カフェの目の前に広がる海を眺めていると、遠くの方に船が幾つか停泊しているのが目に止まった。海の水はナミブの白い砂をたっぷりと含んで、翡翠色を白く濁らせたままユラユラと揺れている。
目の前で何かがピョンと跳ねた。あっ、イルカ!何匹かが同じように跳ねて少しの時間そこで遊んだ後、フイとどこかへと消えてしまった。こんな砂漠のような世界にも、海があることで広がっていく繋がりがまたきっとあるんだろうな。
隣のカフェのデッキから、ゆったりとしたギターの生演奏が聞こえてくる。デッキの日陰で寝そべる大きな犬。カフェのお客さんはどうやら白人しかいないらしい。そんな光景をぼんやり眺めつつ、またさっきの続きへと意識は戻っていく。
もし今、何もない世界をポンと与えられたら、みんなは一体どんな世界を作ろうって思うんだろう。一から自由に作っていいよって言われたらさ。理想郷をイメージしてその始まりを作るのは結構簡単なことだと思うんだ。自分の想いのままに仕上がった世界に一瞬、大満足だ。
だけど生き物全ては意思を持つ。そう、もしかすると始まりは完璧な理想郷を作れても、世界ができ、スタートして動き出してしまえばてんでバラバラな世界かもね。だって生き物だからみんなそれぞれ自由に動いちゃう。全ての生き物の意思をコントロールすることはもちろん不可能だし…ということはさ、誰にも世界を完全にコントロールすることは出来ないんだろうね。
私たちは結局、いつだってひとりひとりを生きるしかないんだと思う。そう考えると何かを変化させていくことは難しいと感じてしまうかもしれない。だけど人や物との繋がりは選べるから、誰とでも繋がることができるし、そこからの可能性は果てしないと思うんだ。だからこう願うよ…「共に築いていくその時間が、素敵なものでありますように」