「フォト、フォト!」小太りの男性がこっちを向いて、手招きしている。男性の周りの人たちもジッと一斉にこっちを見ていた。どうしよう、何だか怖いんですけど…だけどそうかといって完全に無視したまま通り過ぎるのもよくないから、少しだけ近寄ってからサッと行こうとしたんだ、ぎこちなく微笑みながらさ。
そしたら…硬い表情だった彼らもふわっと笑顔になって一気に歓迎ムード。肩を組んでニコニコと嬉しそうな彼らの姿を写真に切り取る。
そっか、ここは観光地じゃないもんね。だから人々も余所からの人間にどこか緊張してる部分があるんだけど、こっちが笑顔になると安心したように笑顔で返してくれる。
道行く人や車に乗ってる人、とにかくたくさんの人がみんなしてこっちをじっと見てるんだけど、こちらが笑顔を向けるとほぼ全員が素敵な笑顔を返してくれたんだ。
観光地化されていない場所って、いいなぁって思った。それともここだけなのかも知れないけどね、たまたま。私は飾りのない場所の普段の生活を覗き見るのも好きだから、そんなサンホセの通りの何でもない日常感にとってもワクワクしたんだ。
純朴な人々の笑顔を見ていることほど、癒されるものはない。それが世界中の素敵な景色と一緒に頭の中に浮かぶ時に、あぁ旅に出て良かったなあって実感するんだよね。
そんなことを思う反面、世界の中でも観光地になるような所は常にせわしなく、そこは先住民族の生活空間だったりもして現実はけっこう複雑だ。昨日訪ねたアンティグアを見ていて思ったんだけど、日常にドッサリと観光客が押し寄せてくれば疲れるのも当然だし、写真を撮られるのもいい加減イヤ気がさしてくるだろう。
いつも彼らの笑顔が見れるなんて、こちらの勝手な都合で持ったイメージでもあるよね。生活の糧を稼ぐのに民芸品売りは大切な仕事だけど、せわしなさを常に受け入れるということは彼らにとって、同時に「自分たちらしい時間」を捨てていくことでもあるんだ。私たちにとっては出会いの時でもあるけど、そこでの出会いは時として、お金を通してやり取りするだけのものともなりえる。