生徒に接することに違和感や抵抗があったので、まずは社会勉強をしてから本当になりたければなろうと思って。
 
実は私自身は、学校も勉強もあまり好きじゃなかったし、成績もあまり良くなかったんです。でも教員になりたいと思ったのは、恩師から、「今を生きろ!」という教えがあったからです。
 
学校という場所は、何百人、何万人といて、自分の考え方や行動次第でいくらでもネットワークが広げられるし、集団行動や共同生活から得られる「心の成長」も大きいと思います。その「場」の環境が自然と整っている学校って、すごいところだと思うんです。
――人と人を繋ぐ「場」という意味では、ピースボートも近いのかも?
辛嶋 そうですね。ピースボート自体はきっかけづくりにすぎないんですけど、その結果、人と人とが繋がっていくので。今の災害ボランティアセンターの仕事もそうですし、この環境はすごく好きですね。でも私がこのグループのスタッフになることは、いっしょに乗船した人たちは誰も予測をしていなくて、5年以上経った今でも「何で?」って言われます(笑)。

やるべきこと、手伝えることがある

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――そもそも、なぜスタッフになったんですか?

辛嶋 ピースボートを降りてからまた旅をしていたんですが、2011年に東日本大震災があって急いで日本に戻って来たんです。同時期に、ピースボートに乗った時のスタッフの方から「ボランティアを募集し始めるから手伝えないか」という連絡が入ったんですよ。
――それで迷わず参加した、と。もともとボランティアに興味があったわけではなく?
辛嶋 そうです。やるべきことと、手伝えることがあるっていうだけですね。
――災害ボランティアセンターの初期スタッフとして、どんなことをしていたのですか?
辛嶋 まずは現地に1週間入り、その後東京に戻った時には全国から何万人というボランティアの方が集まってきていたんです。そこのまとめ役がいなかったので、オーガナイズすることになりました。ボランティアの募集と、被災地に入るにあたっての説明会やセーフティレクチャーなどを実施していました。
――レクチャーとは?
辛嶋 現地へは、まだまだ危険な状態の中で入っていたので、一般の方が自分の安全を守るための講習を行っていました。ピースボートは阪神淡路大震災から救援活動をおこなっていたので、その経験や教訓を活かして、「自己完結」というものをちゃんと伝えた上で参加してもらう仕組みを取っていたんです。
――その自己完結とは、自分の食料などは自分で持っていくというようなこと?

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辛嶋 衣服や持ち物もそうですし、作業場所でこういう場面に出くわしたらどう安全管理をしていくかとか、そういうのも含めてですね。それから、現場に信頼できるリーダーをつけていたので、そこで組織を体系立てて作っていきました。

――ボランティアは何人ぐらいいたのですか?
辛嶋 企業ボランティアやインターナショナルボランティアも含めると12000人以上になりますね。ボランティアの方って本当にすごいと思います。私は「職業」として災害支援団体で働いていますが、ボランティアの方々は、何か少しでも役に立てることがあればという想いで力を貸してくれる。だからこそ、そんな皆さんの想いが形となって活かされるような仕組みを整えたいですね。
 
多様な人の想いやアイデアを、具体的な企画やプログラムとして実現していくところが、ピースボートは団体としてすごいなと思います。たとえば被災地では、一方的な支援をするだけでなく、事業作りや被災地雇用を生むような取り組みもしています。
――そのほうが継続していけそうですね。
辛嶋 継続もできるし、お互い自立もしていくでしょうし。必ず、いっしょに学んでいくという姿勢でいるので。それが国境を越えていても、誰とでも常に成長していけるような仕組みを、ピースボートは作っていると思うんです。

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ピースボートのスタッフは「繋がっていたい人たち」

――ご自身の事業で一時期運営から離れながらも、また職員として戻られたそうですが、ピースボートのどこに惹かれるのでしょうか?
辛嶋 ピースボートというグループとそこにいる人たちとは、ずっと繋がっていたいと考えていたので。ピースボートって、すごく独特な組織なんですよね。
――どのあたりが「独特」だと思いますか?
辛嶋 かなり大きい組織なのに、ひとりひとりの存在がきちんとあるんですよ。意見や意思が通るし、スタッフも「自分」を持っているし、今は持っていなくても、探しながら挑戦できる環境もある。それは用意してくれているのか自然とそうなるのかは分からないですけど、そういう素敵な環境があるんですよね。
 
