日本のお米のように、主食はそれぞれの国の食文化の基盤となる重要な食べ物。また、その地域の気候や歴史などによって主食は大きく違います。世界三大穀物は「米、小麦、とうもろこし」ですが、それ以外を主食とする国も多くあります。世界の国々の主食の種類や特徴について調べてみました。世界では、どんな食べ物が主食として食卓にあがっているのでしょうか。
お米を主食とする国
アジアには、お米を主食とする国がとても多いです。日本はもちろん、中国、韓国といった東アジアの他に、ベトナム、タイ、フィリピンなどの東南アジアの国々でもお米が主食として食べられています(中国では地域によって小麦も主食とされています)。
お米の種類
一口にお米といってもイネの種類は地域の気候にあわせてさまざま。また調理法にもバリエーションがあり、料理にあわせて特徴を活かして使い分けられています。
ふっくらツヤツヤのジャポニカ米(短粒米)
例えば日本で主に食べられているのは「ジャポニカ種」といわれ、米粒が短めで、炊くとふっくらと水分量を多く含み、粘りとツヤが出るお米です。日本の他にも、韓国、北朝鮮、中国東北部、一部のヨーロッパなどでつくられています。栽培には雨季乾季がはっきり分かれている気候が適しています。
炊くと粘り気のために米粒同士がくっつきまとまりやすいため、お箸で食べやすいのが特徴。日本のおにぎりやお寿司、韓国のキンパなど、握ったり海苔で巻いたりする料理に適しています。
パラパラさっぱりのインディカ種(長粒米)
世界で1番多くつくられているお米はインディカ米です。中国南部、タイ、ベトナム、インド、マレーシア、バングラデシュ、フィリピン、ブラジル、アメリカのメキシコ湾岸、中東諸国などで生産されています。米粒は細長く、炊いても水分を含みにくく、自然由来の甘い香りがすることで知られています。寒さに弱く、高温多湿な気候でよく育ちます。
パラパラとした口当たりを活かし、ピラフやチャーハン、パエリア、カオマンガイなど、お米を主役に味付けした料理に適しています。
小麦を主食とする国
小麦を主食とする国には、西アジアや中央アジア、ヨーロッパなどの寒冷地域に位置する国が多いです。また、年間降水量500〜750mm程度の地域が小麦の栽培に適しており、特に乾燥に強いため降水量の少ない地域で多く生産されています。
小麦を使った料理
小麦の調理法は豊富にありますが、大きく発酵させずにつくるパン、発酵させてつくるパン、そして麺類に分けることができます。
発酵パンを主食とする国
フランス、イタリアなどのヨーロッパの国々のほか、ブルガリア、オーストラリア、ロシアなどで主食として愛される発酵パン。
インドや中央アジアのナンも発酵パンに分類されます。日本では、太平洋戦争の終結後に学校給食にコッペパンが登場。1980年代以降には店舗で焼いたパンを提供するベーカリーの増加とともにパンの種類も増え、消費がさらに広がりました。イースト菌などを使って発酵させることで生地が膨らみ、ふっくらとおいしい食感になります。
無発酵パンを主食とする国
インドやパキスタンでよく食べられるチャパティや、中近東のロティ、メキシコのトルティーヤが代表的です(トルティーヤにはとうもろこし粉が使われることもあります)。
小麦粉に、塩と水を加えた生地を、平たく伸ばして無発酵のまま焼く、パンの祖先といえる存在です。
小麦を使った麺類を主食とする国
小麦を使った麺には、パスタや中国の拉麺の他、中央アジアの国で食べられるラグマン、キルギスのベシュ・バルマック、タイのバミー、そして日本だけでもうどん、そうめん、ひやむぎ、きしめんとさまざまな種類があります。
しかし、主食であるかというと、数ある料理の一つとして楽しまれている場合がほとんどです。例えばイタリアはパスタが有名ですが、主食はパンです。
米と小麦以外の主食
米と小麦以外の穀物を主食とする国も非常に多くあります。主に気温や降水量などの気候の違いによって主食が変化していることがわかります。
トウモロコシ
米と小麦以外で主食としてよく食べられているのはトウモロコシです。暑さに強いトウモロコシは、メキシコ、ブラジル、ペルーなどの中南米や、アフリカ南部の国の多くで主食として活躍しています。
メキシコのトルティーヤは、トウモロコシ粉を発酵させずに平たく焼いた無発酵パンです(前述のように小麦が使われることも)。
アフリカの東部や南部では、トウモロコシ粉をお湯で練って固めたウガリ(地域によって呼び名が異なる)がよく知られています。トウモロコシの他に、キビや、キャッサバの粉などが混ぜられることもあります。
ジャガイモ
アイルランド、スウェーデン、ドイツなどでは主食として食卓に欠かせないのがジャガイモ。ジャガイモは寒さに強く、痩せた土地でも比較的安定して育つ頼もしい穀物です。
茹でたり蒸したりする基本的な調理法以外に、ゆでたジャガイモを細切り、またはおろして焼いたスイスのレシュティ、すりおろしたジャガイモをパンケーキのように焼いたベラルーシのドラニキもよく知られています。
また、日本ではジャーマンポテトとも呼ばれるドイツの炒め料理ブラートカートッフェルン、訳すと「ヤンソン氏の誘惑」というユーモアあふれるネーミングで有名なスウェーデンのポテトグラタン、ヤンソン・フレステルセなど、調理法も実にさまざま。
いかがでしたか? ここであがった世界の主食はほんの一部。世界では、多様な穀物がさまざまな調理法で食べられています。それぞれの気候や文化にあわせて発展した食文化は、旅をする醍醐味でもあります。食べたことがない世界の主食の数々、ぜひ現地で味わってみたいですね。
(文/山根那津子 写真/PEACEBOAT、AdobeStock)