ナミブ砂漠のナミブって「何もない」っていう言葉なんだって。なんか凄いことだと思わない?物や人で溢れかえっているようなこの時代にさ、なぁーんにもないっていう場所があるだなんて。一面に広がる砂の世界、何もないっていうのはどういうことなのか、奥まで入ってそれを体感してみたかったなぁ。何もなさに行き当たった時、私たちは一体そこにどんなものを生み出そうと思うのだろうか。
私たち生き物の遠い祖先が生まれたのは、何もない所からだよね。世界にはまだ海が出来たてホヤホヤな状態で。そこに微生物が現れやがてそれが変化し、動物になり、陸に上がる。その頃の陸には植物は生えていたんだろうか。何にもない世界はきっと、ものごとの始まりをハッキリと感じられる空間なのかも知れないね。
一方、ここでの時間の過ぎ方はまるで砂時計のよう。巨大な砂時計の白砂がサラサラと音を立てて落ち、地面をつくっていく。落ちる砂がなくなった瞬間に天地はゴトンとひっくり返り、同じようにまた天からきめ細かな砂が舞い落ちてくる。それは繰り返される、ただひたすらに。
砂の時間は土のそれとは違って時間軸がまばらのようだ。地層にはならずに風に煽られて混ざってはどこかへと消え去っていく砂。始まりも終わりも曖昧な、まぼろし…そう、きっと実体がないようなものなのだろうね。だから砂で作られた世界を人はどこかで憧れ、怖れる。