さてと、本は一体どこにあるんだろう。図書館なのにそう思う感覚をちょっと楽しみながら、探してみる。3階まで階段を勢いよく昇っていくと、「ローズルーム」と呼ばれる、絵画が飾られた歴史を感じさせる空間があった。
そしてそのフロアの隣側が、広々とした図書室になっていたんだ。入り口の狭暗さから想像つかないほど、中に入ると奥行きがあって明るい。
高い天井からは小ぶりなシャンデリアが等間隔に吊り下がっていて、テーブルの上のランプと共に人々の手元に柔らかい光を届けている。そして壁際には色分けされた厚めの本が、まるで展示されている作品かのように整然と並んでいた。
感性がぐっと上がるよね、こういう空間。例えばこの部屋で読むならヨーロッパに古くから伝わる物語とかさ、そんな空気感に囲まれながら読むとその深みが8割増しな感じな気がする。ふと本の世界から外れても景色はそこまで外れない。これが日本の畳の部屋とかだったら相当なワープ感だけどさ。
どんな場所で本を読むか、どんな場所で音楽を聴くか、どんな場所で食べ物を食べるか…場所によってその行動の本質まで変わってくる気がするんだ。
例えばこの図書館で本を読むのなら、ニューヨークを舞台に描かれた物語がいいな。まだ読んだことはないけど面白いと噂高い、フィッツジェラルドの「華麗なるギャッツビー」とか読んでみたい。
旅先でその土地のものに出会える素晴らしさはそこにあるよね。観光という言葉はさ、「土地の光を観る」っていう意味なんだって。その土地にあるいいものをたくさん感じて体に取り込むことができるから、旅から帰る頃には全身に光が満ちたように元気になるんだろうね。
そろそろ時間が気になりだしたので、またサイレンの渦の中にワープすべく、上着を羽織り外にでてふらりと街を歩き始めた。そう、この後私たちに、ニューヨークという街を象徴するような出会いが起こるなんてことを全く予想もせずに…
アメリカ・ニューヨーク 後編に続く…