話は戻って、結局。メキシコの街はほんの数時間しか歩いていなくて、思い出すのは、うだるような暑さの中に浮かぶ色鮮やかな原色と、かげろうのように揺らいでいる人々の陽気な笑顔だけ。だけどあまりにも濃厚な死者との時間。その出会いは、会話的というよりもダンス的なものだった。
私は今という時の中で踊っている。死者も彼らの時の中で踊っている。ふと言葉なく手を取り合って相手に身を委ねてみると、その空間は揺らぐたくさんの薄布のようなものに覆い囲まれる。過ぎ去った時間は形を変えてふわりと揺れはじめた。
「死は誰にでも訪れる。恐れずに楽しもう!」天空からパブロさんの声が鳴り響いてくる。微笑みながら、死を受け入れ笑い飛ばす「死者の日」の儀式。憂いをまとった死者とのダンスは続く。嬉しいような悲しいような複雑な時間は、踊る私たちの頭の上にそれを一枚一枚ふわりと重ねていきながら、次第に重みを増していった。
私は何もしてあげられない、だけどこうやってダンスを踊ることならできるよ。遠いところから戻ってきた彼らに誘われて、時間のダンスを踊るんだ。過去から未来へ、未来から過去へ。ループする果てしない瞬間にステップを踏み込む。
踊りながら私は、今この瞬間に過去が溶けていくのをずっと眺めていたんだ。