その中で、日本や世界の歴史背景の知識も身につけ、きちんと接することができる人になれる環境があるなと。だから、自分が変わるきっかけを探しているとか、これから乗ってみたいと考えている若い人には、ちょっとでもいいから関わってみてほしいなと思います。
――ピースボートという組織に?
辛嶋 んー、どちらかというと組織にいる人間たちに! スタッフでなくても乗ったことがある人でもいいと思います。私も船の上はいい思い出ばかりではないですけど(笑)。ただ、いい思いをした、しないに関らず、‟楽しめたって“思えた乗船者であれば、たぶん『とりあえず乗ってみなよ!』という一言だけは言えると思うんですよね。
――それだけの価値がある、と。
辛嶋 話すのが苦手な人でも、語りたいことが100ある人でも、たぶんその一言で済ませられるくらいの、何かしらの面白さとか、楽しさとか、学びや体験できる環境が揃っていると思います。テキストにはできない、一人ひとりが持っている人生ノウハウの宝庫ですね。それぞれの価値観が面白すぎます。

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船旅というスケール感と“南極”航路に惹かれた

――ピースボートに乗ろうと思ったきっかけは?
辛嶋 都内の総合美容サロンで働いていたんですけど、環境などに疲れてしまい…自分って何だろう、幸せってなんだろうと感じはじめたので、自然や人間愛に触れて感情を取り戻しに行こうと思って(笑)。船旅というスケールの大きさに惹かれてピースボートを選びました。バスや列車の旅、空旅も行こうと思えば行けるけど、船旅はきっと一生に一度ぐらいじゃないですか。あとは回る『航路』が気になって。
――南極を回る航路に乗船されたそうですね。
辛嶋 最初はヨーロッパを回る北回りの航路を勧められたんですけど、まったく心が動かず。でもたまたま南極回りの航路が出て「コレだ!」と。ヨーロッパは行こうと思えば自分でも行けるけど、南極には行けないので。アフリカ大陸とか南米とかもなかなか行けないし、とにかく南回りの航路がよかったですね。

航路
ピースボートの世界一周航路は大きく分けて2種類。北半球を中心にまわる北回り航路と、南半球を中心にまわる南回り航路がある。それぞれ約100日かけて地球を一回りする。

 
――思い出に残っているのはどんな場所ですか?

辛嶋 船内も日々発見があってとても面白いですが、私には、船で一周するだけでは刺激が物足りず、途中で2回「離脱」しているんですよ。ブラジルからアルゼンチン、プンタアレナスからイースター島まで。
――その間はどう過ごしていましたか?
辛嶋 ブラジルとアルゼンチンはとにかく遊んでました! 地元の人がする生活をいっしょにしてみて、朝はビーチに行って…、まずトップレスでびっくりしましたけど(笑)。ごはんも地元の食堂で食べて、普通に観光したりお酒を飲んだり。
 
壁に銃弾のあとがあったり、町で騒動があったり、ちょっと物騒だと思うこともありましたけど、数日でもいいから滞在して、その場所が本当にどういうところなのかを自分の目でちゃんと見て感じたいというのはあるかもしれないですね。

トラブル続きの離脱!

――意外と冒険家ですね!
辛嶋 そうですかね、楽しいですよ(笑)。船の中でチケットを取って、絶対行きたい場所だけ決めて、あとは現地で、という感じで。
――ちなみにその絶対行きたい場所とは?
辛嶋 ボリビアのウユニ塩湖です。雨季の時期ですごくきれいでしたよ! ただこの時、本当はペルーで合流予定だったんですけど、チリの大地震に遭い…「被災者」になってしまったんです。陸路も空路も壊滅的で1週間動けず…。
 
でも、なんとか情報を集めてバスでペルーに向かったんですよ。「アタカマ砂漠」という砂漠を何十時間もバスで移動して。その砂漠のど真ん中に休憩ポイントがあるんですけど、長テーブル1個ぐらいのスペースでジュースだけ売っている本当に何もないところでした(笑)。そこで今度は、一緒にいた4人中2人がパスポートを盗まれて!
――またアクシデントですか~!?
辛嶋 それで砂漠の真ん中からまたチリの大使館に行かなきゃいけなくなって、そこから2人ずつに分かれました。ただ、その2人は異例のスピードでパスポートを再発行してもらえ、大使館が用意してくれた飛行機でペルーで合流できたんです。
――逆にそっちが早かったと。

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辛嶋 残った私ともう一人はウユニ塩湖に行って。正直、ここまできたらもう楽しんでしまおうという心境でした(笑)。そしてペルーに向かおうとしたらまたトラブル。災害の影響か空港の混乱で、4人分の荷物が違う飛行機に乗ってしまったんです。その荷物を追いかけていたらペルー合流に間に合わなくて、またチリに引き返して、今度はイースター島に飛ぶという。その時はもう賭けでしたね。仮設の空港だったので飛ぶか飛ばないかも分からない状態。でも今日出発してくれなかったら、本当に間に合わないっていう状況だったので…。

――それを現地で情報を仕入れながら動くという…。
辛嶋 英語もほとんどダメなので身振り手振りで(笑)。でも地元の方が泊めてくれたりしたんですよ。24時間バスで、最終地に着いたのは夜中だったので、ホテルを探すこともできずにいたら『うちに来れば』って。半信半疑でしたけど、治安的に野宿の方がリスクが高かったので行ってみたら、すごくアットホームでいいご家庭で助かりました!
――現地の方とコミュニケーションを取りながら生き抜いたんですね(笑)。振り返ってみてどうですか?
辛嶋 「何でもやってみよう」という経験にはなりました。何事もやってみないと分からないですし。自分でそれを何かに落とし込めなくても、感覚として持っているだけでも大事だと思います。だから旅をするべきだと思いました! その後の旅行では、現地に住んでいる友だちに会ったりすることが多いですね。これは船旅のおかげですけど、日本だけでなく世界中どこに行っても友だちがいる状態になるので、それはすごい財産ですね。

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物事をもっと広く見たかった

――印象に残った現地の人などはいますか?
辛嶋 人にフォーカスを当てるなら、交流プログラムで行ったフィリピンが印象に残ってますね。マニラに大きな川があるんですけど、ゴミとヘドロで異臭がする中、橋の下と川の間にバラックの住宅があって、大人だとまっすぐ立てないくらいの狭い空間に、十数世帯が隣接して住んでいるんです。訪れた私たちに対し、会いに着てくれた『日本のお友だち』として、どんな質問にも嫌な顔ひとつせず接し、受け入れてくれました。
 
貧しさなんて関係ないくらい、屈託のない子どもたちの笑顔を見て、人と人がお互いに手を差し伸べて本気で助け合って生きていく中には、ウソがないなって感じました。現地の人の本当の声を聞こうとか、TVや教科書では観られないものをちゃんと知ろうって心底思える経験だったと思います。ただ旅行に行くだけでは味わえないことなので。
――ピースボートならではですね。

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辛嶋 あとはケニアで、野生動物のいる国立公園の中でテントを張ってキャンプをしたことも思い出深いですね。周りに本当に何もなくて、ちょっと歩いたらキリンやゾウがいるような所で。警備している人はマサイ族だったり。そこで見た南十字星はきれいで本当に感動しました! でも夜は、テントの横に何の動物が来てるのか分かんないけどガサガサしてて(笑)。

――うわ~(笑)。しかしピースボートの経験って本当に幅広いんですね。その経験をひとことで言うと?
辛嶋 きっかけをくれた人、場所ってことですかね。乗る前はなんか窮屈だったんですよね、住んでいる世界が。だから物事をもっと広く見たいと思った。地球規模で考えた方が面白いじゃないですか。
 
20代後半から、何か答えを出さなきゃいけないって、そんな思いに駆られてた気がするんですよね。でも出さなくてもいいと気づけたかもしれないです。キャリアアップも目標も大事だけど、答えを出さなくてもいい生き方があるっていうこと。だから今は焦りはしないですね。
――これからの目標や計画はありますか?
辛嶋 計画ゼロです(笑)。でも理想は、成長し続けること、進化し続けることです。
――お話を伺っていると、一生、忙しくしてそうですね(笑)。
辛嶋 どうでしょう。楽しいですよ、きっと!

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(取材・文/明知真理子 写真/利根川幸秀 写真提供/辛嶋友香里)

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